毎年めぐってくる12月7日はミラノ・スカラ座の開演初日と決まっている。
スカラ座の開演の翌日は、ジョン・レノンの命日だ。偉大なアーチストはちょうど43年前の12月8日、ニューヨークで理不尽な銃弾に斃れた。
僕はジョン・レノンの悲劇をロンドンで知った。当時はロンドンの映画学校の学生だったのだ。
行きつけのパブで友人らと肩を組み合い、ラガー・ビールの大ジョッキを何杯も重ねながら「イマジン」を歌いつつ泣いた。
それは言葉の遊びではない。僕らはジョン・レノンの歌を合唱しながら文字通り全員が涙を流した。連帯感はそこだけではなくロンドン中に広がり、多くの若者が天才の死を悲しみ、怒り、落ち込んだ。
同じ12月8日はイタリアでは、聖母マリアが生まれながらにして原罪から解放されていたことを祝う、「無原罪の御宿り(Immacolata Concezione)」の日である。
イタリア人でさえ聖母マリアがイエスを身ごもった日と勘違いしたりする。が、実はそれは聖母マリアの母アンナが、聖母を胎内に宿した日のことだ。
イタリアの教会と多くの信者の家ではこの日、キリストの降誕をさまざまな物語にしてジオラマ模型で飾る「プレゼピオ」が設置されて、クリスマスの始まりが告げられる。
無原罪の御宿りの日を皮切りに12月24日のクリスマウイブの夜まで、土日も営業する店が増えて街はにぎやかなクリスマス商戦に彩られる。
心浮き立つ日々がそうやって始まるのである。