【テレビ屋】なかそね則のイタリア通信

方程式【もしかして(日本+イタリ ア)÷2=理想郷?】の解読法を探しています。

飾り物のイタリア大統領が化け物になるとき

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イタリアでまた政権が変わった。1月26日にジュゼッペ・コンテ首相が辞任し、ほどなくマリオ・ドラギ内閣が誕生した。イタリアではひんぱんに内閣が倒れ政権が交代する。よく日本の政治状況に似ていると言われるが実は大きく違う。イタリアでは政治危機の度に大統領が大きな役割を果たすところが特徴的である。

国家元首であるイタリア大統領は、上下両院議員の投票によって選出される。普段は象徴的な存在で実権はほとんどない。ところが政治危機のような非常時には議会を解散し、組閣要請を出し、総選挙を実施し、軍隊を指揮するなどの「非常時大権」を有する。大権だからそれらの行使には議会や内閣の承認は必要ない。

今回の政変は1月13日に起きた。コンテ内閣の一角を担っていたレンツィ元首相率いる小政党「イタリア・ヴィーヴァ」が、連立政権からの離脱を表明した。それによって、昨年の新型コロナ第1波の地獄を乗り切り国民の強い支持を受けてきたコンテ内閣が、一気に倒壊の危機に陥った。

しかし、レンツィ派の造反にもかかわらず、コンテ首相への支持は強いものがあった。反乱後の信任投票でコンテ内閣はイタリア下院の絶対多数の信任を得た。一方で下院と全く同等の権限を持つ上院では、出席議員の過半数を僅かに超える単純多数での信任にとどまった。絶対多数161に対して5票足りない156票だったのである。

僅差での信任はコンテ内閣が少数与党に転落したことを意味し、予算案などの重要法案を可決できなくなる可能性が高まる。危機感を抱いたコンテ首相は、冒頭で触れたように1月26日、マタレッラ大統領に辞表を提出する。この動きは予期されたものだ。大統領に辞表を提出し、けじめをつけた上で改めて大統領から組閣要請を受ける、というのがコンテ首相の狙いだった。それはイタリアではごく自然な動きである。

コンテ内閣は世界最悪とも言われたコロナ危機をいったん克服はした。だがイタリアは依然として、パンデミックの緊急事態の最中にある。今の状況では、コンテ首相が辞表を出して大統領の慰留を引き出すのが得策。その上で新たに上院議員の支持を取り付け第3次コンテ内閣を発進させる、というのが最善の成り行きのように見えた。それが大方の予想でもあった。

しかし、マタレッラ大統領が「非常事大権」を行使して状況を急転させた。大統領はコンテ首相に新たに連立政権工作をするよう要請する代わりに、ロベルト・フィーコ下院議長にそのことを指示したのだ。フィーコ議長は議会第1党の五つ星運動の所属。五つ星運動は議会最大の勢力ながら政治素人の集団である。フィーコ氏には党外での政治的影響力はほとんどない。

コンテ内閣の再構築を念頭に各党間の調整を図る、というフィーコ下院議長の連立政権工作はすぐに行き詰まる。するとマタレッラ大統領は、まるでそれを待っていたかのように前ECB(欧州中央銀行)総裁のマリオ・ドラギ氏に組閣要請を出した。「非常事大権」を意識した大統領の動きは憲法に則ったもの。誰も異議を唱えることはできない。

大統領のその手法は、見方によっては極めて狡猾なものだった。なぜなら彼はそこで一気にコンテ首相の再登板への道を閉ざした、とも考えられるからだ。そうやってイタリアの最悪のコロナ地獄を克服した功労者であるコンテ首相は、マタレッラ大統領によって排除された。

少し脇道にそれて背景を説明する。マタレッラ大統領はコンテ政権内で反乱を起こしたレンツィ元首相と極めて親しい関係にある。2人はかつて民主党に所属していた仲間。加えてマタレッラ大統領は2015年、当時首相だったレンツ氏が率いる中道左派連合の強い支援で大統領に当選した。それ以前も以後も、大統領がレンツィ元首相に近いのは周知の事実である。

また彼ら―特にレンツィ元首相―が左派ポピュリストの五つ星運動と犬猿の仲であることもよく知られている。コンテ首相は五つ星運動所属ではないものの同党に親和的。マタレッラ大統領にはそのことへの違和感もあったのではないか。そこにコンテ首相の排除を望むレンツィ元首相の影響も作用して、政変の方向性が決定付けられたのだろう。

そればかりではない。大統領とレンツィ元首相は強烈なEU(欧州連合)信奉者だ。その点はECB(欧州中央銀行)前総裁のドラギ氏ももちろん同じ。しかもレンツィ氏とドラギ氏も親密な仲である。次期イタリア首相候補としてドラギ氏を最初に名指したのも実はレンツィ元首相なのだ。

かくてEU主義者のマタレッラ、レンツィ、ドラギの3氏が合意して、反EU主義政党である五つ星運動に支えられたコンテ首相を排除する確固とした道筋が出来上がった。マタレッラ大統領は彼の持つ「非常時大権」を縦横に行使してその道筋を正確に具現化した。

国家元首であるイタリア大統領は、既述のように上下両院の合同会議で全議員及び各州代表によって選出される。普段はほとんど何の実権もないが、政府が瓦解するなどの国家の非常時には、あたかもかつての絶対君主のような権力行使を許され、機能しない議会や政府に代わって単独で役割を果たす。いわば国家の全権が大統領に集中する事態になるのだ。

例えば2011年11月、イタリア財務危機のまっただ中でベルルスコーニ内閣が倒れた際には、当時のナポリター ノ大統領が彼の一存でマリオ・モンティ氏を首相に指名して、組閣要請を出した。そうやって国会議員が一人もいないテクノクラート内閣が誕生した。

また2016年、レンツィ内閣の崩壊時には現職のマタレッラ大統領が外相のジェンティローニ氏を新首相に任命。ジェンティローニ内閣はレンツィ政権の閣僚を多く受け継ぐ形で組閣された。そして泥縄式の編成にも見えたその新造の内閣は、早くも3日後には上下両院で信任された。

2018年の総選挙後にも大統領は「非常時大権」を行使した。政権合意を目指して政党間の調整役を務めると同時に、首班を指名して組閣要請を出した。その時に誕生したのが第1次コンテ内閣である。コンテ首相は当時、連立政権を組む五つ星運動と同盟の合意で首相候補となりマタレッラ大統領が承認した。

政治危機の中で大統領が議会と対峙したり、上下両院が全く同じ権限を持つなど、混乱を引き起こす原因にもなる政治システムをイタリア共和国が採用しているのは、ムッソリーニとファシスト党に多大な権力が集中した過去の苦い体験を踏まえて、権力が一箇所に集中するのを防ごうとしているからだ。

議会は任期が満了したり政治情勢が熟すれば解散されなければならない。議会が解散されれば次は総選挙が実施される。総選挙で過半数を制する政党が出ればそれが新政権を担う。その場合は大統領は、政権樹立に伴う一連の出来事の事後承認をすれば済む。それが平時のイタリア大統領の役割である。

しかし、いったん政治混乱が起きると、大統領は一気に存在感を増す。イタリアの政治混乱とは言葉を変えれば「大統領の真骨頂が試される」時でもあり、「大統領の“非常時大権“の乱用」による災いが起きるかもしれない、微妙且つ重大な時間なのである。



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武漢がイタリアに引っ越した日



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阿鼻叫喚のイタリアの新型コロナ地獄はちょうど1年前の今日、2020年2月21日に始まった。

北部ロンバルディア州コドーニョ(Codognio)でクラスターが発生したのだ。

その前日の2月20日、コドーニョ病院でイタリア初の新型コロナの感染者が発見された。

当初その第1号患者は0号患者と誤解された。

クラスターは第1号患者の周辺で発生し、彼が入院したコドーニョ病院での院内感染も伴っていた。

いくつかのクラスターはたちまち感染爆発を招いた。

その日からイタリアは武漢化した。

ほぼ20日後の3月10日、イタリア政府はコドーニョを含むロンバルディア州と近辺に敷いていたロックダウンを、全土に拡大した。

クラスターの発生からちょうど1年後の2021年2月21日現在、イタリアの新型コロナの死者は9万5千486人。

累計の感染者は279万5千796人である。

昨年12月に始まったワクチン接種は遅々として進まず、これまでに212万8千130回分が接種されたに過ぎない。

人数にすると132万8千162人である。

閑話休題

国家非常事態の中でもイタリア人の政治好きは止まず、コロナ第1波の惨劇を誠心と勇気で乗り切ったジュゼッペ・コンテ首相の首がすげ替えられた。

新首相は超有名エコノミストのマリオ・ドラギさん。口げんかの絶えない政界の魑魅魍魎たちが、ぐっと口をつぐむほどの経済の大家、希望の星である。

コンテ首相は、イタリアの政治を引っ掻き回しているポピュリストの五つ星運動が、ほぼ唯一放った大ホームランだった。

大学教授のコンテさんを政界に引っ張り込んだのは五つ星運動なのである。

得意の経済政策はバラマキだけ、と見える五つ星運動に支えられたコンテさんは、コロナ禍が落ち着いたあとは経済で苦労するのは必至だった。

従って経済の専門家のドラギさんが首相になったのは、コンテさんのためにもイタリアのためにも、ドラギさんのためにもきっと良いことだ。

問題は、コンテ首相を大得意の権謀術数で退陣に追い込んだ、魑魅魍魎中の大妖怪レンツィ元首相を筆頭にする政治家連である。

経済も、コロナ対策も、何よりもワクチン接種の推進も、ドラギ新首相はきっとうまくやってくれそうな気配だ。

魑魅魍魎たちが邪魔さえしなければ。

多分。。



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極右に「北朝鮮みたい」と酷評されたイタリア新政権

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マリオ・ドラギ内閣がイタリアの上院と下院で正式に信任された。

上院は賛成262票、反対40票。また下院は賛成535票、反対56票。圧倒的と形容するのもバカバカしいほどの絶対多数での信任になった。

議会第1党の極左ポピュリスト「五つ星運動」と、同じく第2党の極右ポピュリスト「同盟」が、2018年の第1次コンテ内閣をなぞるかのように同時に政権入りした。

そこに左派の「民主党」とベルルスコーニ元首相が率いる右派の「フォルツァ・イタリア」 が加わり、さらに左右中道ナンデモカンデモコレデモカ、とばかりに各小政党や会派が連立に参加した。

主要政党で政権入りしなかったのはファシスト党の流れをくむ「イタリアの同胞」のみ。

まさに大連立、大挙国一致内閣である。

喧嘩、対立が絶えないイタリア政界を見慣れている目には異様とも映るその状況を、極右政党「イタリアの同胞」のジョルジャ・メローニ党首は、「北朝鮮みたい」と喝破した。

ま、正確に言えば「われわれが反対しなければドラギ政権は北朝鮮と同じだ」だったけれど。

極右の「イタリアの同胞」は、ドラギ首相よりも彼らの天敵である五つ星運動への反発から大連立に加わらなかった。

とはいうものの、実態は「連立から弾き出された」という方がより真相に近い。

同党は、いつも怒っていていつも人に殴りかかりそうな、険しい話し方をするメローニ党首に似て暗く、少しうっとうしい。

それはさておき、僕はメローニ党首の「北朝鮮みたい」発言に少々ひっかかりを覚えた。

彼女はなぜイタリアでは北朝鮮よりもはるかに存在感の強い「中国みたい」とは言わなかったのだろう?と。

北朝鮮はその隣でいろいろ迷惑をこうむる日本から見る場合とは違って、イタリアからは心理的にも距離的にも遠い。

距離の遠さという意味では中国も同じだが、中国は遠くにありながら心理的にも物理的にもイタリアに極めて近い。というか、近すぎる。

イタリアは中国の一帯一路構想を支持し、G7国で初めて習近平政権との間に覚書を交わした。

極左のポピュリスト五つ星運動のいわばゴリ押しが功を奏した。

そればかりではなく、イタリアには中国製品と中国人移民があふれている。昨年は中国由来とされる新型コロナで、世界初且つ世界最悪ともされる感染地獄に陥った

さらに良識あるイタリア国民の間には、中国による香港、ウイグル、チベットなどへの弾圧や台湾への威嚇などに対する反感もある。

イタリアの右派は一帯一路を巡る中国との覚書を快く思っていない。

2019年にそれが交わされた時、政権与党だった「同盟」は反発した。「イタリアの同胞」は「同盟」の朋友でしかも同盟よりも右寄りの政党である。

中国への反発心はイタリアのどの政党よりも固いと見られている。

それでいながらメローニ党首は、ネガティブな訳合いの弁論の中で中国を名指しすることを避けた。それはおそらく偶然ではない。

そこには中国への強い忖度がある。

イタリア国民の間には明らかな反中国感情がある。しかし政治も公的機関も主要メディアも、国民のその気分とは乖離した動きをすることが多い。

イタリア政府は世界のあらゆる国々と同様に、中国の経済力を無視できずにしばしば彼の国に擦り寄る態度を見せる。

極左ポピュリストで議会第1党の「五つ星運動」が、親中国である影響も無視できない。イタリアが長い間、欧州最大の共産党を抱えていた歴史の残滓もある。

共産党よりもさらに奥深い歴史、つまりローマ帝国を有したことがあるイタリア人に特有の心理的なしがらみもある。

イタリア人が、古代ローマ帝国以来培ってきた自らの長い歴史文明に鑑みて、中国の持つさらに古い伝統文明に畏敬の念を抱いている事実だ。

その歴史への思いは、いまこのときの中国共産党のあり方と、中国移民や中国人観光客への違和感などの負のイメージによってかき消されることも多い。

しかし、イタリア人の中にある古代への強い敬慕が、中国の古代文明への共感につながって、それが現代の中国人へのかすかな、だが決して消えることのない好感へとつながっている面もある。

淡い好感に端を発したそのかすかなためらいが、極右のボスであるメローニ党首のしがらみとなって、「ドラギ政権は一党独裁の中国みたい」と言う代わりに「まるで北朝鮮みたい」と口にしたのではないか、と思うのである。

僕は極右思想や政党には強烈な違和感を覚える者だが、中国共産党に噛み付かない極右なんて、負け犬の遠吠えにさえ負けるタマ無しで、もっとつまらない、と思わないでもない。


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ドラギ挙国一致内閣は両刃の剣スキーム

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新首相と大連立与党連合

2021年2月13日、イタリアでドラギ新内閣が誕生した。73歳のマリオ・ドラギ新首相は2011年から2019年までECB(欧州中央銀行)総裁を務めたセレブな経済学者。コロナ・パンデミックで落ちるところまで落ちたイタリア経済の救世主になるのではないか、との期待が高まっている。

期待は経済や政治に関心のある国民ばかりではなく、普段は全くそこに興味を持たない人々の間にまで広まっている。そのことはイタリアの政治システムに不明な人々までが、ドラギ氏の高名に興奮してSNSにファンレターまがいのとんちんかんな書き込みをすることなどでも類推できる。

アカデミックな経済の専門家としてのドラギ氏の経歴は華々しい。彼は米国のMIT(マサチューセッツ工科大学)で経済学博士号を取得。フィレツェ大学の教授を務めたあとイタリア銀行総裁に出世。さらに2011年から2019年までは欧州中央銀行総裁の職にあった。

2021年2月3日、ドラギ氏はイタリア大統領からの組閣要請を受けた。彼はすぐにイタリアの各政党との面談を開始。たちまちほぼ全ての勢力から支持を取り付けた。その手腕はエコノミストというだけではなく政治家としても有能であるように見える。

彼を支持するのは、極左のポピュリスト・五つ星運動から極右ポピュリストの同盟、左派の民主党、さらにベルルスコーニ元首相が率いるほぼオワコンにさえ見えるフォルツァ・イタリア党、それらに加えて全ての小政党や会派など。文字通り挙国一致と呼べる巨大な連立与党連合が出来上がった。

ここから数ヶ月の蜜月期間は、世界クラスの知名度を持ちカリスマ性もあるドラギ首相に物申す相手はいないだろう。だが、時間とともに各政党の利害がむき出しになるのは政治である限り避けることはできない。そのときになってもドラギ首相が強いリーダーシップを発揮し続けているなら、イタリアの未来は明るい。だがそうではない可能性もいまのところは5割ある。

3人のEU教徒

僕はEU(欧州連合)支持者である。ブリュッセルの官僚支配という弊害はあるものの、欧州がひとつになり各国民が交流し刺激し合い成長し合うのはすばらしい。何よりもEUが「戦争防止装置」としての役割を十分に果たしていることは見逃せない。

欧州中央銀行の総裁を務めたドラギ首相は、いうまでもなくがちがちのEU主義者である。ジュゼッペ・コンテ前首相の辞表を待ってましたとばかりに受理して(なぜ待ってましたとばかりかは後述)、ドラギ氏に組閣を指示したセルジョ・マタレッラ大統領も筋金入りのEU信奉者。さらにドラギ氏を誰よりも先に首相に推したマテオ・レンツィ元首相も隠れなきEU支持者である。

その意味では僕は3者を支持するが、ジュゼッペ・コンテ首相をいわば排除したという意味では、3者に強い違和感も持つ。特にマテオ・レンツィ元首相は今回の政変の首謀者。彼はことし1月13日、自身が率いる政党「イタリア・ヴィヴァ」所属の閣僚を、コンテ内閣から引き上げて政権を崩壊させた。

理由はEUからイタリアに与えられるコロナ復興資金の使用法に異議がある、というものだった。だが真相は、衰退著しく存在感がぼゼロと言われるほどに落ちぶれた「イタリア・ヴィヴァ」と自身の求心力低下に焦ったレンツィ元首相が、起死回生を狙って打った大芝居、というのが定説。

しかし、そ反乱はあまりにもタイミングが悪かった。コンテ内閣は昨年の阿鼻叫喚のコロナ地獄を克服したことでイタリア国民の強い信頼を得ている。特に強いリーダーシップと類まれなコミュニケーション力で、国民を勇気付け慰撫し続けたコンテ首相は、かけがえのない存在とみなされてきた。

イタリアは昨年3月から5月にかけての第1波の凄惨な危機からは抜け出した。が、コロナパンデミックは依然として続いている。収束とは程遠い状況である。そんな非常時にレンツィ元首相は我欲に駆られて政治危機を招いた。イタリア中から強い批判が湧き起こった。

だがレンツィ元首相の反乱は、行き当たりばったりの妄動ではなく、周到に計算されたものであるらしいことが明らかになった。少なくとも僕の目にはそう映る。レンツィ元首相は政治的に彼と近しいマタレッラ大統領と連携して、政変を起こした可能性が高いのだ。連携が言いすぎなら、少なくともマタレッラ大統領に“予告した”上で、倒閣運動を仕掛けた。

マタレッラ大統領は2015年、当時首相だったレンツィ氏が主導する中道左派連合の強いバックアップで大統領に当選した。彼らはかつて民主党に所属した同僚でもある。また既述のように親EU派としてもよく知られている。2人が政治的にきわめて親密な仲であることは周知の事実だ。

大統領の遠謀?

一方、大学教授から首相になったジュゼッペ・コンテ氏は、反EUで左派ポピュリストの五つ星運動に支えられている。コンテ首相は五つ星運動所属ではないが、心情的には同党に近いとされる。反体制が合い言葉の五つ星運動の根幹の思想に共感するものがあるのだろう。その在り方の是非はさておき「弱者に寄り添う」という同党の主張にも賛同しているのではないか。

繰り返しになるが五つ星運動はEU懐疑派である。彼らは元々EUからの離脱を目指し、トランプ主義にも賛同してきた。だがイタリアの過激主義は「国内に急進的な政治勢力が乱立している分お互いに妥協して軟化する」、という僕の持論どおり選挙運動中に反EUキャンペーンを引っ込め、政権を取るとほぼEU賛同主義者へと変わるなどした。だが、彼らの本質は変わっていない。マタレッラ大統領は、レンツィ元首相とともにそのことにも危機感を抱いたに違いない。

2者は極端な推論をすればそれらの背景があってコンテ首相を排除し、ドラギ氏擁立のプランを立てた。そして事態は次のように動いた。
1、レンツィ元首相の反乱。
2、コンテ首相辞任(マタレッラ大統領から再組閣指示を引き出すためのいわば根回し辞任。予期された通常の手続きである。だからマタレッラ大統領は「待ってました」とばかりに辞表を受理した)
3.マタレッラ大統領、コンテ首相にではなく政治的に非力なフィーコ下院議長に連立工作を指示(失敗を見越して)。
4.フィーコ下院議長の連立工作、予想通り失敗。 
5.マタレッラ大統領がすぐさまマリオ・ドラギ氏に組閣を要請。

という筋書き通りに事が動いた。

新旧首相の幸運

コンテ首相は国民に真摯に、誠実に、そして熱く語りかける姿勢でコロナ地獄を乗り切り圧倒的な支持を集めた。コロナ感染抑止を経済活動に優先させたコンテ首相の厳格なロックダウン策は、感染が制御不可能になり医療崩壊が起きて多くの死者が出ていた昨年の状況では、的確なものだった。だがそれによってただでも不振に喘いでいたイタリア経済が多大なダメージを受けたのも事実だ。

コンテ首相には今後も、引き続きコロナ対策を講じながら経済の回復も期す、という厳しい責務が課されることは間違いがなかった。しかし彼の政権は、経済政策といえばベーシックインカムに代表されるムチャなバラマキ案しか知らない政治素人の集団・五つ星運動に支えられている。適切な経済策を期待するのは厳しいようにも見えた。その意味ではコロナ対策で高い評価を受けたまま退陣したのはあるいは好いことだったのかもしれない。

ドラギ内閣は迅速な経済の回復を進めると同時にワクチン接種を広範囲に迅速に実施しなければならない。後者は出だしでのつまずきが問題になっている。一方経済の建て直しに関しては、ドラギ首相は大きな僥倖に恵まれている。つまりイタリアに提供されるEUからの莫大なコロナ復興資金である。総額は2090億ユーロ、約26兆5千億円にのぼる。そのうちの4割は補助金、6割が低金利の融資だ。

ドラギ首相は理論的にはその大きな資金を縦横に使って経済を再生させることができる。実現すればすばらしいことだが、経済学者が「理路整然」と実体経済を読み違えるのもまた世の常である。ましてや国家経営には、銀行経営とは違って「感情」というやっかいなものが大きく絡むから、ドラギ首相の仕事は決して単純ではない。


ドラギ首相はかつて、ECB総裁として経済危機に陥ったイタリアに緊縮財政策を押し付けた張本人のひとりだ。2011年、財政危機の責任を取って退陣したベルルスコーニ首相に代わって、政権の座に就いたマリオ・モンティ首相は、ドラギ首相とよく似たいきさつで内閣首班になった。だがモンティ首相は当時、ブリュッセルのEU本部とECB総裁のドラギ氏のほぼ命令に近い要請で、財政緊縮策を強いられた。ドラギ氏はちょうど10年の年月を経て自らがイタリア首相になり、且つ潤沢な資金を使って経済の建て直しをする、というモンティ元首相とは真逆の立場におかれたのだ。大きな幸運である。

さらにドラギ首相への追い風が吹いている。EU首脳部は、彼らがイタリアに強要した緊縮財政策が悪影響を及ぼして、イタリアの経済がさらに失速し回復が遅れている、と内心認めていると言われる。従ってドラギ内閣が、EU内でイタリアがギリシャに次ぐ借金大国に成り果てている苦境をしばらく忘れて、さらなる借金さえしかねない財政拡大策を推し進めもこれを黙認する、と考えられている。

ドラギ首相のスネの傷

ドラギ首相は高位のエコノミストとしてこれまでイタリア内外で多くの経済政策を推進してきた。その中には重大な失策もある。例えばドラギ首相はイタリア財務省総務局長時代に、当時国有だった巨大企業イタリア高速道路管理運営会社(ASPI)の民営化を進めた。民営化された同社はオーナー一族に莫大な利益をもたらした。

だが会社は巨利をむさぼるばかりで維持管理を怠り、2018年にはジェノバで高架橋の落下という重大事故を起こして43人もの死者が出た。その事故以外にも ASPIのインフラ管理の杜撰さが問題になっている。コンテ政権は同社を再び国営化した。だが全ての課題が突然消えた訳ではない。かつてASPIを民営化させたドラギ首相は、事態がさらに複雑化し問題が再燃することを恐れているかもしれない。

また世界最古の銀行MPS(モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ)が経営破綻した時、イタリア中央銀行総裁だった彼はその責任の一端を担っている。さらに問題が巡りめぐって同銀行が公的資金で救済された際には、ドラギ首相はECB(欧州中央銀行)総裁を務めていた。MPSに公的資金が投入されたのは、ECBの誘導によるとされている。従って彼はMPSの行く末にも責任を負わなければならない。

コロナ対策も経済政策も、ドラギ政権を支持する全ての政党が一致団結して事に当たれば、きわめてスムースに実行されるだろう。だが意見を異にする政党が寄り集まるからには、対立や分断もまた容易に起こりうる。それぞれの政治勢力がてんでに主張を強めれば、政権内の混乱の収拾がつかなくなる可能性もある。ドラギ内閣を構成している「ドラギを信奉する一大連合勢力」は、両刃の剣以外の何者でもないように見える。



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管首相のコロナ対策は「押し」の妥協ではなく「受身」の妥協だから信用できない


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経済も感染防止も大事

言うまでもありませんが、コロナ禍の世界では感染拡大を抑え込みつつ経済も回し続けることが正義です。

感染拡大防止のみを重視してロックダウンを導入すれば、経済が破壊され国民はコロナとは別の危険にさらされます。昨年の春、世界一過酷で世界一長いロックダウンを敷いたイタリアの経済が、これでもかというまでに破壊され多くの人々の暮らしが成り立たなくなったのが好例です。

イタリアよりはゆるく、期間も短かいロックダウンを導入した欧州の他の国々も同様の被害を受けました。欧州一の経済大国でビジネスも好調なドイツでさえ、ロックダウンによって経済は大きなダメージを受けました。

だがそれならばということで、経済の推進のみに力を入れて感染拡大を放置すれば、国民の健康と命が危機にさらされます。先頃までのアメリカや現在のブラジルが好例です。また感染抑止策を誤ったり医療体制が脆弱だったりしてもコロナ被害は拡大します。インドほかの世界の貧しい国々がその好例です。

これまた当たり前のことですが感染防止と経済活動は相反します。欧米や日本などの先進国では、経済規模が大きい分、2者が対立することからくる痛みも大きくなります。

押しの妥協と受身の妥協

感染防止と経済推進という二つの正義はぶつかり合う。だが両立させなければならない。その両立は妥協によってのみ可能になります。

妥協は民主主義とほぼ同義語です。民主主義国である欧米各国や日本は、民主主義のプリンシプルに従って感染拡大と経済活動の妥協点を見つけ出さなければなりません。

言葉を変えれば、感染拡大を完全に押さえ込むことはできない。経済活動を完全に止めることもできない。従ってある程度の感染拡大と犠牲者を受け入れる、という苦痛に耐えながら経済も回していかなければならない。

そのことをメッセージにして明確に国民に伝えるのが菅首相の義務です。

言い方を変えればそれは、感染と経済を見据えながら妥協を繰り返して行く、ということにほかなりません。

妥協することは、弱腰、優柔不断、敗北など、ネガティブな印象をしばしば国民に与えます。

妥協に際しては、追い詰められて仕方なくそれを受け入れたのではなく、強い意志と不退転の決意また責任感から導き出したポジティブな方向転換である、と国民に思わせなければならない。

それでなければ国民は納得しません。

“ポジティブな妥協”ができるのが有能な政治家です。あるいは常にポジティブな妥協をしている、と国民に語りかけることができるのが優れた指導者です。それはつまり、コミュニケーション能力の優れたリーダーということです。

良かれと思って実行した政策が行き詰まるのはよくあることです。その時に間違いを間違いと認めて、さて今後はどうするのかと国民に直接に、且つただちに語るのです。

正直に、誠実に、飾らずに、がキーワード

例えばGoToトラベルはそれ自体は悪くない政策です。だが運悪く遂行のタイミングを間違ったために感染拡大を招きました。菅首相はそこでGoToトラベルの人の移動は感染拡大の原因ではない、と愚劣な言い訳や強弁を弄するべきではありませんでした。

そうではなく、間違いを認めた上で「人の動きが活発になる年末年始には一旦停止するが、経済を立て直すためには重要不可欠な策なので時期を見て再開する」と正直に且つ明確に国民に伝えれば良かったのです。

正直に、誠実に、飾らずに、そして真摯に国民に語り掛けること。何も難しい仕事ではありません。なぜそんな当たり前のことができないのでしょうか。秋田の田舎の出の朴訥で真面目で醇正・篤実な人柄の男が管義偉、という触れ込みはもしかすると嘘なのでしょうか?

残念ながら日本の政治家は、菅首相に限らず伝統的にコミュニケーション力が弱い。ゼロと言っても良いかもしれません。

それでも日本の外から見ていると、その政権や人となりへの賛否は別にして、最近では中曽根、小泉両元首相のようにコミュニケーション力の強い人も出ました。だが形成されかけたその伝統は、安倍
前首相によって後退し、菅首相によって完全に死に絶えたようにさえ見えます。

日本の政治家は説明責任という成句をナントカの一つ覚えのように口にしますが、彼らには常に言葉が足りない。政治家が説明責任を果たすのは最低限の義務です。政治家にはそれに加えて独自の考えをより明確に国民に伝える能力、すなわちコミュニケーション力がなくてはなりません。

それを「間違いを隠さない正直と勇気」に裏打ちされた能弁、と言い換えても構わないと思います。管首相のように間違いから目を逸らしたり建て前や口上を述べ立てて誤魔化すのはコミュニケーションではありません。

菅首相には、世界の有能な指導者の多くが持っているコミュニケーション力も分かりやすさもありません。それは彼が寡黙だからではなく彼の発する言葉には既述のコンセプト、つまり「間違いを隠さない正直」と「勇気に裏打ちされた能弁」が欠けています。だから国民の琴線に触れない。

発信できないなら去るべし

菅首相には的確なコミュニケーション力が欠けているだけではありません。日本学術会議問題やコロナ対策などで露見し続けているように、彼には政策方針の転換の理由を「詳しく説明する言葉」さえないのですから、何をか言わんやです。

菅政権は、既述のように感染予防も経済の推進も「政策」としてはまともな内容のものを掲げています。ところがそれが国民に十分に伝わっていません。伝わらなければ政策は無いにも等しい。

コミュニケーション能力が弱い菅首相の施策は、たとえそれが感染防止と経済活動を秤にかけた上での適切な「妥協」であっても、行き当たりばったりの結果にしか見えず、逃げや敗北の色が濃い動きに見えてしまいます。

管首相は追い詰められて「受身の妥協」をするのではなく、常に先手先手と政策を押し進めて、それが間違っていた場合には、即座にそのことを認め「積極的に妥協」して、修正し前進する勇気と誠実と知恵を持つべきです。

それができないのなら、速やかに去ることが、彼の言う国民への最大の奉仕になると考えます。


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万死に値するレンツィ元首相は実はあるいは救世主かも

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2020年、イタリアは自由主義社会で初めて新型コロナ地獄に陥り辛酸を舐めた。そこでイタリアを破滅から救い出したのが当時のジュゼッペ・コンテ首相だ。大学教授から突然宰相に抜擢された彼は、初めの頃こそ周囲の政治家連の操り人形と批判されたりした。

しかし2019年8月、連立政権の一角を成す極右の「同盟」が離脱を決めたとき、同党の強持てのサルビーニ党首を「ジコチューで無責任」と面前で厳しく批判して男を上げた。サルビーニ党首は、右派への支持率が高まったのを見て、極左の「五つ星運動」との連立を解消し、総選挙に持ち込んで右派連合の政権を樹立しようと画策したのだった。

半年後の2020年2月、イタリアは新型コロナの感染爆発に見舞われた。医療崩壊が起きて死者の山が築かれるなど、事態が制御不能に陥った。そこで全土ロックダウンという前代未聞の策を躊躇なく導入して、パンデミックに立ち向かったのがコンテ首相だった。

コンテ首相は、見習うべき手本のない暗闇の中で果敢に立ち上がり、国民に忍耐と連帯と分別ある行動を呼びかけ、過酷な全土封鎖策を受け入れさせた。阿鼻叫喚の恐怖の中で、国民は首相の誠実と熱意と勇気に鼓舞された。

しかし、パンデミックが依然として続く2021年1月、政界の「壊し屋」と異名されるマッテオ・レンツィ元首相が率いる小政党「イタリア・ヴィーヴァ」が、連立政権からの離脱を表明した。それはレンツィ元首相の独善による反乱だった。

コンテ内閣は一気に危機に陥った。レンツィ元首相は、EU(欧州連合)からイタリアに与えられるコロナ復興資金の使い道が不透明だとして、コンテ首相に詰め寄ったのである。彼の主張にはいろいろともっとっもらしい理由がつけられたが、要するにそれは「俺にも金を寄越せ」という我欲の表明に過ぎない、と批判された。

その批判は当たっていると思うが、同時にレンツィ元首相は、コンテ政権を支える極左の「五つ星運動」が、EUからの復興基金を思いのままに食いつぶすことを恐れた部分もあるのではないか、とも僕は推察する。

腐敗政治家や無能で古い諸制度を厳しく批判する「五つ星運動」の主張には、目覚ましいものもある。しかし彼らにはそれに代わる明確な案がほとんどない。あっても荒唐無稽なものが多い。復興資金を集票のためのバラ撒きに使う可能性も大いにあると思うのである。

それにしてもイタリアはー世界中の多くの国と同様にー依然としてパンデミックのまっただ中で呻吟している。コンテ首相の優れたリーダーシップによって、既述のように第1波時の最悪の状況は切り抜けたが、危機は決して終わってはいないのだ。

そんな中で政局を混乱に導いたレンツィ元首相には、多くの厳しい批判が浴びせられた。当然のことだ。

彼の反乱の真の目的は、存在感が薄らいでいく一方の党と自分自身に世間の耳目を集めて勢いを得たい、ということだと見られている。同時に元首相は恐らく、政治家としてはずぶの素人だったコンテ首相が、鮮やかな力量を発揮して国民の圧倒的な支持を集めている事実に嫉妬したのではないか、とも僕は考えている。

レンツィ元首相は、自信過剰で鼻持ちならない言動でも有名な政治家だ。34歳の若さで出身地のフィレンツェの市長に選ばれ、さらに当時イタリア最大の民主党の党首に抜擢された後、若干39歳で首相にまで上り詰めた。その輝かしい経歴が、彼の鼻をピノキオのそれの何十倍もの高さに押し上げてしまったようだ。

そんな人物には時節や社会状況や国民の動向など関係がない。彼が奉仕して然るべきそれらの要素は、レンツィ元首相にとってはむしろ逆に「自分のために存在するもの」になってしまっているのだろう。かくして彼は、時節などわきまえず、自己満足のためだけにコンテ第2次内閣を倒して、イタリアを政治危機の中に投げ込んだ。

しかしコンテ首相への議会の支持は強いものがあった。レンツィ・グループの反乱にもかかわらず、コンテ内閣はイタリア下院で絶対多数の信任を得た。しかし、下院と全く同等の権限を持つ上院では絶対多数ではなく、出席議員のうちの多数である単純多数での信任に留まった。絶対多数161に対して5票足りない156票だったのだ。

僅差での信任はコンテ内閣が少数与党に転落したことを意味する。それでは予算案などの重要法案を可決できなくなる可能性が高くなる。危機感を抱いたコンテ首相は1月26日、マタレッラ大統領に辞表を提出した。

その動きは予期されたものだった。大統領に辞表を提出し、けじめをつけた上で改めてその同じ大統領から組閣要請を受ける、というのがコンテ首相の狙いである。それはイタリアの政治システム下ではごく真っ当なプロセスだった。

辞任した首相が新たな上院議員の支持を取り付け第3次コンテ内閣を船出させる、というのは誰もが予想した展開だった。コロナ渦の緊急事態の最中では、それが最善の成り行きのように見えた。だが事態は急転回し、コンテ政権は崩壊してマリオ・ドラギ内閣が発足した。

我執にからめとられたレンツィ元首相の行為は許しがたいものだ。

しかし、少し引いて事態を眺めた場合、あるいは政変はイタリアのために良いことだったのではないか、とも僕は考える。なぜなら過激な主張の多い「五つ星運動」が、EU復興資金に目が眩んで破滅的な経済政策をゴリ押しし、コロナ禍で深く傷ついたイタリア経済をさらに痛めつける可能性が低くなったからだ。

コンテ首相は、コロナ第1波の地獄の最中には「五つ星運動」の強い支えもあって、ロックダウンという過酷な策を成功させた。しかし今後は経済の建て直しがイタリアの最大の課題になる。彼の政権が続いた場合コンテ首相は、政治経済ともに素人の「五つ星運動」に引きずられて大きな瑕疵を犯す可能性もあった。

従って経済の専門家であるマリオ・ドラギ氏に政権のバトンタッチが行われたのは、あるいは僥倖だったのかもしれないとも思う。そうすると、万死に値するとも見える大きな政治混乱を招いたレンツィ元首相は、巡りめぐってイタリアの救世主でもある、というややこしい結論にもなりかねないのである。



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置き物のイタリア大統領が化け物になる理由(わけ)  



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イタリアでまた政権が変わりました。1月26日にジュゼッペ・コンテ首相が辞任し、ほどなくマリオ・ドラギ内閣が誕生しました。イタリアではひんぱんに内閣が倒れ政権が交代します。よく日本の政治状況に似ていると言われますが実は大きく違います。イタリアでは政治危機の度に大統領が大きな役割を果たすところが特徴的です。

国家元首であるイタリア大統領は、上下両院議員の投票によって選出されます。普段は象徴的な存在で実権はほとんどありません。ところが政治危機のような非常時には議会を解散し、組閣要請を出し、総選挙を実施し、軍隊を指揮するなどの「非常時大権」を有します。大権ですのでそれらの行使には議会や内閣の承認は必要ありません。

今回の政変は1月13日に起きました。コンテ内閣の一角を担っていたレンツィ元首相率いる小政党「イタリア・ヴィーヴァ」が連立政権からの離脱を表明しました。それによって、昨年の新型コロナ地獄を乗り切り国民の強い支持を受けてきたコンテ内閣が、一気に倒壊の危機に陥りました。

しかし、レンツィ派の造反にもかかわらず、コンテ首相への支持は強いものがありました。反乱後の信任投票でコンテ内閣はイタリア下院の絶対多数の信任を得ました。一方で下院と全く同等の権限を持つ上院では、出席議員の過半数を僅かに超える単純多数での信任にとどまりました。絶対多数161に対して5票足りない156票だったのです。

僅差での信任はコンテ内閣が少数与党に転落したことを意味し予算案などの重要法案を可決できなくなる可能性が高まります。危機感を抱いたコンテ首相は、冒頭で触れたように1月26日、マタレッラ大統領に辞表を提出します。この動きは予期されたものです。大統領に辞表を提出し、けじめをつけた上で改めて大統領から組閣要請を受ける、というのがコンテ首相の狙いでした。それはごく自然な動きです。

コンテ内閣は世界最悪とも言われたコロナ危機をいったん克服はしたものの、イタリアは依然としてパンデミックの緊急事態の最中にあります。今の状況では、コンテ首相が辞表を出して大統領の慰留を引き出すのが得策。その上で新たに上院議員の支持を取り付け第3次コンテ内閣を発進させる、というのが最善の成り行きのように見えました。それが大方の予想でした。

しかし、マタレッラ大統領が「非常事大権」を行使して状況を急転させました。大統領はコンテ首相に新たに連立政権工作をするよう要請する代わりに、ロベルト・フィーコ下院議長にそのことを指示したのです。フィーコ議長は議会第1党の五つ星運動の所属。五つ星運動は議会最大の勢力ながら政治素人の集団です。フィーコ氏には党外での政治的影響力はほとんどありません。

コンテ内閣の再構築を念頭に各党間の調整を図る、フィーコ下院議長の連立政権工作はすぐに行き詰まります。するとマタレッラ大統領は、まるでそれを待っていたかのように前ECB(欧州中央銀行)総裁のマリオ・ドラギ氏に組閣要請を出しました。「非常事大権」を意識した大統領の動きは憲法に則ったものです。誰も異議を唱えることはできません。

大統領のその手法は、見方によっては極めて狡猾なものでした。なぜなら彼はそこで一気にコンテ首相の再登板への道を閉ざした、とも考えられるからです。そうやってイタリアの最悪のコロナ地獄を克服した功労者であるコンテ首相は、マタレッラ大統領によって排除されました。

少し脇道にそれて背景を説明します。マタレッラ大統領はコンテ政権内で反乱を起こしたレンツィ元首相と極めて親しい関係にあります。2人はかつて民主党に所属していました。加えてマタレッラ大統領は2015年、当時首相だったレンツ氏が率いる中道左派連合の強い支援で大統領に当選しました。それ以前も以後も、大統領がレンツィ元首相に近いのは周知の事実です。

また彼ら―特にレンツィ元首相―が左派ポピュリストの五つ星運動と犬猿の仲であることもよく知られています。コンテ首相は五つ星運動所属ではないものの同党に親和的です。マタレッラ大統領にはそのことへの違和感もあったのではないか。そこにコンテ首相の排除を望むレンツィ元首相の影響も作用して、政変の方向性が決定付けられたのでしょう。

そればかりではありません。大統領とレンツィ元首相は強烈なEU(欧州連合)信奉者です。その点はECB(欧州中央銀行)前総裁のドラギ氏ももちろん同じ。しかもレンツィ氏とドラギ氏も親密な仲です。次期イタリア首相候補としてドラギ氏を最初に名指したのも実はレンツィ元首相なのです。

かくてEU主義者のマタレッラ、レンツィ、ドラギの3氏が合意して、反EU主義政党である五つ星運動に支えられたコンテ首相を排除する確固とした道筋が出来上がりました。マタレッラ大統領は彼の持つ「非常時大権」を縦横に行使してその道筋を正確に具現化しました。

国家元首であるイタリア大統領は、既述のように上下両院の合同会議で全議員及び各州代表によって選出されます。普段はほとんど何の実権もありませんが、政府が瓦解するなどの国家の非常時には、あたかもかつての絶対君主のような権力行使を許され機能しない議会や政府に代わって単独で役割を果たします。いわば国家の全権が大統領に集中する事態になるのです。

例えば2011年11月、イタリア財務危機のまっただ中でベルルスコーニ内閣が倒れた際には、当時のナポリター ノ大統領が彼の一存でマリオ・モンティ氏を首相に指名して、組閣要請を出しました。そうやって国会議員が一人もいないテクノクラート内閣が誕生しました。

また2016年、レンツィ内閣の崩壊時には現職のマタレッラ大統領が外相のジェンティローニ氏を新首相に任命。ジェンティローニ内閣はレンツィ政権の閣僚を多く受け継ぐ形で組閣されました。そして泥縄式の編成にも見えたその新造の内閣は、早くも3日後には上下両院で信任されました。

2018年の総選挙後にも大統領は「非常時大権」を行使しました。政権合意を目指して政党間の調整役を務めると同時に首班を指名して組閣要請を出しました。その時に誕生したのが第1次コンテ内閣です。コンテ首相は当時、連立政権を組む五つ星運動と同盟の合意で首相候補となりマタレッラ大統領が承認しました。


政治危機の中で大統領が議会と対峙したり、上下両院が全く同じ権限を持つなど、混乱を引き起こす原因にもなる政治システムをイタリア共和国が採用しているのは、ムッソリーニとファシスト党に多大な権力が集中した過去の苦い体験を踏まえて、権力が一箇所に集中するのを防ごうとしているからです。

議会は任期が満了したり政治情勢が熟すれば解散されなければなりません。議会が解散されれば次は総選挙が実施されます。総選挙で過半数を制する政党が出ればそれが新政権を担います。その場合は大統領は政権樹立に伴う一連の出来事の事後承認をすれば済みます。それが平時のイタリア大統領の役割です。

しかし、いったん政治混乱が起きると、大統領は一気に存在感を増します。イタリアの政治混乱とは言葉を変えれば「大統領の真骨頂が試される」時でもあり、「大統領の“非常時大権“の乱用」による災いが起きるかもしれない微妙且つ重大な時間なのです。



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読者コメントは宝の山



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Yahoo掲載記事へのコメントはことのほか程度が低い、というかなり広範に信じられている意見がある。

それは読者の程度が低い、ということではなく多種多様な知性や与太郎や教養や戯者がいる、ということなのだろうと思う。

ということはつまり読者の幅が広いということである。

記事を執筆した僕はほとんどコメントは読まない。

読みたいのは山々だが、読むと賛同や反論にかかわりなく返信したくなる性質なので、きりがなくなる。

要するに時間がない。

実は賛同者や批判者と対面で話すのは楽しい。

批判者や反論者でも対面で話すと分り合える。あるいは分り合えないということを分り合える。

それは痛い飛礫そのものでしかなかった批判の言葉が、人間に変貌する時間である。

人間である限り、人と人はそうやすやすと憎しみ合えるものではない。

対面で話すと十中八九はそんな気分になれる。

対話の魔術である。

僕がつまらなく感じるのは記事の内容を把握せず好き勝手なことを書き連ねたコメント。

ネトウヨヘイト系の薄汚い誹謗中傷。

記事のうち自分の見たいフレーズのみを捉えて拡大解釈した意見など、など。

僕は「文意は伝わらない」というひどく悲観的な定見を持っている。それは憂鬱であると同時に明朗な思いでもある。

なぜなら「文意は伝わらない」からこそ下手なりに文章を磨こうとも考えるからである。






イタリアの「またもや」の政治危機が行く~ドラギ内閣が生まれそう


大木アタマ650


イタリアのセルジョ・マタレッラ大統領の要請を受けて、政権樹立の可能性を探ってきたマリオ・ドラギECB(欧州中央銀行)前総裁の仕事が完成しそうだ。

議会第1党と第2党で、且つ鋭く対立してきた五つ星運動と同盟が、ドラギ内閣を支持することがほぼ確実になってきた。

しかし、五つ星運動は内部が平穏ではなく、ドラギ政権に参加することによって分裂が進みかねない状況。土壇場での方向転換もありうる情勢。

五つ星運動と同盟は左右のポピュリストである。ポピュリストという点移外にはほとんど共通点がないにもかかわらず、両党は2018年に手を結んで野合政権を樹立した。

だが元々犬猿の仲である五つ星運動と同盟は多くの政策で対立、喧嘩が絶えなかった。連立政権発足から1年余りの2019年8月、同盟が対立激化を理由に早期の解散総選挙を要求。

否定されると内閣不信任決議案を提出して政権を離脱した。同盟のサルビーニ党首に、総選挙に持ち込んで右派勢力を結集し、独自政権を樹立したい思惑があったのは周知のことである。

第1次コンテ内閣は崩壊した。が、五つ星運動がすぐに彼らの天敵だった議会第3党の民主党に呼びかけて、2019年9月5日、あらたに連立政権を樹立した。

第2次コンテ内閣は、2020年初めからイタリアを襲ったコロナ惨禍を克服。それは大きな指導力を発揮したジュゼッペ・コンテ首相の手柄だった。

コロナ地獄と、それをうまく処理するコンテ首相の前にしばらく鳴りを潜めていた守旧派の政治勢力は、EU(欧州連合)からの莫大なコロナ復興援助金に目が眩んで密かに暗躍を開始。

その流れで2021年1月13日、レンツィ元首相が率いる連立内の小政党「Italia Viva イタリア・ヴィヴァ」が政権からの離脱を表明。「壊し屋」の異名を持つレンツィ元首相が、「コロナ復興資金の使途不明確」という不明確な理由を口実に反乱を起こしたのだ。

レンツィ元首相の一存で「Italia Viva イタリア・ヴィヴァ」が同党所属の閣僚を引き上げたため、第2次コンテ内閣は事実上崩壊。2021年1月26日、コンテ首相は辞任を表明した。

それを受けて2021年1月29日、マタレッラ大統領がロベルト・フィーコ下院議長に連立模索を指示。しかしそのわずか数日後にフィーコ下院議長の連立工作は失敗に終わった。

マタレッラ大統領はあたかもそれを待っていたかのように素早く行動する。ためらうことなくマリオ・ドラギ前ECB総裁に組閣要請を出したのだ。そこにはレンツィ元首相の暗躍があった。

マタレッラ大統領は2015年、当時首相だったレンツ氏が率いる中道左派連合の強い支援で大統領に当選している。それ以前も以後も、大統領がレンツィ元首相に近いのは周知の事実である。

1月29日、マタレッラ大統領がコンテ首相ではなくフィーコ下院議長に連立模索を指示したのは、ドラギ氏に組閣要請を出すための深謀遠慮、伏線のように見える。

つまりマタレッラ大統領は、辞任を表明したコンテ首相ではなく、敢えてフィーコ下院議長に連立工作を指示することによって、第3次コンテ内閣の成立を阻んだとも考えられるのだ。

政治的にほぼ無力のフィーコ氏が連立工作に失敗するのは明らかだった。一方、コロナパンデミックを通して国民の圧倒的な支持を受け強い指導者に変貌しているコンテ首相なら、再び彼自身が首班となる政権樹立が可能だった。

マタレッラ大統領もそのことは知悉し、また昨年のコロナ地獄を乗り切ったコンテ首相への信頼も十分にあると思う。それでいながら彼がコンテ首相に3度目の組閣要請を出さなかったのは、おそらく首相の背後に控えている五つ星運動への警戒感からではないか、と僕は考える。

そこに政治的に近しいレンツィ元首相の影響が加わって、マタレッラ大統領の動きが規定された。なにしろ次の首相候補としてマリオ・ドラギ前ECB総裁の名を最初に口にしたのは、レンツィ元首相なのである。

マタレッラ大統領、レンツィ元首相、そして前欧州中央銀行総裁のドラギ氏は言うまでもなく、全員が強力なEU(欧州連合)信奉者だ。片やコンテ首相は反EU主義政党・五つ星運動と親和的。

むろんそのこと以外にも対立や苛立ちや不審また不信感などがあるだろうが、親EUで固く結びついた政治勢力は、コンテ首相を排除してドラギ氏に白羽の矢を立てたのである。

以来、今日までのほぼ一週間に渡って、ドラギ氏は彼の内閣の誕生を目指して全ての政党と政権協議を進めてきた。

結果、冒頭で述べたようにドラギ氏は、最大勢力の五つ星運動と同盟をはじめとするほぼ全勢力の支持を取り付けた。

同盟はほぼ全党一致に近い賛成。一方の五つ星運動は、内部分裂の危機を孕んだ危うい状態での賛成ではある。

五つ星運動は彼らの金看板である「一定の国民に所得を保障する」ベーシックインカムまがいのバラマキ政策を死守したい思惑がある。が、そのバラマキ策に違和感を抱く国民も多くいる。

ドラギ氏との政権協議には、普段は姿を隠している五つ星運動の大ボス、ベッペ・グリッロ氏も参加。彼はかつてドラギ氏を「ECBのドラキュラ」などと口汚く罵っていた過去をころりと忘れて、ドラギ氏に擦り寄った。

グリッロ氏が突然表舞台に姿を現したのは、コンテ首相の退陣によって五つ星運動の求心力が下がるどころか、下手をすると党がドラギ氏の連立政権から弾き出されかねないことを恐れての動きだろう。

五つ星運動に似たもう一方のポピュリスト・極右の同盟も、早期の解散総選挙を声高に主張していた姿勢を改めて、あっさりとドラギ氏支持に回った。

政治に誠実や正直を求めても詮無いことだが、2党の指導者の節操の無さは相変わらずすさまじい。もっともそれは他の政治勢力も同じだが。

民主党とレンツィ党はEU主義者という意味で、既述のように欧州中央銀行の総裁だったドラギ氏とは親和的。また同盟とともに右派勢力を形成するベルルスコーニ元首相の「フオルツァ・イタリア」も、ドラギ氏とベルルスコーニ氏が旧知の仲であることを言い訳に、さっさとドラギ政権支持に回った。

ドラギ氏は先に触れたように、ほぼすべての政党からの支持を取り付けた。おそらく今週中にも首相に就任する見通し。 現時点で明確にドラギ不支持を表明しているのは、ファシストの流れをくむ極右小政党「イタリアの同胞」のみである。




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イタリア政治危機が行く~ジコチュー政治家より経済学者のほうがいいかも


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コンテ首相の辞任を受けて政治混乱が続くイタリアでは、マタレッラ大統領が欧州中央銀行(ECB)前総裁のマリオ・ドラギ氏に組閣要請を出した。

ドラギ氏は要請を受諾して「コロナパンデミックを乗り越え、ワクチン接種を完遂して国民生活を普通に戻し、イタリアを再生させなければならない。われわれにはEU(欧州連合)からの膨大な支援金がある」と抱負を述べた。

ドラギ氏は政権樹立を目指して各政党との話し合いに入った。しかし議会多数の支持を得られるかどうかは不明。

議会第一党の左派ポピュリスト五つ星運動はただちに不支持を表明した。五つ星運動は辞任したコンテ首相の再任を強く推してきた。

また右派の中心で議会第二勢力の同盟は総選挙を主張しているが、ベルルスコーニ元首相率いるフォルツァ・イタリアはドラギ政権に肯定的。

欧州中央銀行(ECB)総裁として欧州ソブリン危機で大きな役割を演じたドラギ氏は、国際的な知名度も評価も高い。

だが彼は経済学者である。経済学者は経済を理路整然と間違うこともよくある。ましてや政治家としての力量は未知数だ。

とはいうものの、前任のコンテ首相も就任した時はずぶの政治素人だった。

コンテ首相は最初の頃は、周囲の政治家連の“操り人形”と批判されたりもした。が、間もなく有能なリーダーであることが明らかになっていった。

もしもドラギ氏が対立の激しい各政党を説得して組閣にまで至るなら、レンツィ元首相に代表される我欲のカタマリのような政治家連よりも、イタリアのためにはるかに良いかもしれない。

コンテ、もはや「前」首相のように。。



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イタリア政治危機が行く~万死では足りない罪もある

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マタレッラ大統領の指示で連立交渉をしていたロベルト・フィーコ、イタリア下院議長の工作が行き詰まった。大統領は下院議長の報告を受けて今日(2月3日)、マリオ・ドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁を大統領府に招き会談する。大統領はドラギ氏に組閣要請をする可能性が高い。

実現すればイタリアお家芸のテクノクラート(実務者)内閣の誕生となる。同時にそれはイタリア政界の「壊し屋」レンツィ元首相の勝利とも言える。レンツィ元首相はコロナパンデミックでイタリアが呻吟する中、自らも所属するコンテ政権を崩壊させて政治危機を招いた。

レンツィ元首相はその上で第3次コンテ内閣の成立を阻み、自身が推すマリオ・ドラギ氏を首班とする政権の樹立に成功しそうな勢い。マタレッラ大統領とレンツィ元首相は近い。2人はひそかに連絡を取り合ったと推測できる。

魑魅魍魎が暗躍するイタリア政界は、パンデミックに苦しむ国民をそっちのけでパワーゲームにまい進した。結果、魑魅魍魎中の最悪人・レンツィ元首相が勝利しそうだ。

レンツィ氏が勝った場合のわずかな安らぎは、極左ポピュリスト五つ星運動の影響が、おそらくかなり削がれるであろうことである。

ドラギ内閣が誕生しなければ、総選挙になる可能性もある。総選挙になれば、コロナ禍の中でのさらなる混乱と酸鼻が必至。レンツィ元首相はどう責任を取るのだろうか。

日本語の「万死に値する(中国語源)」とは、一度だけではなく何度も死んでも(殺しても)償えないほどに罪が重い、という恐ろしい表現である。

事態がどこに落ち着こうとも、レンツィ元首相にはその言葉を彼の陰惨な権謀術数への贈り物として捧げたい。


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神さまは私を忘れた

Fatima Negrini108歳


108歳のイタリア人女性、ファティマ・ネグリーニさんは昨年新型コロナに感染したが、奇跡的に回復した。

死の淵から生還した時、ファティマさんは「神様はどうやら私を呼び寄せるのを忘れたようだ」とジョークを飛ばして医師や看護師らのスタッフを笑わせ、それはメデァアで大きく伝えられた。
 
イタリアでは2021年2月1日現在、 8万8千人以上の人々が新型コロナで亡くなり、その多くは80歳以上の高齢者である。

そのために新型コロナから回復したお年寄りには注目が集まる。

欧州全体でもその傾向は強い。 

例えばイタリアよりも新型コロナの犠牲者が多い英国は、世界で最も早く新型コロナワクチンの接種を始める際、最初の患者として90歳の女性を選んで話題になった。

英国ではその後も94歳と99歳のエリザベス女王夫妻がワクチン接種を受けてニュースになった。

普通ならそんな事案がメディアをにぎわすことはない。ニュースバリューのある話題ではなく、且つ個人情報の争点にもなりかねないからだ。

だがそのトピックは、おそらく女王夫妻の了解も得て、ニュースに仕立てあげられた。

そこにはできるだけ多くの人にワクチンを受けるように促す宣伝の意味合いが込められている。

世界にはワクチン接種を嫌い、科学を疑う人々が少なからず存在している。
 
ここイタリアでは2020年12月27日にコロナワクチンの接種が始まり、2021年1月月31日現在、195万8千691回分が接種された。

新型コロナを克服した冒頭のファティマ・ネグリーニさんも、1月18日にワクチンの接種を受け、そのことも再びニュースになった。

イタリアのワクチン接種件数は欧州では英国に次いで多い。だがその数字は当初の計画に比べると遅れている。

製造元の欧州での生産が追いつかないというのが理由だが、説明に少々不明瞭な部分もあって、EU(欧州連合)と製薬会社が対立している。
 
コロナワクチンは医療関係者に優先的に接種され、次に感染すると重症化しやすい高齢者に接種される。

ことし6月に109歳の誕生日を迎えるファティマ・ネグリーニさんは、むろん高齢者として優先的に接種を受けた。

同時に、ワクチン接種者としては世界最高齢とも見られるその年齢によって、イタリア中に明るい話題を振りまいている。

それはさておき、

日本政府のワクチン接種戦略の迷走ぶりは目もあてられない。

いくつかの製薬会社とワクチン購入契約を結んだというが、中身はどうなっているのだろうか。

昨年からワクチンの供給を受けはじめているEU(欧州連合)でさえ、購入契約をめぐって製薬会社ともめている。

コロナ対策すらもしっかり行えない管政権が、生き馬の目を抜く世界のワクチン獲得ゲームで勝てるとはとうてい思えない。

いつから、誰に、どのようにワクチン接種を開始するかも不明瞭なら、ワクチンの入手そのものでさえ覚束ないように見える。

最短で2月の末に初のワクチン接種が行われたたとしても、EU(欧州連合)に2ヶ月以上も遅れてのスタート。

世界で初めて新型コロナワクチンの接種を始めたイギリスに比較すると、ほぼ3ヶ月もの遅れになる。

日本はワクチン接種戦略で大きく失敗して、その結果経済で欧米ほかの国々に太刀打ちできなくなる、という懸念が世界のそこかしこで出始めている。

そんな折に菅首相は、国会質疑で議員の批判を受けて「失礼だ。一生懸命仕事をしている」などと子供にも劣る愚かな答弁をした。

日本最強の権力者、という願ってもない地位をタナボタで得た彼は、その僥倖に深く感謝して謙虚になるどころか、権力を笠に着て居丈高になっている。

何おか言わんや、である。

民主主義の底の浅い日本の権力者は、お上に無批判に頭を垂れる国民が多いことに乗じて、自らが国民の下僕であることも忘れてすぐに増長しがちだ。

管首相の「失礼だ」発言はそのことを端的に示している。

国民への真摯な語りかけもコロナ対策も不得手な彼は、国民に「失礼」だ。さっさと退場してもらうほうがよほど国益にかなうのではないか。




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イタリア政治危機が行く~イタリア首相が辞任、大統領が政局の主役に

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2021年1月26日、イタリアのコンテ首相が辞任。マタレッラ大統領に辞表を提出して政局の行く末を大統領にゆだねた。

マタレッラ大統領は今後全ての政党と協議して、

①コンテ(前)首相に議会多数工作を促し再び組閣するように要請する。

②全政党に呼びかけて挙国一致のテクノクラート(実務者)政権を樹立する。
※首相は話し合いで決定。場合によってはマタレッラ大統領自身が兼務することもある。

③議会を解散して総選挙を行う。

という、3つの可能性を目指すことになる。

イタリア大統領は普段は実権のない儀礼的な存在だが、今回のような政治不安が起きた時には強い権限を持つ。

今後数日、状況次第でははるかに長く、イタリアの命運は大統領に託される。

イタリアでは上院と下院が全く同等の権限を持つために政権が安定しない。その上に今回のような危機にあたっては、大統領が絶対の力を与えられる。

いわば三すくみの権力構造がイタリアの政治の特徴である。この奇妙な形は、権力を一箇所に集中することでファシズムの台頭を許した過去への反省から生まれた。

権力を分散してファシズムや独裁を回避しようというわけである。だが皮肉なことにその体制は頻繁に政治不安をもたらす。

政治不安の実際は、力が拮抗する上下両院によっていて、大統領はむしろ混乱の調停役になるのだが、制度上の第3勢力である大統領の大きな権限も一筋縄ではいかない。

今回の政治危機は、壊し屋の異名を持つマテオ・レンツィ元首相の我欲一つによってもたらされた。EUからの巨大なコロナ救済金に目がくらんだ元首相が、連立政権を「壊して」しまったのだ。

政治に駆け引きは付きものである。一国の権力の周囲では、駆け引きは権力を握る者の横暴を抑える働きをすることもある。

だが現在イタリアは、コロナパンデミックの脅威にさらされて呻吟している最中だ。そこに大きな政治混乱を持ち込んだレンツィ元首相の罪は重い。




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世界最古のカフェの瀬戸際

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ベニスのカフェ・フローリアンが廃業の瀬戸際に立たされている。言うまでもなく新型コロナパンデミックが原因である。

カフェ・フローリアンは1720年12月29日に開業した。ベニス最古の、おそらく世界でも最古のカフェと言われている。

昨年12月29日がちょうど創業300年の節目だったが、都市封鎖下のベニスでは飲食点の営業が禁止されている。

禁止が解かれても、観光客でもっているカフェ・フローリアンは生き延びられない。ベニスにはほとんど観光客がいない。

カフェ・フローリアンは開業300年記念を祝うどころか、店の扉さえ開けられないまま昨年暗い年末を過ごし、年が明けた今も店の営業ができずにいる。

カフェ・フローリアンはひとことで言えば喫茶店だが、歴史と物語と文化に彩られて、もはや単なる飲食店ではなく古都ベニスの欠かせない一節になっている。

店は17世紀に完成した街の行政館の回廊にある。建物の完成から80年後に開業したが、店自体も古色美しい荘重な雰囲気に満ちている。

大理石のテーブルの間を完璧に正装したウエイターが行き交う。壁の金箔や絵画や年代ものの装飾品などがそれを見つめている。

カフェ・フローリアンはカフェ・ラッテの発祥地としてもよく知られている。軽い食事も提供される。だが店の醍醐味は飲食物ではなく充満する「時間の雰囲気」である。

「時間の雰囲気」の中にはカサノバからバイロン、ディケンズからヘミングウエイ、チャップリン、ワグナー、そしてアンディ・ウォーホルなど、など、世界中のセレブが残した夢の残り香も含まれる。

カフェを訪れた世界の有名人は枚挙に暇がない。いま述べた人々は記録に残っている大物のほんの一部だが、記録にはなくてもベニスを訪れたあらゆる分野の世界中のスターは、1人残らず店を訪れている可能性がある 。

ベニスを旅する一般の観光客もほとんどの人が カフェ・フローリアンを訪れているのではないか。訪れないのは、おおかた店の名を知らない者ぐらいだろう。

仕事とプライベートでベニスを頻繁に訪れる僕も店内を撮影したり、店の内外の席で飲食を楽しんだりしてきた。その経験から訪問者は店の「雰囲気」に魅了されるのだと実感として分かる。

店は常時70人ほどのスタッフを雇い、夏の最盛期にはさらに多くのスタッフが働く。 カフェ・フローリアン=ブランドは2019年には1千万ドル以上の売り上げがあった。

ところがコロナが蔓延した2020年にはその80%が失われた。ワクチンが行き渡るなど、劇的な展開がない限り、ことしも見通しは暗い。

カフェはロックダウンが始まって以来、国からの援助を一切受けていないという。倒産の瀬戸際にある。おそらく決定的な閉鎖に追い込まれるだろう。

とは言うものの―これは私見だが―ベニスの歴史の一部をなす店は、たとえ倒産しても誰かが買い取って事業を継続するのではないか。由緒ある店にはそれだけの魅力と価値がある。

だが言うまでもなく、そうやって再開された店が、これまでの優雅な雰囲気と伝統と心意気を維持していくのかどうかは不明だ。

イタリアの多くの歴史的なブランドやモニュメントや工芸や商品などと同様に、中国人ビジネスマンやロシア系商人らが、新しい伝統を作ろうと群がり集うのかもしれない。

また近年はカフェ・フローリアンも、母体の古都ベニスも、ボー大な大衆観光客に占領されることが多くなっていた。特に中国人旅行者が目立った

新型コロナの猖けつで事態はふいに転回した。たとえコロナが終息しても観光客はすぐにはベニスに戻らない、という分析もある。

それならばそれで、ベニスもカフェ・フローリアンも、昔日の実態と面影を取り戻すチャンス、と考えるのは多分単なる希望的観測だろう。

たとえその可能性があるとしても、ベニスの街自体はともかく、カフェ・フローリアンが将来も存続しているのかどうか覚束ない、というのはとても寂しいことである。



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バイデン時代への期待・倦怠・難題

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2021年1月20日、ジョー・バイデン第46代米国大統領就任式の一部始終をライブ中継で見た。新大統領は少し長過ぎた就任演説の中で民主主義という大儀が勝利したと強調。同時に米国民の結束と融和を呼びかけた。

またバイデン大統領は、議会議事堂襲撃に代表される国内テロや白人至上主義を打倒するという言い方で、その名を一度も口にすることなく退任するトランプ大統領を厳しく糾弾した。

ひとことで言えばバイデン演説の内容は、自由と平等と多様性及び民主主義を信奉するアメリカ国民が、アメリカはかくありたいと願う「理想のアメリカ」へ向けて歩もう、と語りかけるものだった。アメリカには人種差別や格差や不寛容がはびこり、その傾向はトランプ時代に加速した。

アメリカの理想を訴えた、という意味ではバイデン新大統領の演説の中身は目新しいものではない。過去には何人もの大統領が、バイデン新大統領とよく似た内容を言葉を変えて語っている。それでもバイデン演説は特別なものである。なぜならそれがトランプ時代のレガシーである分断と憎しみが渦巻く中で提示されたものだからだ。

トランプ以前の世界の大半は、「理想のアメリカ」を追い求める米国民とアメリカ合衆国を賛美し慕ってきた。だが差別と憎悪と不寛容を平然と口にし行動するトランプ大統領の登場で、賛美は失望に変わり傾慕は嘲笑に変わった。

人々ははじめ米国の変質は、トランプ大統領という怪異だけに付いて回る独特の現象だと考えた。だがそれは米国民のほぼ半数に当てはまる世界観であることが次第に明らかになった。トランプ大統領は彼らの存在ゆえに誕生したのであり、その逆ではない。事態は2016年の選挙時に既に明らかになっていたが、世界はそれを中々理解できなかった。それが常識を覆す異様な状況だったからだ。

だが時が経つにつれて変容は疑いないものとなり、アメリカ国内は深く分断されていった。アメリカの趨勢は世界にも影響し、同様の傾向が強まって行った。その中でくっきりと全貌を顕したのがBrexit(英のEU離脱)であり、フランスの極右ル・ペンの躍進であり、イタリアの極右政党「同盟」の連立政権入りだった。ドイツ、オランダ、オーストリア他の国々にも極右勢力が台頭した。

バイデン新大統領は、かつてのアメリカの理念を前面に押し出して国内の融和を図り、世界と協調すると宣言した。だがアメリカの民主党にもトランプ主義と同じ極論や過激姿勢がそこかしこに見受けられる。バイデン新大統領の誕生は、多くの分野でトランプ時代よりはましな変化をもたらすだろうが、米民主党的偏向もまた必ず形成されるに違いない。

イデオロギーが存在する限りそれは避けることができない。ポイントはバイデン大統領が、トランプ時代の負の遺産を政権の糧にして、民主党ならではの極端化を抑えながら対立勢力も取り込んだ、真に融和的な政策を押し進められるかどうかにある。

例えば覇権主義に取り付かれている中国との付き合い方だ。国際法を無視しては蛮行に走る中国を、バイデン政権は日欧などの同盟諸国と協調しつつ強く指弾し牽制することができるのか。つまりトランプ政権並みの明快さで反中国キャンペーンやメッセージを世界に送り続けられるかどうかも焦点だ。

アメリカが先導する民主主義陣営は中国ともむろん対話をしなければならない。だが中国が対話をする振りで、香港やチベットやウイグルまた尖閣を含む東シナ海域や台湾で無法傲慢な動きを続けるならば、外交辞令の穏当な言語をいったん脇に置いて、トランプ大統領まがいの強い批判の言葉を投げつけることがあってもいいのではないか。

トランプ大統領はおよそ外交儀礼とは縁のない露骨な言行で中国と対峙した。それはあまりにも刹那的に過ぎて、長期的には中国に資する危険があるとも批判された。だがトランプ政権の声高な中国批判には明らかなメリットもあった。老獪な動きで自らの虚偽を隠蔽しようとする中国の正体を絶えず人々の意識に上らせ続けるという効果だ。

バイデン新大統領は、日本を含む西側同盟国と協力しながら中国と向かい合うことを宣言している。それは長期的にも利のあるやり方だ。だが習近平主席率いる唯我独尊の一党独裁政権に対しては、対話と同時にトランプ政権ばりの厳しい姿勢で臨むことも必要ではないか。

バイデン新大統領はこれまでどちらかと言えば親中派の政治家と見られてきた。米中が対立する状況でもその姿勢は変わらない可能性がある。対話と同時に威嚇に近い圧力を中国にかけることができるのかどうか。またその意思があるのかどうかさえ不明だ。

スターリン並みの独裁政治を強行する習近平政権には、民主主義世界の穏健なやり方は通用しないことが明らかになっている。中国は日本を含む西側陣営の尽力もあって貧困を克服した。それどころか世界第2の経済大国にさえなった。だが自由主義世界が期待したような民主的な体制に変貌することはなかった。

習近平主席と共産党が支配する限り、中国は民主的な政体に移行するどころかその精神や哲学や思想を尊重することさえあり得ないことは明らかだ。従って自由主義世界は、バイデン新大統領のこれまでの在り方に代表される、中国への穏健一辺倒のアプローチ法を改める必要がある。そして変化へのヒントは、実は使命を終えたばかりのトランプ政権にあるように思える。

僕は理想を満載したバイデン大統領の就任演説を少し斜に構えて見、聴いた。演説の内容は目新しくはないものの、まさに理想に満ちていた。全てが実現されれば素晴らしい主張ばかりだった。だが新大統領に果たしてそれらの理想を現実化する力量があるかどうかは疑問だ。

大統領就任式のあと、僕が直ちにブログに思いを書かなかったのはその疑問ゆえだ。僕はバイデン新政権をトランプ狂犬政権に替わる制度として大いに支持するが、今のところその力量に関しては懐疑的だ。バイデン大統領の、平凡な議員や副大統領としての彼自身の前歴を打ち壊す、まさに大統領然とした明白な実力行使を見なければならないと思うのである。





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コンテ内閣、上院できわどい信任


2012年12月1日~8日 026 650


イタリア上院は19日、賛成156、反対140の僅差でコンテ内閣を信任した。

レンツィ元首相が率いる小政党「Italia Viva イタリア・ヴィヴァ」が連立政権から離脱したのが政局混乱の原因である。

議会絶対多数は161だった。そこに届かない場合はコンテ首相が辞任するなど、さらなる政治不安が出現する可能性もあった。

単純多数で信任されたンテ首相は「少数与党政権」を率いることになる。

イタリアでは珍しくないことだが、新型コロナパンデミックの中での厳しい政権運営になることが必至である。

イタリアでは上下両院が同等の権限を持つ。コンテ首相は予算案などの重要法案の可決の度に絶対多数工作をしなければならない。

パンデミックがはびこる非常時に、エゴイズム丸出しで政治混乱を演出したレンツィ元首相は無体な政治家だが、無体がイタリア政治の常態だから、今後もしぶとく恥知らずに生き延びるのだろう。



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不覚人たちの不覚

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イタリア下院では18日、コンテ内閣の信任投票が行われた。レンツィ元首相が主導する小政党「Italia Viva イタリア・ヴィヴァ」が連立政権から離脱したのが混乱の原因。

下院では賛成321、反対259で内閣は信任された。だが19日の上院では絶対多数を獲得しての信任は厳しい見通し。

イタリアでは一方的に連立政権を離脱したレンツィ元首相への反感とともに、中国寄りの反体制政党「五つ星運動」に親和的なコンテ首相への不信感も少なからずある。

上院議員のうちには、昨年の新型コロナ第1波の危機を乗り切ったコンテ首相を賞賛しつつも、中国と親しい左派ポピュリストを頼る姿勢を善しとせずに反対票を投じる者も出ると見られている。

政治アナリストによる分析等では、上院で絶対多数に届かなくてもコンテ内閣の信任投票は可決される可能性が高い。

「Italia Viva イタリア・ヴィヴァ」所属の上院議員は、信任投票では棄権に回る方針。そのため他の欠席議員数などを含めれば、絶対多数よりは少ない単純多数には届くと見られる。

単純多数で信任された場合、コンテ首相は「少数与党政権」を率いることになる。その形はイタリアでは珍しくない。が、新型コロナパンデミックの中では異様に厳しい政権運営になることが確実だ。

なぜならイタリアでは、予算案などの重要法案は絶対多数での可決が法律で義務付けられている。それらの可決の度に絶対多数工作をしなければならないのは政権にとって大きな苦痛だ。

上下両院が同等の力を持つイタリアの政治システムではなおさら厳しい。コンテ内閣を「壊し」つつあるレンツィ元首相は2016年、上院の力を削ぐか否かの国民投票に敗れて下野した。

レンツィ元首相は上院の権限を縮小することを強く主張した。上院の力を大幅に弱めることには、当の上院議員以外の全てのイタリア人が賛成している、と言われるほどそのシステムは長く問題視されてきた。

レンツィ元首相は真っ当な考えを推し進めながら当時大きな間違いを犯した。いつもの唯我独尊体質のために自らを過信し、「私を取るか、否か」という言い方で国民投票のキャンペーンを張って、思いきりコケた

思い上がったキャンペーンの文句に国民は反発し、彼に対抗する政治勢力は国民の憤懣をうまく利用して、国民投票をあたかも「レンツィ信任投票」のように仕向けた。

そうやって必ず卑小化されると見えた上院は強権体質のまま存続し、レンツィ首相は辞任した。レンツィ首相は上院改革に失敗したことと連立政権から離脱したことで、コンテ首相を2重に貶めていると見ることもできる。

コンテ首相が拠って立つ「五つ星運動」は、現金バラまき策のベーシックインカム制をゴリ押し成立させたり、中国との連帯を強く主張するなど、過激左派的な不穏な勢力だ。従って僕は彼らを支持しない。

だが今は、パンデミックが猖獗を極めている非常事態だ。そんな時に我欲に目がくらんで政権を瓦解させようとするレンツィ元首相一派の動きは言語道断だ。

コロナ危機のただ中でイタリアが政治不安に陥るようなら―それがイタリアのお家芸とはいうものの―レンツィ元首相は、議会議事堂の襲撃教唆で「万死に値する」ほどの不名誉にまみれて退任するトランプ大統領と同じ不覚人である。



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パンデミックよりもパンデミックなイタリア・レンツィ元首相


実写ピノキオ切り取り


マッテオ・レンツィ元首相が、支持率3%以下の自身の極小政党「Italia Viva」を連立政権から引き離した。コンテ内閣は一気に崩壊の危機にさらされた。

このままコンテ政権が倒れるなら、レンツィ元首相は進行中の新型コロナパンデミックよりも悪質なイタリアのパンデミックとして歴史に名を刻むことになるかもしれない。

レンツィ元首相の反乱の動機は、EU(欧州連合)からイタリアに贈られる莫大な新型コロナ復興資金の使い道に対する不満。

いろいろもっともらしい言い分があるが、結局彼の真意を翻訳すると⇒【俺にも分け前を寄越せ】あたりである。

レンツィ元首相は、若くしてイタリア政界にデビュー。彗星の勢いで首相にまで上り詰めた。頭の回転が速く弁舌が得意なところが新鮮に見えた。

ほどなくして、回転の速い頭はジコチューな発想をもたらすだけの機能に過ぎず、能弁は巧言令色以外の何ものでもないことが判明。

それらの残念な能力はさらに悪いことに、彼に傲岸という風体も付け加えた。

僕はかつて彼を評価し将来に期待した。多くの不誠意で老体の政治家が跳梁跋扈するイタリアでは、若いという事実だけでも貴重に見えた。

レンツィ元首相はEU(欧州連合)信奉者でもある。EUは欧州の国々の融和と、その結果としての経済的メリットの顕現という意味でも重要だ。

さらに独裁勢力の中国やロシア、また狂犬的な米トランプ主義とそれに連なる政権等に対抗する総合力としても見逃せない。

加えてEUは―少なくない問題を抱えつつも―これまでのところは究極の「戦争回避装置」という重要な役割も十分に果たしている。僕はEUを強く支持するが、レンツィ元首相には失望しか感じない。

レンツィ元首相は2016年12月の憲法改正を問う国民投票で、「私を取るか、私を失うか」という尊大なキャッチフレーズをかかげて戦って大敗。権力の座から引き摺り下ろされた。

彼はそれでも懲りず、民主党の党首になってからもいかにも彼らしいさまざまな権謀術数を展開。陰湿な動きはイタリア政局を揺らし続け、彼は「壊し屋」と異名された。

「壊し屋」は政界の多くのシステムや関係やルールを壊し続け、ついには彼自身が所属する民主党さえも壊して、追随する少数の国会議員を率いて極小政党「Italia Viva」を結成した。

レンツィ元首相は今回、その極小政党「Italia Viva」を道具にして、存在意義を見せたい、落ち目の党勢を拡大したい、などの強い我欲に駆られて「俺の言うことを聞かなければ連立の枠組みを抜ける」とコンテ首相を脅した。

そして脅しが効かないことを悟ると、すぐさま自らも寄って立つコンテ連立政権を「壊し」にかかったのである。そこにはレンツィ氏らしい邪悪且つ狡猾な駆け引きだけが透けて見える。

イタリアは依然としてコロナ危機のまっただ中にある。そして危機を乗り越えるにはジコチューな主張が多い従来の政治家ではなく、敵を作らずバランス感覚に優れ且つ誠実なコンテ首相が最適だ。

そのことは昨年3月から5月にかけてのコロナ地獄のまっただ中で十分以上に証明された。

大学教授から突然内閣首班に抜擢されたコンテ首相は、最初の頃こそ周囲の政治家連の操り人形と批判された。だが間もなく彼は有能なリーダーであることが明らかになっていった。

狡猾な既成政治家らをうまくかわし、また別のときには彼らを適切にまとめて政権を運営した。そのコンテ首相の武器は、敵を作らない温厚とバランス感覚と、国民に愛される誠実さだった。

やがてコロナパンデミックが起こった。コンテ首相の政治手腕は、世界最悪のコロナ地獄の中で最も良く発揮された。

首相は阿鼻叫喚のコロナ修羅場の底で、テレビを通して文字通り連日連夜、団結と我慢と分別ある行動を、と国民に語りかけ訴え続けた。

全土ロックダウンの呪縛の中、恐怖と不安にわしづかみにされながらテレビ画面で彼の演説を見、聞く人々は、その誠心に説得され共感し勇気付けられていった。

第1波の過酷なロックダウンでは、法律や規則や国の縛りが大嫌いな自由奔放なイタリア国民の、なんと96%もが施策を支持した。

それ以外には当時のイタリア国民には選択肢がなかったこともある。だが、過酷な政策への異様なほどに高い支持率は、コンテ首相の類い稀な意思伝達能力と誠実と情熱によって成就されたものだった。

特に重要なのは首相の誠実さである。彼の言動にはうそ偽りのない誠情があふれているため国民の信頼を集め、その度合いは日々大きくなっていった。

レンツィ元首相にはコンテ首相にある清廉正直な資質が全く感じられない。あるのは自己中心的な能弁と政治的駆け引きだけだ。

稀代の策略家であるレンツィ元首相は、彼と彼の政党が、三角波の渦巻くイタリア政局の藻屑となって消えるかもしれない瀬戸際で、ぎりぎりの政治ゲームを仕掛けている。

だがイタリアは、今この時も新型コロナ危機のまっただ中にいる。そしてコンテ首相は、世界最悪のコロナ第1波の地獄を先導し克服した立役者だ。

少なくともパンデミックが終わるまでは、国民の信頼が厚いコンテ首相が政権を担うべきではないか。

レンツィ元首相は論外だが、この国の他の政治家らにも、未曾有のコロナ危機を切り抜ける力量と勇気、そして何よりも人としてのまた政治家としての誠実さがあるとは全く思えない。



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万死に値する政治的放火魔トランプにも三分の理があるかも

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米国議会議事堂へ殴りこむよう支持者を教唆したトランプ大統領は万死に値する。だが例によって、統計上はアメリカ国民の半数近くはそうは考えていない。支持者らの暴力行為には眉をひそめても、トランプ大統領を支持するアメリカ国民は依然として多いのだ。

アメリカはもはや民主主義国家の理想でもなければ世界をリードする自由の象徴国でもない。ネトウヨヘイト系排外差別主義者とそれを否定しない国民が半数を占める、「普通の国」に過ぎない。だからトランプ大統領が誕生したのだ。彼がアメリカを作り変えたのではない。

むろんトランプ大統領の存在は、自由と寛容と人権と民主主義を死守しようとする「理想のアメリカ」の信奉者をくじき、右派ポピュリズムに抱き込まれた人々を勢いづかせた。そうやって悪のトレンドは過去4年間ひたすら加速し続けた。

アメリカほど暴力的ではないが、ネトウヨヘイト系排外差別主義者とそれを否定しない国民が半数を近くを占める普通の国は、欧州を始め世界中に多い。ここイタリアもフランスもイギリスも、そして日本もそんな国だ。南米にも多い。

アメリカ以外では、トランプ登場以前の良識や政治的正義主義(ポリティカルコレクトネス)が一見優位を占めるような空気がまだある。そのためアメリカで起きている無残な政治的動乱は対岸の火事のようにも見える。

だがイギリスには保守ポピュリストのBrexit信奉者がいて、フランスには極右のル・ペン支持者がいる。ここイタリアにおいては、極右の同盟支持者とそれに同調する反EU勢力を合わせると、国民のほぼ半数に相当する。それらの人々は、あからさまに表明はしなくても心情的にはトランプ支持者と親和的である。

さらに言えば、普通の国のそれらの右派勢力は―彼らがいかに否定しようとも―どちらかと言えば中国やロシアや北朝鮮などの独裁勢力とも親和的なリピドーを体中に秘めている。ネトウヨヘイト系排外差別主義はほぼ独裁思想なのである。

そうは言うものの、アメリカに関して言えばトランプ支持者また共和党支持者に対抗する民主党も、彼らの対抗者と同様に危なっかしい。成立する見込みのないトランプ大統領弾劾決議案を、ここで再び出したことは何とかの一つ覚え的だ。

絶望的な上院での3分の2の賛成を目指すのではなく、民主党がかすかに過半数を占めることになる1月20日以降に狙いを定めて、上院の過半数の決議でできるトランプ公職追放に狙いを定めているとも言われる。

それならば理解できる。だがその場合でも、共和党とトランプ支持者らの激しい反発を招いて、アメリカ国民の融和と癒しはますます遠ざかるだろう。リスクに見合うだけの意義があるかどうかは不明だ。

もっとも既述したように、アメリカはネトウヨヘイト系排外差別主義者とそれを否定しない国民が半数を近くを占める国なのだから、いずれにしても今後しばらくの間は、分断と対立と不穏が渦巻く社会であり続けるだろうが。

トランプ時代への反動という一面があるにせよ、民主党の施策も極端な動きが目立つ。政権の広報担当者を全員女性で固める策などがその典型だ。どっちもどっちなのである。

トランプ大統領は2016年、差別や憎しみや不寛容や偏見を隠さずに、汚い言葉を使って口に出しても構わないと考え、そのように選挙運動を展開して米国民のおよそ半数の共感を得た。

そして前述のようにネトウヨヘイト系差別主義や右派ポピュリズムは、米国のみならず世界のほぼ半数の人々が隠し持つ暗部であることが明らかになりつつある。いや、明らかになった、と言うほうがより正確だろう。

トランプ大統領の、大統領にあるまじき人格下種と差別思想はあくまでも万死に値する。だが、彼の存在は、大手メディア等に代表される世界の「良識」が、実は叩けば埃が出る代物であることも暴き出した。

そしてその巨大な負の遺産を暴き出したこと自体が、世界が真の開明に向けて歩みだす「きっかけ」になるなら、あるいはわれわれは将来、彼の存在は「大いなる必要悪」だったとして再評価することになるのかもしれない。



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レンツィさんの狼藉の気配がうとましい



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イタリア政局はコロナ禍もなんのその、風雲急を告げるいつもの化かし合いが進行中。

壊し屋」のレンツィ元首相が、EUからの莫大な補助金の分け前に与ろうとして、良い人の振りでコンテ首相に詰め寄っているのだ。

分け前を寄こさなければ、彼の小政党「Italia Viva イタリア・ヴィーヴァ」を連立政権から引き上げてコンテ内閣を倒す、と息巻いている。

政治家素人のコンテ首相は、就任したての頃こそ連立政権の2人の首謀者、五つ星運動ディマイオ及び同盟のサルビーニ両党首の操り人形と揶揄された。

だが、イタリアが世界最悪のコロナ地獄に陥った際、素晴らしいリーダーシップを発揮して国民に絶賛され、一気に有能な政治家へと変身した。

一方レンツィ元首相は、彼の政権の初めの頃こそ弁舌の巧みさと若さで国民の期待を集めた

だが、彼の能弁は巧言令色の類いで、権謀術数の塊のような政治家であることが国民にバレて政権の座を追われた

イタリアのコロナ惨禍は依然として治まらない。治まるどころかどん底の盛りである。

レンツィ元首相にはぜひ得意の雄弁と巧言また傲岸を控えて、一度はイタリア国民のために働いてほしい。

どうやって?

新型コロナが終息するまでは、コンテ首相を支えてもらいたい。

支えなくてもいいから、せめてコンテ首相を「壊す」ようないつものジコチューな無法行為を慎んでほしい。

コンテ首相を惜しんで言うのではない。

凄惨なコロナ地獄からイタリアを救えるのは、レンツィさんをはじめとする政界の魑魅魍魎ではなく、誠実な政治素人のコンテ首相しかいないからだ。

なぜそれが分かるかって?

だって昨年2月から5月にかけてのロックダウン中にイタリアを救ったのは、魑魅魍魎ではなくコンテ首相だったではないか。



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