イタリアには飛び石連休というケチなつまらないものは存在しない。
飛び石連休は必ず「ponte:ポンテ」つまり「橋」または「繋(つな)ぎ」と呼ばれて「全連休」になる。
要するに、飛び飛びに散らばっている「休みの島々」は、全て橋で結ばれて見事な「休暇の大陸」になるのだ(笑)。
たとえばこんな具合:
来たる11月1日はカトリック教会の祝日の一つ「諸聖人の日」。日本では万聖節(ばんせいせつ)」とも呼ばれるこの日はイタリアの旗日である。
11月1日は火曜日。そこで土、日の休みに挟まれた10月31日の月曜日を何のためらいもなく、当たり前に、大喜びで、拍手喝さい、太っ腹に休む。
今回の場合は残念ながら飛び石の間のウィークデーは1日だけだが、挟まれている平日が2日でも3日でも構わない。とにかく全部休んじゃえ、という風になるのがイタリア的な発想である。
そればかりではなく、飛び石を橋で繋(つな)いで全連休にした後で、前後を見回して可能ならば連休の前の日や後の日もまた休んでしまう、ということもひんぱんに起こる。
次の「ポンテ」の例で言う。
「諸聖人の日」の翌日の11月2日は、カトリック教会で全ての英霊のために祈りを捧げる「死者の日」と呼ばれる祭礼日。教会のみならず、墓地に足を運んで祈りを捧げる人も多い。
公休日ではないが「えい、休んじゃえ!」と、この日もまたいさぎよく休む輩(やから)が出るのである。
ひとことで言えばイタリア人は、何かのきっかけや理由を見つけて「なんとしても休む」ことを虎視眈々とねらっている。休みという喜びを見出すことに大いなる生き甲斐を感じている。
それを「怠け者」と言下に切り捨てる見方もあるだろう。が、僕にはそれは、人生を楽しむ達人たちの行動規範、という風にしか見えない。
あるいは、ま、いわば「人間賛歌」の大合唱。
長い夏休みやクリスマス休暇、あるいは春休みなどとは全く別に、イタリアではそうしたことが、一年を通して当たり前に起こっている。
ちなみに今日10月29日から始まる連休には、およそ700万人のイタリア人が旅行に出かけると見られ、そのうちの10%が国外に向かう。そしてその経済効果は約20億ユーロ(2200億円内外)と試算されている。
試算された額が多いのか少ないのかは良く分からないが、ぐんと寒くなった今の時期に、冷気などものともせずに700万人もの人々が一斉に旅行に出かける図は、椿事(ちんじ)と形容してもいい楽しい出来事ように僕には思える。
もっともイタリアに住んでいる者がそれしきのことで驚いていたら、身が持たないし体が幾つあっても足りない、ということになるのだけれど・・