
イタリア、シチリア島のタオルミーナで開かれたG7が終わった。イタリアで開かれることもあって、準備段階から気をつけて見続けた。その感想は、G7は「やはり」もうやめるべき、である。
金持ち国の首脳が集まって、世界をわがもの顔に語る時代遅れの会議には、もうほとんど何の意味もない。各国首脳はそのことを知っている。
その証拠にトランプ米大統領とメルケル独首相は、会議終了後に行われる恒例の記者会見をスキップ、逃走した。
トランプさんは記者にロシアゲートを追求されるのを嫌い、メルケルさんは会議での不協和音から目をそらしたい一心で記者会見を拒否した、とされる。
ということはつまり、彼らが会議そのものの重要性を少しも認めていない、ということにほかならない。その逆ならば2人とも、何はさておいても会議の成功と意義を説明するために記者会見を開くはずだ。
それを避けたのは、G7がやはり形骸化した空虚なセレモニーに過ぎないからだ。他の参加国の首脳らも、そのことを知っている。おそらく日本のトップを除いて。
会議前、日本のネトウヨ政治家と市民またネトウヨメディアは、タオルミーナでは「G7サミットの古株」になった安倍首相がリーダーシップを発揮して、新顔の米英仏伊の首脳らを引っ張るだろう、と相も変らぬチンケな分析を披瀝していた。
世界から顔を背けて、日本という家に閉じこもって壁に向かって怨嗟を叫び続けているだけの、それらの「ネトウヨ勢力」には世界は見えない。そこに支持されて得意になっている安倍さんも同じ穴のムジナだ。
内弁慶の安倍さんは、G7が唯一の国際舞台での見せ所、とわきまえていることもあって、ネトウヨ勢力を背景に懸命に目立つ努力をしたが誰にも相手にされなかった。
アメリカのネトウヨ大統領との間に「北朝鮮への圧力を高める」という、陳腐で無能な口約束を交し合い、それと同じ合意を他の5ヶ国とEU首脳とも交わした、という無内容な声明を引き出しただけだ。実質的な成果など何もないのだ。
他には国際的な活躍の場がない安倍さんはG7を重視していることが明らかだ。またその気持ちも分からないではない。が、他の国の首脳らはG7のミッションがとうに終わっていることを知悉している。
G7はもともとは政治ではなく経済のことを話し合う目的で始まった。日本ではあたかも「政治的な重要問題を話し合う場」でもあるかのように主要メディアでさえ喧伝するが、それはほとんど印象操作にも似たフェイク所感だ。欧米のメディアは一貫してそれを「経済サミット」と位置づけてきた。
時間経過と共に、政治的な問題も話し合われる場合も確かに多くはなった。が、G7サミットの本質は金持ち国による「金儲けの話し合いの場」である。金儲けの話し合いの場に、いまや世界第2の経済大国である中国が参加していないのは茶番だ。
また世界政治を話し合う場であるならば、往々にしてそのトップつまりプーチン大統領が、もはや「世界最強の権力者」、とさえみなされるロシアが参加していないのは噴飯ものだ。
同時に、政治的には世界でほぼ影響力ゼロの日本やイタリアやカナダが、したり顔でサミットのテーブルに着いているのはお笑い種だ。
G7は2014年、クリミア問題への制裁処置としてロシアを(G8から)排除した。また中国に対しては、グループ入りを検討してみることさえばかばかしい後進国とみなして、冷淡な態度を取ってきた。
だがいまや経済規模の小さいロシアは強大な政治力国であり、政治力の劣る中国は巨大な経済国だ。後者は経済力を背景に政治力も日々高め続けている。
ロシアと中国の悪を嫌って彼らを金持ちクラブから締め出しても、彼らの悪がなくなる訳ではない。G7のメンバー国は、自らを世界のリーダーだと自認するならば、悪を悪のまま排除しておくのではなくそれを取り込んで、彼らが悪ではなくなるように仕向けるべきだ。
G7構成国が中心になって進めてきた対ロシアまた対中国政策はほとんど功を奏していない。ロシアは経済制裁などものともせずにシリアほかに介入して混乱を増長させている。
中国は中国で米国を相手に一歩も引かない力の張り合いを繰り返し、日本や韓国その他の対立国など眼中にないほどの大物ぶりだ。
G7は今後も存続を目指すなら、ロシアと中国を巻き込んでG9を目指すべきだ。もしもG9がいやならば、解散して、たとえばG20 に軸足を移すなりして活動するべきだ。それが終わコンG7を救う方法である。