中国製“出前一丁”
かつては日本の製品の猿まねをしただけの、臭くてまずくて多分不健康な中国製ラーメンは、今や日本のそれと見分けがつないほど品質が向上した製品も出ている。
日本製ラーメンのクォリティーをしのぐものもやがて出てくるに違いない。それとももう出ているのかもしれないが、今日現在は僕は知らない。
日本に帰国する度に、大量の本とインスタントラーメンを買い込んでイタリアに戻るのが、長い間の僕の習いである。
本は自分のため。ラーメンは家族と自分のため。息子2人も妻も日本製のインスタントラ-メンが好きである。イタリア人友人らに贈ることもある。
毎回100食以上を持ち込むが、けっこう早く食べ切ってしまう。そういうときに中国で生産されてアメリカ経由でイタリアに入る(らしい)日本製品を買うことも過去にはあった。
どういう仕組みなのか、味噌ラーメンなどの日本オリジナルのものも中国製という触れ込みで出回っていた。ところがこれがほとんど偽物といってもよい品で臭いがきつい。
ラーメンを固める油が劣悪であるのが原因らしい。だが乾燥具材や粉末スープは日本で買うものと変わらなかった。
そこで 揚げ麺だけを別に茹でて水を捨てる方法で臭いを消し、別の鍋で乾燥具材と粉末スープと共に再び調理をする、という迂遠な方法をとった。それでも臭いがかすかに残った。
そういう製品は最近は見ない。その代わりと言って良いかどうかわからないが、中国や韓国製のインスタントラーメンがアジア食品店などを席巻している。
最近、日本原産でたぶんライセンス生産をしている「出前一丁」を食べる機会があった。麺の臭みはほとんど無く、日本製とは風味が違うが、それほど気にならない味がした。
「出前一丁」は早くから香港や台湾でも大人気になったブランドだが、初めの頃はやっぱり麺の臭みがあった、という話を聞いた。
その体験を踏まえて、完全に中国生産の即席ラーメンを買っておそるおそる食べてみた。こちらも日本製品と遜色のないクォリティだった。
ラーメンの品柄の向上は、そのまま中国の経済成長と裕福を反映している、とつくづく思う。貧しい中国国民が豊かになって、ラーメンの味にうるさくなったから麺の臭みがなくなったのだ。
当然過ぎるほど当然の成り行きだが、少し前までの中国産物資のお粗末を見ている僕の目には、まぶしいほどの変化に見える。
イタリアの市場を席巻していた日本製の家電製品などが、韓国製や中国製に取って代わられて日は浅いが、その状況はますます広がっている。
もしかするとインスタントラーメンもそんな運命にあるのかもしれない。もしそうなれば僕はむしろうれしい。
なぜならそうなった暁には、わざわざ日本まで帰らなくてもイタリアのこの場で日本製と同じおいしいラーメンが手に入る、ということなのだから。。。
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