10月28日、フランスとドイツがほぼ同時に全土のロックダウンを発表した。
フランスは10月30日から12月1日まで国民の移動を厳しく制限する。国民は食料などの生活必需品を購入したり病気治療などの場合に限り、証明書を持参したした上で外出が許される。それ以外は自宅待機しなければならない。ただし、在宅勤務が不可能なケースでは出勤が認められる。レストランやカフェほかの飲食店また生活必需品を扱わない全ての店は閉鎖。一方で学校
は通常通りに授業が行われる。
ドイツのロックダウンは11月2日から一ヶ月間実施。フランスよりはゆるやかな規制が課せられる。それでもレストランほかの飲食店、映画館や劇場またスポーツジムやプールなどが全て閉鎖される。国民は不要不急の外出や旅行を自粛し、ホテルの宿泊は仕事で出張する場合に限り許される。サッカーなどのプロスポーツは無観客でのみ開催。学校はフランス同様に閉鎖しない。従業員50人以下の企業には、昨年11月の売上高の75%を一律に支給する、というのがいかにもドイツらしい。
2国の措置は爆発的に増える新型コロナの感染を抑えるためであることは言うまでもないが、ここからほぼ一ヶ月の辛苦を経てクリスマスが控える12月に規制を解除したい、という思いが込められている。ほとんどがキリスト教国である欧州にとっては、クリスマスは経済的にも文化的また社会的にも、さらには心理的にも極めて重大なイベントだ。そこではなんとしてもロックダウンを避けたいのである。
2国の措置は同時に、3月のロックダウンよりもゆるやかだ。ましてや世界一厳しかった3月-4月のイタリアのロックダウンに比べるとさらに生ぬるい。各国がロックダウンを解除した後の、6月から9月頃にかけての欧州のコロナ状況を振り返ると、イタリアの厳格なロックダウンのみが感染拡大を抑止できていたことが分かる。
従ってイタリアと比べた場合の、フランスとドイツのいわば「準ロックダウン」がどれほどの効果をもたらすかは未知数である。それでも行動を起こさなければ独仏両国の感染爆発は制御不能になる、とメルケル首相とマクロン大統領は判断した。そのこと自体はむろん正しい見解であるように見える。
第1波で奈落に落ち、過酷なロックダウンによって危機を脱したイタリアも、独仏英またスペインなどの後を追いかけて再び感染拡大の危険にさらされている。イタリア政府は娯楽施設の閉鎖とレストランほかの飲食店の営業を午後6時までに制限するなどの対策を取っているが、そうした措置への抗議デモと同時にさらなる規制強化を求める声も強まっている。
どちらの主張にも理がある。働かなければ生活が成り立たないという真実と、規制をかけなければ感染拡大が止まない、という真実がぶつかりあっている。経済社会活動が完全にストップするロックダウンを避けながら感染も抑制するためには、つまり-少なくとも有効なワクチンと治療薬が開発されるまでの間は-ある程度の経済社会活動の停滞と相当数の感染および犠牲者を受け入れる道しかない、ということなのかもしれない。