2021年1月26日、イタリアのコンテ首相が辞任。マタレッラ大統領に辞表を提出して政局の行く末を大統領にゆだねた。
マタレッラ大統領は今後全ての政党と協議して、
①コンテ(前)首相に議会多数工作を促し再び組閣するように要請する。
②全政党に呼びかけて挙国一致のテクノクラート(実務者)政権を樹立する。
※首相は話し合いで決定。場合によってはマタレッラ大統領自身が兼務することもある。
③議会を解散して総選挙を行う。
という、3つの可能性を目指すことになる。
イタリア大統領は普段は実権のない儀礼的な存在だが、今回のような政治不安が起きた時には強い権限を持つ。
今後数日、状況次第でははるかに長く、イタリアの命運は大統領に託される。
イタリアでは上院と下院が全く同等の権限を持つために政権が安定しない。その上に今回のような危機にあたっては、大統領が絶対の力を与えられる。
いわば三すくみの権力構造がイタリアの政治の特徴である。この奇妙な形は、権力を一箇所に集中することでファシズムの台頭を許した過去への反省から生まれた。
権力を分散してファシズムや独裁を回避しようというわけである。だが皮肉なことにその体制は頻繁に政治不安をもたらす。
政治不安の実際は、力が拮抗する上下両院によっていて、大統領はむしろ混乱の調停役になるのだが、制度上の第3勢力である大統領の大きな権限も一筋縄ではいかない。
今回の政治危機は、壊し屋の異名を持つマテオ・レンツィ元首相の我欲一つによってもたらされた。EUからの巨大なコロナ救済金に目がくらんだ元首相が、連立政権を「壊して」しまったのだ。
政治に駆け引きは付きものである。一国の権力の周囲では、駆け引きは権力を握る者の横暴を抑える働きをすることもある。
だが現在イタリアは、コロナパンデミックの脅威にさらされて呻吟している最中だ。そこに大きな政治混乱を持ち込んだレンツィ元首相の罪は重い。