【テレビ屋】なかそね則のイタリア通信

方程式【もしかして(日本+イタリ ア)÷2=理想郷?】の解読法を探しています。

2022年03月

欧州を怒らせたロシア

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ロシアがウクライナに侵攻して1月以上がたった。戦争は世界中で常に起きている。だが情報開示が進んだ欧州で実戦が出現するのは極めて異例だ。
 欧州は紛争や対立を軍事力で解決するのが当たり前だった、長い血みどろの歴史を経て、話し合いと外交でそれを解決しようとする開かれた民主主義の道を確立した。片やロシアは、いまだそこに至らない未開国であることが明らかになった。情報を隠蔽(いんぺい)し、ゆがめ、意図的に虚偽の消息を拡散するばかりでなく、主権国家に土足で踏み込む蛮行に及んだ。
 欧州各国は、ウクライナ危機が自国にとって対岸の火事ではないことを実感している。ウクライナが陸続きで地理的に近く、かつ欧州の過去の凄惨(せいさん)な殺し合いや大戦の記憶を誰もが共有しているからだ。そして何よりもプーチン大統領が、民主主義の精神とはかけ離れた独善と悪意と暴力志向の強い、異様な指導者であることが再確認されたからだ。
 一貫して西洋の開明と知性の根幹を形成する国の一つであり続けているイタリアは、ロシアがウクライナに侵攻するとすぐに、約400億円をウクライナとNATO(北大西洋条約機構)に献金し、5千人弱の兵士をウクライナ周辺国へ送る決定も下した。加えてウクライナ危機を国家非常事態宣言下に置くことも決めた。それによって政府はコロナ禍中と同様に、緊急の規制や法律を国会の承認を得ることなく施行することが可能になる。
 NATOとEU(欧州連合)の加盟国の全ては、国力に応じてそれぞれがイタリアと同じ役割分担を引き受けている。欧州は自由と民主主義の名において、静かにだが断固とした意志で、プーチン・ロシアに対抗し臨戦態勢に入っている、と形容しても過言ではない。




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雨を待つ間に


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北イタリアは厳しい旱ばつに見舞われている。昨年末からほぼ4ヶ月に渡って雨も雪もまったく降らない。

北イタリアを貫く大河ポーが、枯渇寸前まで水位が下がり大きな問題になっている。

これが夏の出来事なら強い危機感で息苦しさを覚えていたに違いない。それほど異様な雰囲気がある。

昨年夏、イタリアは熱波に襲われた。

南のシチリア島では、欧州で過去最高気温となる48,8℃が記録された。

雨も少なく、暑さとともに乾燥が続いて山火事が相次いだ

冬の間の水枯れが異様に感じられるのは、あるいは昨夏のおどろきの暑さと渇水と山火事の記憶が、未だに強く残っているせいかもしれない。

なにしろポー川が冬に枯渇する様を、少なくとも僕は見たり聞いたりした記憶がない。

僕の季節感覚は、近年は菜園の移り変わりとともに多感になったようだ。雨や雪や日照りや寒暖をしきりに気にする。

今の干天も大いに気になる。

いや、正確に言えば、春が来てそろそろ菜園の準備を始めようと思い立って以来、空を見上げ、雲の動きを追いかけ、しきりに天気予報を気にするようになった。

3月に入ってから少しづつ堆肥を埋め込み、小さな耕運機を動かし、マルチをはずしたり移動したりして準備を進めた。

ここ1週間ほどは動きを加速させた。

それというのも、3月30日の水曜日を皮切りに大雨が降る、との予報が出たからだ。

その前に土つくりを済ませて種をまき、また雨の後の植え付けや播種にも備える作業をひと息に進めた。

土つくりはほぼ完了した。サラダを始めとするいくつかの野菜の種もまいた。

今日は、これからCOSTE(フダンソウ)を直播する。

いつもはプランターに苗を作るが、古い種を整理する意味と直まきトライを兼ねての初の試みである。

その作業を済ませたら、静かに雨を待とうと思う。

イタリアの天気予報は最近はかなり正確だ。

おそらく恵みの雨がやって来るだろう。

ウクライナでは人々が苦しんでいる。

それを思うと心痛は絶えないが、こちら側の時間は不思議に平穏に進んでいる。



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バイデンの勇み足の是非

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ロシアがウクライナへの激しい攻撃を続ける一方で、停戦へ向けての交渉や各国の仲介協議また外交も活発に行われている。

印象としては、プーチン大統領がコワモテの独裁者を実演しつつ、ウクライナ潰しがうまくいかないことへの焦りから、停戦も模索している雰囲気である。

だがその間もプーチン大統領は、ウクライナで無垢な人々を殺戮し続けている、というのが2022年3月28日現在のウクライナ戦争の実相であるように思う。

そんな中でNATOの会議に出席したバイデン大統領が、彼の得意な絶好調失言をやらかして、米政権幹部や欧州首脳らを困惑させた。

バイデン大統領はアメリカに帰る直前、ポーランドのワルシャワで「プーチンはロシア大統領の地位にとどまるべきではない」という趣旨の発言をした。

バイデン大統領はあらかじめ用意されていた原稿を読み終えたあとに、彼自身の思いつきでそう発言して演説を締めくくった。

ありていに言えばバイデン大統領は、「プーチンを権力の座から引きずりおろす」と宣言するにも等しい発言をしたのだ。当然のようにその言葉は激震を招いた。

ブリンケン国務長官をはじめとするバイデン政権の幹部やスタッフは、大統領はロシアの政権の転覆を意図して発言したのではない、と火消しに躍起になった。

またマクロン大統領をはじめとする欧州首脳も発言におどろいて、バイデン発言を批判。

マクロン大統領は「停戦合意を追求するなら、言葉でもアクションでもエスカレートしないようにするべき」とやんわりと米大統領に釘を刺した。

マクロン大統領は戦争勃発以降、3月22日までにプーチン大統領と合計8回、またウクライナのゼレンスキー大統領とも20回近い会談を行っている。停戦に向けて懸命に動いているのだ。

バイデン大統領の失言癖は今に始まったことではない。彼は副大統領時代にも多くの失態を演じ、大統領になってからもその性癖は変わっていない。

バイデン大統領はロシアがウクライナを蹂躙してこの方、プーチン大統領を「凶漢」「人殺しの独裁者」「戦争犯罪者」などと公に罵倒してきた。それらの表現も失言と見なす人々が少なくない。

今回の発言も彼の失言と捉えられている。そして、戦争の激化を避け停戦を模索する西側陣営のリーダーの発言としては、それは失言以外のなにものでもない。

なぜならその言葉が外交慣例にそむき、ロシアを刺激し、なによりもプーチン大統領に絶好のプロパガンダの機会を与えてしまう可能性があるからだ。

プーチン大統領はその言葉尻をとらえて、大義の全くないウクライナへの侵略が、彼の政権を転覆させようと企む西側への対抗手段だ、などとも強弁しかねない。

バイデン大統領の勇み足は従って糾弾されるべきものだ。

だが同時に、人間としてのバイデン大統領の行為は賞賛されるべきものだとも僕は思う。

「プーチンを権力の座から引きずり下ろせ」という思いは、プーチン大統領自身とその取り巻きまた世界中のトランプ主義者及び排外差別主義者以外の誰もが、今このときに胸に抱いている願いではないか。

感情移入が激しいとされるバイデン大統領は、ウクライナを逃れてポーランドほかの国々に避難している多くの子供とその母親たち、また破壊されたウクライナの惨状を間近に見、感じて、人としての憤りに我を忘れたところがあるのだろう。

彼の憤懣もまた世界中のほとんどの人々が共有する感情だ。

バイデン大統領は以前、ロシアが蛮行に及ぶ予兆を知った時に、小規模の侵攻なら制裁しない、といつものボケをかました。

さらにロシアがウクライナに襲いかかると、メリカは軍事介入をしない、言わぬが花の真実を強調しまくるミスなども犯した。

彼はそこでは、「いかなる侵攻も侵攻であり決して許さない」と表明し、「アメリカは軍事介入をする覚悟がある」と示唆して、プーチン大統領をけん制するべきだったのだ。

それらの失言は、彼が老害大統領と陰口を叩かれても仕方がないミスだ。

だがプーチン大統領と彼の周りの権力を、歯に衣を着せずに糾弾する言葉は、人々の思いをストレートに代弁する分、失言とばかりは言えないのではないか。

少なくともプーチン大統領の悪を指摘することで、反プーチン世論を喚起し彼を追い詰めて停戦へと向かわせる効果がないとは言えない。

その一方で、追い詰められたプーチン大統領がさらに凶暴になる、という逆効果を招く可能性ももちろん否定はできないのだが。




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ロシア包囲網でのイタリアの立ち位置

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新聞、テレビ、ネットをはじめとするとするありとあらゆるメディアが、昼も夜もそして真夜中でさえも、ウクライナにおけるプーチン・ロシアの蛮行をこれでもかとばかりに伝え続けている。

戦争は世界中で一日の休みもなく行われている。だが情報開示が当たり前に展開されている欧州で、実戦が進行するのはきわめて異例のことだ。

欧州は紛争や対立を軍事力で解決するのが当たり前だった野蛮且つ長い血みどろの歴史を経て、それを話し合いと外交で解決しようとする、開かれ教化された進歩的民主主義の道を確立した.

片やロシアは、未だそこに至らない未開国であることが明らかになった

情報を隠し、歪め、虚偽を垂れ流すプーチン・ロシアは欧州の一部ではない。それはアジアである

ここで言うアジアとは、民主主義を理解しない中国的、アラブ的、日本右翼的勢力の全てだ。つまり未開で野蛮で凶悪なアジア的精神。

敢えて日本のみに目を向ければ、残虐でどう猛で卑怯な戦闘集団だった旧日本軍と軍国主義日本の過去を直視しようとせずに、むしろそれを隠蔽し否定し都合のよい情報のみを言い立てて、歴史を修正しようとするネトウヨ系排外差別主義勢力のことだ。

自由と民主主義を死守する西側世界は、アジアに属するロシアとは全く逆の社会状況にある。そこでは横暴と欺瞞と悪意に支配されたプーチン・ロシアの情報操作の実態が、あらゆる角度から暴かれている。

欧州の全ての国は、ウクライナ危機が自国にとって対岸の火事ではないことを実感している。ウクライナが陸続きで地理的に近く、且つ欧州の過去の血みどろの大戦や闘争の記憶が人々に共有されているからだ。

そして何よりもロシアのプーチン大統領が、民主主義の精神とはかけ離れた独善と悪意と暴力にまみれた異様な指導者であることが再確認されたからだ。

ロシア包囲網に断固とした意志で参加しているイタリアは、歴史的にロシアと親和的な関係を築いてきた。イタリアが長く欧州最大の共産党を有してきたからだ。同じ動機でイタリアは中国とも親しい

それはだが近代史における政治ゲームに過ぎない。独立心旺盛で自由な都市国家が統一国家イタリア共和国の真髄である。イタリアの核心は政治ゲームの主体ではなく、それらの都市国家がもたらす多様性なのである。

国家構成の基底に多様性が居座っているイタリアは、対外的にも多様で実践的な政治体制を維持している。敢えてひとことで分かり易くいえば、イタリアは世界中のあらゆる国と親和的なのである。少なくともその意志を秘めて世界に対しているのがイタリア共和国だ。

それは八方美人とか日和見主義を意味するのではない。自立志向の強い都市国家群を統一国家内に含む場合の必然の帰結である。言葉を変えれば中央政府は、国内にある多種多様な意見や意思を絶えず尊重し耳を傾け続けなければならない。

そのスタンスは対外的にも増幅されてイタリア共和国の立ち位置を規定していく。つまりそこでも多様性を重視する姿勢になる。イタリアは歴史的にもまた思想的にも、誰とでも共存しなければならない性根を持っている。あるいは誰とでも親和的でなければならない性根に縛られている。

イタリアとロシアは、地理的には遠い間柄ながらも、歴史的に良好な関係を保ち続けてきた。専門家の中にはその状況を指して「イタリアは欧州におけるロシアのもっとも親しい国である」と断定する者さえいる。

イタリアはプーチン大統領自身とも友好的な関係にある。その善し悪しは別にして、現代イタリア最大の政治的存在であるベルルスコーニ元首相は、プーチン大統領とは親友同士とさえ呼べる仲である。

86歳の元首相は2022年3月19日、性懲りもなく53歳年下の女性と3回目の結婚式を挙げた。彼の友人のプーチン大統領は、ウクライナへの暴力行使で忙しくしていなければ、あるいは結婚式に出席していたかもしれない。

また極右政党「同盟」と「イタリアの同胞」のサルヴィーニ、メローニの両党首は、相変わらずプーチン大統領を賞賛して止まない。イタリア中がプーチン大統領の残虐な戦争に怒りをあらわにしているため、彼らも戦争反対と口では言っている。だが本心は相変わらずプーチン万歳というところだろう。

ポピュリストの彼らは時勢が右といえばそれに追随し、左といえばそれに媚びる。節操もなく信義もなく核もない。あるのは粗暴で抑圧的な感情と怒りだ

そして極右の2政党とベルルスコーニ党が手を組んで選挙に臨めば、イタリアは世論調査の数字上は、明日にでも彼らに統治されることがほぼ確実な情勢だ。

だがそれらプーチン愛好家の人々の願いも空しく、イタリア政府は今のところはNATOまたEUとぴたりと歩調を合わせてロシアに歯向かっている。そしてロシアは、イタリアを敵性国家と規定しエネルギー供給を止める、などと脅してさえいる。

イタリアはエネルギー源であるガスの90%を国外から輸入している。そして総輸入の45%がロシア産である。イタリアはEU加盟国の中では、ガスの5割以上をロシアから購入しているドイツに次いでロシアへの依存度が高い。

2014年~15年のクリミア危機では、イタリアの当時のレンツィ政権は、ロシアと関係が深い国内のエネルギー業界の抵抗に遭って、ロシアに対して強硬措置が取れなかった。ドイツも同じ状況だった。

だが両国は、今回のロシアの蛮行に際しては揃って立ち上がり、他の国々と歩調をあわせてロシアに対峙している。

イタリアが速やかに行動できたのは、ドラギ政権の力によるところが大きい。

2021年に政権を握ったマリオ・ドラギ首相は、ほぼ全ての政党が一致団結して政権を支持している事実と、首相自身の求心力の強さを背景にEUにぴたりと寄り添い、対ロシアへの強硬路線を取っている。

イタリアはロシアがウクライナに侵攻して間もなく、11千万ユーロをウクライナ政府に提供すると表明した。またNATOには、今後2年間であらたに17400万ユーロの貢献をすることも決めた。同時にウクライナ難民には難民申請を出さなくてもイタリア滞在が可能になる措置を取っている。

さらにイタリアは、ひとまず合計約5000人の兵士をウクライナ周辺国へ送る決定も下した。ハンガリーとルーマニアにはそのうちの3500人が派遣される。ルーマニアでは同国の空軍をイタリア空軍が指導しサポートする。

加えてイタリアは、ウクライナ危機を国家非常事態宣言下に置くことも決めた。それによって政府はコロナ禍中と同様に、緊急の規制や法律を国会の承認を得ることなく施行することが可能になる。

イタリアを含む欧州は、静かにだが断固とした意志で、プーチン独裁政権に対抗して臨戦態勢に入っていると形容しても過言ではない。





サラミを手土産に早く日本に帰りたい

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まだ希望的観測の類ではあるものの、コロナが終息しそうだからと、日本帰国に備えてお土産を考え始めた。

するとそこにウクライナ危機が勃発して、気分が元の重さに逆戻りしてしまった。

コロナも戦争もなく、欧州もむろん日本も平和だったころ、僕は新聞に次のような趣旨のコラムを書いた。


               イタリアみやげ

かさばらない、腐らない、気どらない。それでいてイタリア的、とういうのが僕の日本へのおみやげ選択の条件である。例えばとてもイタリア的なものであるワインはかさばる。またうまいチーズや生ハムは腐りやすい。デザイン系の装飾品やファッションなどは気どる。試行錯誤を経てたどりついたのがサラミである。

サラミはかさばらず、腐らず、気どらず、しかも大いにイタリア的である。イタリアの食の本筋である肉のうま味が凝縮されていて、そのうえ優れた保存食という重大な一面もある。ところが、サラミは都会の人々には好まれるものの、田舎ではあまり人気がない。生ハム等に比べると香りや味に特徴があって、慣れない者には食べづらい印象もある。そのせいかどうか、たとえば東京あたりの友人知己には喜ばれるが、地方では人気がない。

僕の故郷の南の島々では、豚肉がよく食べられるのに豚肉が素材のサラミはもっと人気がない。地方の人は日本でもイタリアでも新しい食べ物を受けつけない傾向がある。いわゆる田舎者の保守体質というものであろう。

生まれも根っこも大いなる田舎者である僕は、白状すると、イタリアに来て丸2年間ほぼ毎日食卓に出るサラミを口にできなかった。2年後に思い切って食べてみた。

以来、今ではサラミや生ハムのない食事は考えもつかない。

僕は自分が体験した喜びを親しい人々に味わってもらおうと、いつもサラミを島に持ち帰っている。だが、歓迎されないおみやげは贈る自分もあまり喜ばず、正直少し疲れを覚えないでもない。


日本はその後、、口蹄疫、ASF(アフリカ豚熱)、高病原性鳥インフルエンザなどの家畜伝染病の侵入を防ぐため、という理由で海外からの肉や肉製品の個人持込みを禁止した。

僕のイタリア土産の主力打者であるサラミももちろん持ち込み禁止になった。

イタリアは衛生管理の厳しい先進国である。言うまでもなくサラミや生ハムほかの製品は、峻烈な生産工程を経て店頭に出る。

しかもイタリアの加工肉の種類の豊富と品質は、日本が逆立ちしてもかなわない。またその安全性はまぎれもなく世界のトップクラスである。

肉製品だけに関して言えば、あるいは日本のそれよりも安全であり安心できるとさえ感じる。

なので僕は、サラミの日本への持ち込み禁止措置なんて一時的な対策に過ぎない。すぐに解除になると考えた。

ところがどっこい2019年、禁止措置は強化されて、海外からの畜産物の持込みには3年以下の懲役、または最高100万円の罰金が科されることになった。

しかもそれだけでは終わらなかった。

翌2020年7月には家畜伝染病予防法が改正され、懲役は同じだが罰金は最高300万円にまで引き上げられたのである。

正直、目が点になった。鎖国メンタリティーの日本の面目躍如、と思った。

コロナ禍中での外国人締め出し措置に似た、日本独特の異様な政策だと今も思う。

趣旨は分かるのである。島国の利点を活かした厳格なやり方で、合理的に行えば感心できる。

だが、日本人と外国人の区別をしないウイルスをつかまえて、日本人の入国はOKだが外国人はNGというのでは、排外差別主義的な政策だと批判されても仕方がない。

肉製品の全面持込み禁止措置は、むろんコロナ政策と同じではない。が、コロナ対策に似たいわばヒステリックな思い込みが見え見えでうっとうしい。

あえてイタリアと日本の間柄だけに限って言う。

イタリアの加工肉の最高傑作である生ハムやそれに匹敵するサラミの日本への持込み禁止は、例えばイタリア政府が「イタリアでは寿司や刺身の消費を厳禁する」と言い張ることがあるとしたなら、それと同じ程度に愚劣きわまりない施策である。




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プーチン命、と叫ぶ極右の行き当たりばったり


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イタリア極右政党「同盟」のサルビーニ党首が、ウクライナ国境に近いポーランドの町 プシェムィシル(Przemyśl)で、赤っ恥をかく失態を演じた。

彼はウクライナ難民を支援し連帯感を実地に表明したいとして、ウクライナからの難民が多く流入する同地を訪れた。

ところがプシェムィシルのヴォイシェク・バクン(Wojciech Bakun)市長は、サルビーニ党首がプーチン大統領の信奉者であることを問題にして、共同記者会見の場で面と向かって同党首を罵倒した。

バクン市長は、プーチン大統領の似顔絵と彼を称える文句がプリントされたTシャツを持ち出して、サルビーニ党首の目の前に掲げた。そして言った。

「ここにはあなたが友達と呼ぶプーチンのせいで故郷を追われた人々が、1日に5万人も国境を越えてやってきます。あなたがこのTシャツをまた着る勇気があるなら、それを着たままで難民センターまで案内して差し上げます。恥知らずめ!」

サルビーニ党首は、過去に何度もそのTシャツと同じものを着てプーチン大統領への友情と団結を呼びかけてきた。バクン市長はそのことをよく知っていて公衆の面前で彼に雑言を浴びせたのだ。

サルビーニ党首はあっけに取られて、それからか細い声で「私は難民を支援し母親や子供たちを助けたいと思っている」と返し、そそくさとその場を離れた。


赤の広場のサルビーニ

彼の背中には人々が、恥知らず、帰れ、などと叫んで追い打ちをかけた。

サルビーニ党首は反移民や反EUを標榜し、排外差別主義色の強い主張や政策を推し進めることで知られている。彼はフランス極右のマリーヌ・ルペン氏とも親しい。

サルビーニ氏はまたトランプ主義者でもある。

彼は米大統領選挙キャンペーン中の2016年、アメリカを訪れてトランプ候補との面会を求めた。だがトランプ候補は、「Salvini who?(サルビーニなんて知らねえよ)」と側近にもらしただけで取り合わなかった。

そのエピソードは当時、「サルビーニの“赤っ恥”事件」としてイタリアのメディアを沸かせた。

サルビーニ党首は今回、ポーランドとウクライナの国境の小さな町で、再び赤っ恥をかく事件を起こしてしまったわけである。

しかし、サルビーニ氏の名誉のために次のことも付け加えておきたい。

欧州の右派、特に極右勢力は、ロシアのウクライナ侵攻によって窮地に立たされているケースが少なくない。彼らはサルビーニ氏と同様にプーチン大統領を支持してきた。

欧州はウクライナを侵略し民主主義の王道を土足で踏みにじったプーチン大統領の蛮行に驚愕し、憤り、速やかに大同団結して立ち上がった。

通常はそれぞれの利害に絡めとられて、足並みが乱れがちな欧州各国がすばやく結束したのは、恐らくプーチン大統領にとっても想定外の出来事だったに違いない。

欧州の怒りはプーチン大統領を支持してきた極右勢力にも向けられている。

例えば1ヶ月後に投票が行われるフランス大統領選で、極右のルペン、ゼムール両氏への支持が急落しているのも、欧州の怒りを招いたプーチン効果のせいだと見られている。

ロシアの蛮行への欧州の怒りはとてつもなく大きいのだ。

サルビーニ党首が恥をかかされたのは、自業自得という面もむろんあるが、歴史の転換点に立つ欧州の暴風が、蒙昧な男を思いきり吹き飛ばした感があるのも否めない。






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独裁者の首~プーチンが堕ちる夢を見た

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NATOもEUも日本も、また中国とその追従者以外の世界の全ての猫も杓子も、ウクライナを全面的にモラル・サポートしている。

のみならず、武器や物資や金銭などの物理的なサポートもしている。

加えてロシアとベラルーシ以外の欧州の全ての国が、ウクライナ難民を大手を広げて受け入れている。受け入れる態勢でいる。

返す刀で、それらの全ての国と国民がロシアを、いやモンスターのプーチン大統領をこぞって指弾し唾を吐きかけている。

だが、全てのウクライナ支援国は、同時にウクライナを見殺しにしている。

軍事介入をしないからだ。

ウクライナに軍事介入をしないのは正しい。なぜなら軍事介入は高い確率で第3次世界大戦を招く恐れがある。

同時に、軍事介入をしないのは悪だ。ウクライナとウクライナの人々を見捨て、子供たちを爆撃の炎火の中に置き去りにするからだ。

そしてなによりも、無慈悲なラスボス・プーチン大統領を、したい放題にのさばらせるばかりで、いつまでも天誅を下せないからだ。

プーチン大統領への究極の天誅は、軍事力によってのみ完遂される。

経済制裁も最後には彼を破滅させるだろう。

だがそこに至るまでに、余りにも多くのウクライナ人民の犠牲と屈辱と苦悩が生み出されることになる。

だから彼はその前に排除されるべきだ。

NATOの超ド級の知略と権謀と軍略のネットワークは、いま必死にその道筋を探求しているに違いない。

いうまでもなくそれは、技術的にも物理的にも不可能に近いミッションだ。

だが成否は一旦さておいて、不可能を可能にしようとするのも、また彼らの任務なのである。






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独裁者プーチンが処刑される日  

ミモザ

3月の10日前後には何かと気にかかることが起きる。

3月8日は女性の日。イタリアではミモザ祭りと呼ばれている。

そのことについてはほぼ毎年のようにここでも書いているが、ちょうど10年前にも次のように書いた。

女性の日は元々、女性解放運動・フェミニズムとの関連が強い祭り。20世紀初頭のニューヨークで、女性労働者たちが参政権を求めてデモを行なったことが原点である。

それが「女性の政治参加と平等を求める」記念日となり、1917年にはロシアの2月革命を喚起する原因の一つにさえなった。

1975年には、国連が3月8日を「国際婦人デー(日)」と定めた。

しかし、この「国際婦人デー(日)」が、目に見える形で今でもしっかり祝福されているのは、僕が知る限りどうもロシアとイタリアだけのようである。

ロシアでは革命後、3月8日を女性解放の日と位置づけて祝ったらしい。だが今ではフェミニズム色は薄れて女性を讃え、愛し、女性に感謝する日として贈り物をしたりして寿ほぐ日になった。

ロシアの状況はイタリアにも通じるものがある。

イタリアでは3月8日には、ミモザの花を女性が女性に送るとされる。それには女性たちが団結してフェミニズムを謳歌する、という意味合いがある。

が、実際にはそう厳密なものではなく、ロシア同様にその日は女性を讃え、愛し、女性に感謝をする形がほとんどのようである。

男が女にミモザの花を贈るという習わしは実は、元々イタリアにあったものである。恐らくそのせいだと思うが、女性の日をフェミニズムに関連付けて考える人は、この国にはあまり多くないようだ。


ことしの3月8日の女性の日もロシアが大きく関わった。プーチン大統領がウクライナの女性たちを虐殺している暗黒の日だ。

また2020年の3月10日には、コロナに蹂躙されて地獄に落ちたイタリアが、ついに前代未聞の全土ロックダウンを敢行した。

その翌日3月11日は、いわずと知れた東北大震災の大きな記念日だ。

そして日にちが3月10日周辺からは少しずれるものの、ことしの2月24日も「ロシアのウクライナ侵略の日」として歴史に残るだろう。

その黒い記録の日は-いつになるかは神のみぞ知るだが-モンスター独裁者「ウラジミール・プーチンの処刑日」とペアになって語り継がれることになるのではないか。

語り継がれる日になってほしい。

できればその日が来年か再来年あたりの3月10日前後になれば、記憶に残りやすい。プーチンに死を。。。

と僕は重い心でひそかに願いつつ2022年の3月8日を過ごした。





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プーチンの冷ややかな狂気

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2月26日、ぼくはこのブログに

“アメリカが先導する民主主義陣営は、ウクライナがロシアに自在に蹂躙されるままに、哀れなウクライナを見捨てるだろう。

ウクライナを見捨てることでNATO加盟国を守り、自由主義世界全体の経済権益も守るのである。

そうやって海千山千の逆賊プーチンはますます強くなり、中国のおきて破りの習近平は、香港を破壊した勢いで台湾を踏みにじり、尖閣を掻っさらって沖縄を強奪し、さらに九州へと魔手を伸ばしていく可能性がないとは誰にも言えない”

書いた

それから10日後の今日、残念ながらぼくはその思いをあらためて強くした、と言わなければならない。

2月24日のウクライナへの侵攻開始以降、ロシア軍は大方の予想に反して進軍にとまどい、停滞し、混乱さえしていると見られてきた。

それはプーチン大統領が、多くのことを見誤り、計算違いを犯し、判断をし損ねたからではないか。

具体的には自軍の力量を過大評価したり、逆にウクライナ軍の力を過小評価した。ウクライナ国民の抵抗も軽視した可能性がある、ということなど。

そして僕は、プーチン大統領が犯した少なくない数の失策の中でも最大のミスは、アメリカが主導する西側世界が、反ロシアで一気に結束することはない、と予測したことではないかと考えた。

自由と民主主義また多様性を重視する西側世界は、同じ価値観を共有することで各国が友好親和的な関係を保っている。だが、まさにその共通の価値観ゆえに時として足並みが乱れる。

各国の足並みの乱れも自由主義社会のいわば美点なのだ。なぜなら足並みが乱れるのは、それが全体主義体制下での出来事ではないことの証しだから。

西側は2014年、例によって各国の足並みが乱れたために、ロシアによるクリミア半島の併合という蛮行を阻止できなかった。

当時はドイツやイタリアなどがロシアへの強烈な経済制裁に難色を示した。両国は、そして特にドイツは、エネルギーを大きくロシアに依存しているからだ。

自由主義陣営はしばしばそうした混乱に陥る。繰り返すが、そこがまさに自由な民主主義社会だからである。

プーチン大統領は、足並みの乱れからくる西側世界の弱さを見抜いていて、今回の悪行にも自信を持って臨んだ。

ところが彼の思惑とは裏腹に、自由主儀陣営はただちに結束して、最大の難関とされたSWIFTからのロシアの締め出しなどを即決した。

従来はクリミア併合危機で見られたように、エネルギーをロシアに大きく依存しているドイツが徹底して反対するため、発動できないのが習いだった。

だが今回はドイツは、自国の痛みを覚悟でロシアへの制裁措置を受け入れた。ドイツに次いで多くのエネルギーをロシアに依存しているイタリアも、迷うことなく賛成した。

そうやって西側は一致団結した。プーチン大統領はそのことにおどろき、進軍はしたものの挫折したロシア軍の弱さに苛立ち、西側をけん制しようとして-そのこと自体があらたな失策であることに気づかないまま-「核兵器を使用する」とまで示唆して、世界のさらなる反感を買った。

彼は錯乱しているという憶測さえ生まれた。それは誇張が過ぎるとしても、少なくとも彼は冷静さを失い、ノーと言える側近が周りにいない独裁者の常で、ますます暴走する可能性が高まっていると見られた。

ところが3月3日、プーチン大統領は「自ら申し出て」フランスのマクロン大統領と電話会談をした。

彼はそこで「何があってもウクライナでの軍事作戦を完遂する」と主張。軍事作戦は計画通り進んでおり、ウクライナが非軍事化などの条件を受け入れなければ作戦を続けると明言した。

それに対してマクロン大統領は、あなたはうそをついている。ロシアはこの作戦によって世界から孤立し、制裁によって経済破綻に陥る。高いコストを払うことになる、と「型通りの」反論をした。

「型通りの」反論とは、第3次世界大戦を恐れてロシアとの軍事衝突を避けようとする自由主義陣営の指導者は誰もが、今この時はマクロン大統領と同じ言葉で反論するしかないからだ。

マクロン大統領とプーチン大統領は親しい仲だ。彼らの電話会談は1時間半にも及び、お互いに言いたいことを言い合ったという印象がある。

ちなみにプーチン大統領は、ここイタリアのベルルスコーニ元首相、トランプ前大統領、安倍元首相など、少々いわくつきの男たちと親しいことで知られている。

一方で彼が、民主主義の原理原則と、開明主義また政治的正義を死守しようとする自由主義陣営の指導者の中では、比較的「まとも」なマクロン大統領と仲が良いのは意外な事実だ。

2人の指導者の論争が端的に示しているのは-マクロン大統領ではなくプーチン大統領自身が電話会談を申し入れた時点で明らかになっていたように-プーチン大統領は錯乱などしていなくて、マクロン大統領すなわち自由主義陣営は、プーチン大統領のウクライナ侵略を止められない、という厳しい現実だ。

つまりロシアは、強力な経済制裁によって将来は弱体化する可能性が高いものの、プーチン大統領の思惑通り一旦はウクライナ全土を支配下に置く。最低でも国土を分割して一部を自らの属国にしてしまう。

言葉を替えれば、西側はやはりウクライナを見捨てるのである。

今この時の状況から判断すれば、短期的にはそれがウクライナ危機の行く末だと考えられる。

だが長期的には-民主主義体制側が大同団結してロシアへの強力な経済制裁を続けるならば、という条件付きだが-プーチン大統領が敗北する可能性のほうがはるかに高いと思う。

SWIFT事案ほかの自由主義陣営のロシアへの経済制裁は、それほどに強力なものである。

だがNATO構成国とその味方である日本を含む世界の多くの国々は、一時的にはロシアの横暴を渋々認めざるを得なくなるだろう。それを見て、中国が台湾への侵攻を開始するかもしれない。日本を巻き込む危険と共に。

その可能性を完全否定する人々もいる。ウクライナを侵略したロシアの論理と、台湾を狙う中国の行動規範は違う、というもっともらしい理由を持ち出して。

だがまともな理論や国際法など無視して、やりたい放題をやるのがロシアであり中国だ。

クリミアやウクライナ、香港やチベットほかの歴史、また現実を見ればそれは明らかだ。それらのならず者国家には、残念ながら議論のための「まともな議論」など全く役に立たないのである。

可能性は低いが別のシナリオも考えられる。

自由主義陣営の支援を受けてウクライナが激しい抵抗を続け戦闘が長引いた場合、プーチン大統領には国内から強力な逆風が吹きつける可能性がある。

西側の巨大な制裁がロシア経済を破壊して、疲弊した国民の怒りがプーチン大統領に向けられるのである。

そうなった暁には、プーチン大統領は単に失脚するのではなくルーマニアのチャウチェスク、リビアのカダフィ、イラクのサダム・フセインほかの独裁者と同じ悲惨な最期を迎えることになるだろう。

たとえそうはならなくても、プーチン大統領には勝利は舞い込まない。ウクライナ支配と引き換えに、この先彼は世界の怒りと侮蔑にさらされて生きていくことになる。

だが、最後になったが、考えることさえ憚られるもっと恐ろしい、もっと不快なシナリオももちろんある。

今後の展開によっては、プーチン大統領が行き詰まって核攻撃のボタンを押す事態だ。

あり得ないとは断言できない。

彼はあり得ないと考えられたウクライナへの侵攻を実践した、冷徹な意志と狂気を秘めた怪異なのである。





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