イギリス公共放送のBBCが、ハマスをテロリストと呼ばないことを批判する勢力がある。同国のスナク首相を筆頭にする保守主義者が中心だ。
ハマスをテロリストと見るか否かは、政治的な立ち位置の問題に過ぎない。
BBCはそのことを正確に知っていて、「テロリストとは人々が倫理的に認めたくない集団を呼ぶ言葉」であり「政治的な色合いを伴う感情的な表現」と規定している。
僕も全く同じ考えでいる。
だが、もう少し自分の考えを付け加えればテロリストとは、政治的な目的を達成するために暴力を振るう自らと自らの支持者以外の者や組織のことだ。
従って今このときの中東危機に照らして言えば、イスラエルから見るハマスはテロリストである。逆にイスラエルはハマスに言わせれば大テロリストである。
また、イスラエルを支持する欧米から見たハマスもテロリストの組織である。
片やハマスを支持するアラブ各国またイスラム教国のイランやトルコに言わせれば、イスラエルだけがテロリストである。
もっと言えば、無差別攻撃でパレスナ人民を殺害するテロリストであるスラエルに加担する欧米各国は、パレスチナ側の窮状を見て見ぬ振りをする偽善者でありテロ支援者だ
BBCの主張に戻る。
BBCは前述の論点に加えて、「BBCは誰が誰に対して何をしているかを視聴者が自ら判断できるように客観的に報道する。また何が起きたのかを説明することで、視聴者に全貌を伝える」とも主張している。
僕はその姿勢を全面的に支持する。
BBCの立場に異を唱える者は、必ず自らの政治信条や思い込みまた感情を盾にし、拠り所にしていると知るべきである。
BBCとは違ってハマスをテロリストと呼ぶ者は、イスラエルをテロリストと呼ぶ者と全く同様に、自らの政治信条と倫理的好悪の感情に基づいてそう主張している。
僕は客観的に見て、両者ともにテロリストであり同時にテロリストではないと考えている。ただし両者ともに、テロリストではないと規定される場合でも、双方は「テロ行為を働いている」と判断する。
そしてなぜ彼らがテロ行為を行うのかの「動機」を考えた場合、イスラエル側により大きな責任があると考える。
なぜならイスラエルは、「パレスチナは神がユダヤ人に与えた土地」と主張するシオニストが、他人の土地を侵略しそこに住まう人々を追い出して作られた国家だからだ。
パレスチナが神からユダヤ人に贈られた土地であるなら、そこは神がパレスチナ人に与えた土地でもあるのが理の当然だ。
神話の世界に過ぎない旧約聖書の世迷言を根拠に、他人の土地を強奪した上に住人を殺戮し抑圧し排除しているのがイスラエルでありシオニストだ。
パレスチナ側は1948年以来イスラエルの横暴に抵抗し続けた。その過程で生まれたパレスチナ解放運動がPLOでありハマスでありヒズボラ等々の組織だ。
彼らをテロリストと呼ぶなら、イスラエルもテロリストだ。しかも後者はより巨大且つ悪辣な国家テロ組織だ。
BBCがハマスをテロリストと呼ばない頑なな姿勢は、報道者として見上げたものである。
ただ、もしもBBCが、ハマスはテロリストではないのだから「テロ行為も働いていない」と考えているならば、それはイスラエルを一方的に擁護する英スナク首相やその他のほとんどの欧米首脳らと同じく、偏頗で偽善的な態度だとも付け加えておきたい。