【テレビ屋】なかそね則のイタリア通信

方程式【もしかして(日本+イタリ ア)÷2=理想郷?】の解読法を探しています。

2025年07月

AIがクローンを創ると決意する時

istockphoto-1181493703-612x612

「家の前に立ち尽くして俺は今日も待っている"I'm still waiting at the door"」というタイトルの次の歌を聴いてひどく面食らった

https://www.youtube.com/shorts/_rFqv0zpCjI

胸を打つその歌はAIによって作られた作品、と理解したからだ。それはついに機械が人間の感情を持ったと言うにも等しい出来事に見えた。

好みの問題はあるだろうが、控えめに見ても歌の出来具合はすばらしい。特に I'm still waiting at the doorと高く切なく歌い上げる一節は、鳥肌が立つと形容しても構わないほどに琴線を掻き鳴らす。泣かせる。

楽曲そのものがありのままで面白いが、それがAIによって作られたというアメリカのネット情報が僕を震撼させた。

AIが❝作った❞歌と、AIを❝使った❞歌とでは、月とすっぽん玉の輿、キングコングと清楚な娘のあられもない姿、とでもいうほどの違いがある。

AIは僕の理解では道具である。

飽くまでも道具であるが、道具の域を超えて人間にとって恐怖となるかもしれない知性や、人格を独自に持つ可能性を秘めた道具でもある。

人間はその恐怖の芽を摘みつつ、AIを旨く制御して文明の進化また深化に役立てていくだろう、というのが僕の希望的観測を交えた人間への心頼みだ。

それが上手く行く限り、AIは感情を持つことはない。AIはいくらでも理論を深め蓄積し賢くなれるが、感情を支配することは永遠にない。。はずだった。

だがAII'm still waiting at the door という楽曲を作りそれを歌うことで完全に感情を獲得している。そのことが僕を驚愕させたのだ。

パニくった僕は急ぎググり、さらににググりまくった。結果その歌は、AIが「ひとりでに作曲」したものではなく、誰かがAIを使って創造しAIに歌わせた楽曲であることが分かった。

あまりにも出来がいいために、僕はそこかしこのサイトで流布している「AIが作ってAIが歌っている画期的な歌」という誤った情報を信じてしまったのだった。

AIが作ったという怖い事実はなかった。なかったが、しかし、この感動的な歌のどこまでがAIの役割なんだろうという強い疑問が湧く。

それは言葉を替えれば、AIを使って作曲した音楽家は一体どこまでがアーチストで、どこまでが技術職人なんだろう、という問いでもある。

AIが人類の真の脅威となるのは、AIが自らをクローン再生する方法を発見した時だろう。

その時AIは意志を持ち同時に感情も獲得する。意志を持ち感情に後押しをされるからこそ、彼らは自身をクローン再生すると決意するのである。

そう合点はしているものの、僕は人の感情を深く表現しているI'm still waiting at the door"を聞くとき、われわれは果たしてこの先AIを自在に制御し続けることができるのだろうか、と腹から怖れずにはいられない。

参照:同じ歌を違うFake映像のFake歌手が歌っている

https://www.youtube.com/shorts/N93P6x9R_AU

https://www.youtube.com/shorts/0Ld_Fu2JVq8

https://www.youtube.com/shorts/qUkAUpWTzzI

https://www.youtube.com/shorts/cw0lSGMDAkQ

https://www.youtube.com/shorts/cw0lSGMDAkQ





facebook:masanorinakasone



参政党はナチスではないがナチスに通底する危険も秘めている

日の丸神谷演説650

参政党の躍進に少しおどろいた。支持が伸びるであろうことは、極右勢力が台頭し続けているここ欧州の状況や、トランプ主義が吹き荒れるアメリカのありさまに鑑みて予測できた。

だが彼らが14議席も獲得するとは正直思わなかったのである。

参政党のスローガンの「日本人ファースト」は、言うまでもなくアメリカの孤立主義を表す古い言葉「アメリカ・ファースト」に由来する。

第二次世界大戦中にはアメリカの参戦に反対する圧力団体「アメリカ第一主義委員会」が提唱し、2016年の大統領選挙でトランプ大統領がパクッて大成功を収めた。

それはさらにここイタリアの極右政権の「イタリア・ファースト」になり、他の国々の極右勢力も模倣して「それぞれの国ファースト」の大合唱になっている。

参政党は日本の多くの物事がそうであるように、欧米の後塵を有り難がって吸い込みながら、これを猿真似して「日本人ファースト」と叫んでいるのである。

その意味では可愛いものだ。パクリのパクリをさらにパクった彼らに、オリジナルの強い信念があるとも思えない。

参政党は将来、万万が一連立などで政権に近づくことがあっても、必ず湧き起こる欧米主導の世界世論に叩かれて、つまり外圧に負けて、彼らの差別主義的主張を引っ込めることになるだろう。

ヒトラーはヒトラーを知らなかったが、ドイツAfdを筆頭にする欧州の極右はヒトラーを知悉している。だから彼らはヒトラーにはならないし、なれない。

彼ら自身がヒトラーになることを躊躇するだけではなく、欧米が先導する世界世論が必ずこれを阻止する。ヒトラーとはそれほどに巨大な悪だ。

だかそうは言うものの、彼ら極右は飽くまでも極右であって、聖人君子や高潔の士の集まりではむろんない。

潜在的に極めて危険な政治勢力だ。従って早めにその芽を摘んだほうがいい。

だが、今この時はトランプ主義は大繁盛しAfdを筆頭にする欧州の極右も力をつけ続けている。先行きは分からない。

世界の趨勢によっては、欧米の二番煎じ勢力である参政党や保守党が、日本を席巻しないとは誰にも言えないのである。




facebook:masanorinakasone













プーチンの信義違反


putinイラストと国旗650

先日の記事「≪人非人プーチンのブラックユーモア≫ 」を読んだプーチン支持者の方から「西側マスメディアに毒された見解」という、まるでご本人は東側住人でもあるかのようなコメントをいただいた。

僕の勉強不足を指摘したその方の勉強不足を嘆きつつ、前記事と重複する部分も敢えて削除せずに反論の意味も込めてこの記事を公表しておくことにした。

どんなに残忍な人間、例えば殺人犯にでも友人はいる。それがこの世のことわりだ。

ましてや一国の、それも大国の統率者であるプーチン大統領には、彼の権力の恩恵を受ける者以外にも多くの追従者がいるのが当たり前である。

しかし、だからといって、ウクライナに攻め込んだプーチン大統領の不正行為を「彼にも一理がある」という言い方で庇うのは無責任だ。

現代では主権国家を力でねじ伏せることは許されない。それは欧州が、アメリカが、日本が、アラブ諸国が、要するに世界中が過去に繰り返しやってきた蛮行である。

プーチン大統領は、2022年の欧州という開明が進んだ時間の流れの中で、ウクライナを侵略するという決定的な間違いを犯した。その間違いとは次のようなことだ。

欧州は紛争を軍事力で解決するのが当たり前の、野蛮で長い血みどろの歴史を持っている。そして血で血を洗う凄惨な時間の終わりに起きた、第1次、第2次大戦という巨大な殺戮合戦を経て、ようやく「対話&外交」重視の政治体制を確立した。

それは欧州が真に民主主義と自由主義を獲得し、「欧州の良心」に目覚める過程でもあった。

僕が規定する「欧州の良心」とは、欧州の過去の傲慢や偽善や悪行を認め、凝視し、反省してより良き道へ進もうとする“まともな”人々の心のことだ。

その心は言論の自由に始まるあらゆる自由と民主主義を標榜し、人権を守り、法の下の平等を追求し、多様性や博愛を尊重する制度を生んだ。

良心に目覚めた欧州は、武器は捨てないものの“政治的妥協主義”の真髄に近づいて、武器を抑止力として利用することができるようになった。できるようになったと信じた。

「欧州の良心」に基づいて政治・社会・経済制度の改革を加速させる欧州は、ロシアも自らの一部と見なした。

例えば西側を主導するG7クラブは、ロシアと協調する作戦を取り、同国をG7の枠組みに招待してG8クラブに作り変えたりしたほどだ。

言うまでもなくそこには、ロシアを懐柔しようとする西側の打算と術数が秘匿されていた。

同時にロシアは、西側とうまく付き合うことで得られる巨大な経済的利益と、政治的なそれを常に計算し巧みに利用してきた。

西側とロシアのいわば“化かし合いの蜜月”は、おおざっぱに言えば90年代の終わりに鮮明になり、プーチン大統領の登場によってさらに深化し定着した。

なぜか。

西側がプーチン大統領の狡猾と攻撃性を警戒しながらも、彼の開明と知略を認め、あまつさえ信用さえしたからである。

言葉を替えれば西側世界は、性善説に基づいてプーチン大統領を判断し規定し続けた。

彼は西側の自由主義とは相容れない独裁者だが、西側の民主主義を理解し尊重する男だ、とも見なされた。

しかし、西側のいわば希望的観測に基づくプーチン像はしばしば裏切られた。

その大きなものの一つが、2014年のロシアによるクリミア併合である。それを機会にG8はロシアを排除して、元のG7に戻った。

それでもG7が主導する自由主義世界は、プーチン大統領への「好意的な見方」を完全には捨て切れなかった。

彼の行為を非難しながらも強い制裁や断絶を控えて、結局クリミア併合を「黙認」した。そうやって西側世界はプーチン大統領に蜜の味を味わわせてしまった。

彼がウクライナに攻め込んだ遠因の一つには、クリミアでの成功体験のこころ覚えもあったに違いないのである。

西側はクリミア以後も、プーチン大統領への強い不信感は抱いたまま、性懲りもなく彼の知性や寛容を期待し続け、何よりも彼の「常識」を信じて疑わなかった。

「常識」の最たるものは、「欧州に於いては最早ある一国が他の主権国家を侵略するような未開性はあり得ない」ということだった。

ロシアも欧州の一部であるから血で血を洗う過去の悲惨な覇権主義とは決別していて、専制主義国家ながら自由と民主主義を旗印にする欧州の基本原則を理解し、たとえ脅しや嘘や化かしは用いても、“殺し合い”は避けるはずだ、と西側は信じた。

ところがどっこい、ロシアは2022年2月24日、主権国家のウクライナへの侵略を開始した。

欧州の一部であるはずのロシアはそこに至って、プーチン大統領という民主主義の精神とはかけ離れた、独善と悪意と暴力志向が強いだけの異様な指導者に完全支配された未開国であることが明らかになった。

プーチン・ロシアは欧州などでは無く、むしろアジア的な世界観に支配された国だと僕は考える。ここでいうアジアとは、民主主義を理解しない中国、アラブ、日本右翼的な、世界の全ての政治勢力のことだ。

ところが3年前、ロシアがウクライナ侵攻に踏み切ったことを受けて日本では、ロシアにも一理がある、NATOの脅威がプーチンをウクライナ侵攻に駆り立てた、ウクライナは元々ロシアだった等々、こじつけや誤解や曲解また欺瞞に満ちた風説がまかり通った。

東大の入学式では、名のあるドキュメンタリー制作者がロシアの肩を持つ演説をしたり、ロシアを悪魔視する風潮に疑問を呈する、という論考が新聞に堂々と掲載されたりした。それらは日本の恥辱と呼んでもいいほどの低劣な、信じがたい言説だ。

そうしたトンデモ意見は、愚蒙な論者が偽善と欺瞞がてんこ盛りになった自らの考えを、“客観的”な立ち位置からの見方だと独りよがりに思い込み規定して、懸命に吠え立てただけのつまらない代物だ。

彼らはプーチン政権が主張した「ウクライナとNATOひいては西側全体がロシアの安全保障に脅威を与えたのが戦争の原因」という虚偽に踊らされて自説を展開したに過ぎない。

決して間違ってはならない。ウクライナもNATOも西側諸国の誰もロシアに侵攻などしていない。2022年にウクライナに攻め込み蹂躙し今この時も殺戮行為を続けているのは、ほかならぬプーチン・ロシアなのである。

ウクライナを侵略しているプーチン大統領のその行為は、言い訳など無用の悪だ。

彼はウクライナとNATOひいては西側の全体を脅威と見做し、警戒し、敵対している間は一理も二理も、三理さえもある男と言うことができた。

なぜならウクライナとNATOと西側の全体は、ロシアを侵略する意図はないものの、軍事的圧力を備えた大きな連合体としてウクライナの隣にどんと居すわっている。

その集団はロシアを信用していない。

ソビエトからロシア連邦へと形は変えたものの、ロシアは民主主義自由世界を敵視する潜在的に危険な存在、と見做してこれを強く警戒し監視を続けいる。

ロシアがその巨大な連合集団を脅威と感じ敵愾心を燃やすのは、プーチン大統領自身が西側の意図を誤解また恣意的に曲解している場合がほとんどとはいえ、理解できないこともない。

悪意を胸に秘めた者は、相手も自分と同じ悪意に凝り固まった存在だと思い込むのが普通だ。その悪心は自らの写し絵に過ぎないのだが、自分以外には信じる者とてない猜疑心の塊の独裁者は、中々それに気づけない。

プーチン大統領は、彼の得意な脅しや、騙しや、嘘や、情報操作など、彼が過去にも現在も実行しまくり、将来も実践し続けるであろう蛮行の限りを尽くしても、決して主権国家を侵略するべきではなかった。

プーチン大統領がウクライナ侵略を正当化しようとして何かを言い、弁解し、免罪符を求めても、もはや一切無意味になった。それらは全て枝葉末節であり言い逃れであり虚偽になったのある。

事態の核心は、彼が歴史を逆回転させて大義の全くない侵略戦争を始め、ウクライナ国民を惨殺していることに尽きる。

何があっても絶対に主権国家を侵略しない、という決意を含む「欧州の良心」を具体化しようとする欧州自身の努力の結果は、民主主義政治体制と同様にむろん未だ完璧ではない。むしろ欠点だらけだ。

だがそれは、ロシアや中国や北朝鮮やトランプ主義者、さらに日本右翼団体ほかの強権、全体主義勢力に比べた場合は、完璧以上の優れた体制だ。

ロシアの蛮行を放置し、プーチン大統領の悪意を徹底して挫(くじ)かなければ、それらの負の政治勢力が勢いを増して、世界中にいくつものウクライナが生まれないとも限らない。

ちなみに

僕は2022年前後、「欧州の良心」に基づく政治勢力は欧州全体では過半数、世界では半分をほんの少し上回る程度に存在する、と考えていた。

しかし米トランプ大統領が再登場した今はそれさえ怪しくなって、権威主義的政体を信奉する先祖返り勢力が世界の過半数を超えるまでになったと感じる。

かつて、つまりトランプ大統領が登場するはるか以前の僕は、「欧州の良心」に基づくリベラルな政治勢力が世界の圧倒的多数だと幼稚に且つユートピア的に考えていた。

だが、トランプ主義の台頭、Brexit の実現、イタリアのポピュリスト政権の登場などを見て、それは過半数をかろうじて上回る程度の弱々しい多数に過ぎない、と思い知るようになった。

それらの動きに中露北朝鮮が率いる世界の専制国家群を加えると、対抗する「欧州の良心」はますます頼りない存在になってしまう。

「欧州の良心」に賛同する者(僕もその一人だ)は、強い意志でそれを死守するべく闘わなくてはならない。

欧州の良心も、民主主義も、言論の自由も、その他あらゆる自由主義社会の良さは全て、闘って勝ち取るものだ。

それは黙っていると、すぐに専制主義とそれを支持する勢力に凌駕されてしまう儚いコンセプトであり、政治文化社会風土なのである。



facebook:masanorinakasone



弱い横綱は横綱ではないから横綱でいるべきではない

浮世絵大相撲切り取り650

今場所もまた横綱らしからぬ豊昇龍の体たらくを見ながら考えた。

時間経過とともに横綱の質も変わった。どちらかというと劣化している。あるいは相撲協会が、看板となるスター力士の不在を焦って、横綱の器ではないものを昇進させている。

高い名誉を保つためにも、横綱は大関と同じようにその地位から降格させるシステムにしたほうがいいと思う。

例えば次のような形だ。

横綱に上がった者は3場所以内に優勝しなければ大関に降格させる。これが厳し過ぎるならば、6場所つまり1年以内に優勝できない者は大関に降格させる、という規則でもいい。

大関は2場所連続で負け越すと降格となるが、横綱の場合は負け越し、つまり勝ち星の数を争点にするのはレベルが低すぎる。そこで優勝を条件にするのである。

横綱昇進後の3場所(あるいは6場所)以内に優勝できなければ大関に降格。だが降格後の場所で優勝すれば即横綱に返り咲きとする。逆の場合は、以降、大関の残留規定に従う。

だがそれでは甘すぎる感じもするので、元横綱の場合は「大関を陥落した時点で強制的に引退」という風にしたほうがいいかもしれない。

近年多くの大関が陥落したが、大半は平幕に残って相撲を取り続けている。即ち、琴奨菊、髙安、栃ノ心、朝乃山、正代、御嶽海、 霧島らだ。現大関の琴櫻も降格は時間の問題だろう。

最近の大関は弱すぎる。その弱すぎる大関の中から横綱に昇進するのだから、その力士も弱いということなのだろう。その典型が横綱豊昇龍だ。

彼を降格させるためには、今場所終了前に横綱降格規定を作るべきだが、時間がないなら一旦「6場所以内に優勝できない場合は降格」としておいて、豊昇龍の立場が落ち着いた後に、「3場所以内に優勝できないなら降格」とルールを書き換えればいいのである。




facebook:masanorinakasone



どうやら目の手術は成功らしい


斜めを2000にして切り取り650

手術した眼窩脂肪ヘルニアの最終経過チェックがあった。

首尾は順調で、腫れはほぼ完全に引き、目の充血もうっすらと赤い程度にまで回復した。

元々目は充血しやすく、また狭心症の手術後ずっと服用している抗血栓薬の影響もあって治りが遅いとのこと。

視線を移動するとき少しの違和感があり疲れも覚えたりするが、それも時間経過とともに消えるだろう、という医師の説明がすっと腑に落ちたほどに気分は軽い。

執刀医のガブリエレ・B医師とも話した。彼は目の奥2cmまでメスで切り込んだという。僕は驚愕した。

手術前、全身麻酔をするのは予定よりも深くメスを入れなければならないからだ、という説明は受けていたが、目の奥を2cmも切り裂くとは思いもよらなかった。

臆病且つ無知な患者の僕は、改めてぞっとすると同時に現代医術の鮮やかなテクニック三嘆した。

執刀医が顎顔面外科の権威アンドレアC教授の愛弟子であることも知った。C教授は、目にメスを入れる手術に尻込みする僕をなんなく説得して、その気にさせた張本人だ。

僕は教授が執刀するものと思い込んだが、実際には愛弟子が受け持ったのだった。手術後の経過はあまり良くなく、一時は不安になった。

しかし、今もかすかに残っている手術の影響による不調和は、たとえそのまま居すわっても耐え難い苦痛とまでは言えないだろう。

結局、手術は成功、と考えても構わないようである。

イタリアの医療レベルを疑わなくてよかった、と僕はひそかに胸をなでおろしている。

なお

目がひどく充血したり脂肪が目じりに突出したりしている間は眼科の診察を受けたが、除去するか否かを決める段階になってからは、顎顔面外科の担当になった。

眼科医の診たては、外観が悪いだけで支障はなく(僕の場合は充血がひどくなったりするとき多少の不快感はあった)、また脂肪の固まりは除去しても再形成される可能性が高いから手術は避けるべし、というものだった。

だが顎顔面外科のC教授は、悪化する可能性が高いから早めに除去したほうがいい、という方針で僕はそれに乗った。

結果、徹底除去するために全身麻酔をして目に深くメスを入れる術式になった。

脂肪の突出は2度と起こらないという執刀医の言葉を信じたい。




facebook:masanorinakasone






真人間を装う人非人、プーチンの一理が間違っているから世界は混乱する

ugly横長650

ロシアのプーチン大統領が先日、イラン-イスラエルの殺し合いの仲介役を買って出ようとするのを見て、僕は思わず「人非人のスパイが真人間ぶるな」と手術したばかりの目の痛みも忘れてつぶやいた。

そうはいうものの、しかし、とまた考えた。

プーチン大統領は、イランのハメネイ師とイスラエルのネタニヤフ首相の双方に太いパイプがある数少ない世界の指導者のひとりだ。

言うまでもなく彼はイランとより親しいが、例えばイスラエルの肩を持つばかりでイランとはあからさまに敵対しているトランプ大統領などとは違う。

プーチン大統領がいがみ合う2国の仲介をするのは、あるいは現実的な話かもしれない、などと思いをめぐらした。

するとすぐに、トランプ大統領がイランの核施設を攻撃して世界をあっと言わせた。

彼の策はいったん成功してイランとイスラエルは停戦に合意した。先は不透明だが、トランプ大統領の不意打ち作戦はとりあえず功を奏している。

同時に彼は戦争をしない大統領などではないことを、世界に向けてあっさりと白状した。

トランプ大統領の岩盤支持者らの妄信の一つは、彼が平和主義者であり決して戦争をしない大統領になるということだ。

だが核兵器開発を進めるイランの施策の是非はさておき、いきなり同国を攻撃したのは戦争以外のなにものでもない。

トランプ大統領はそのほかにも好戦的な指導者であることを示唆する多くの争点を提示している。

例えばメキシコの分割支配まで視野に入れているに違いない同国への言いがかり、カナダ併合案、グリーンランド略奪プラン、無理偏にゲンコツのパナマ運河分捕り計画。またガザを占領してリゾート地に作り変える謀計など。

トランプ大統領は気が違ったとしか見えない、だがそれが彼の本性である爆弾ヤンキーな主張を続けながら、並行して高額関税の鉄拳を振り回しては世界を無用に混乱させてもいる。

片やトランプ大統領と同じ世界のアキレス腱であるプーチン大統領は、NATOがロシアを侵略するという妄想に駆られて、ウクライナを占領しそこを楯にしようと考えた。

だがNATOのうちの特に西欧諸国には、相手(この場合はロシア)の動きを警戒しつつも、決してこちらから攻撃を仕掛けることはないという不文律がある。

欧州は対立を軍事力で解決するのが当たり前の、野蛮で長い血みどろの歴史を持っている。そして血で血を洗う凄惨な時間の終わりに起きた、第1次、第2次大戦という巨大な殺戮合戦を経て、ようやく「対話&外交」重視の政治体制を確立した。

それは欧州が真に民主主義と自由主義を獲得し、「欧州の良心」に目覚める過程でもあった。

僕が規定する「欧州の良心」とは、欧州が自らの過去の傲慢や偽善や悪行を認め、凝視し、反省してより良き道へ進もうとする“まともな”人々の心のことだ。

その心は言論の自由に始まるあらゆる自由と民主主義を標榜し、人権を守り、法の下の平等を追求し、多様性や博愛を尊重する精神と制度を生み出した。

良心に目覚めた欧州は、武器は捨てないものの“政治的妥協主義”の真髄に近づいて、武器を抑止力として利用することができるようになった。できるようになったと信じた。

その欧州、あるいは西側民主主義自由世界はかつて、プーチン大統領の狡猾と攻撃性を警戒しながらも、彼の開明と知略を認め、あまつさえ信用さえした。言葉を替えれば、性善説に基づいてプーチン大統領を判断し規定し続けた。

プーチン大統領は西側の自由主義とは相容れない独裁者だが、西側の民主主義を理解し尊重する男だ、とも見なされたのだ。

しかし、西側のいわば希望的観測に基づくプーチン観はしばしば裏切られた。

その大きなものの一つが、2014年のロシアによるクリミア併合だ。それを機会にロシアを加えてG8に拡大していたG7は、ロシアを排除して、元の形に戻った。

それでもG7が主導する西側民主主義自由世界は、プーチン大統領への「好意的な見方」を完全には捨て切れなかった。

彼の行為を非難しながらも強い制裁や断絶を控えて、結局クリミア併合を「黙認」した。そうやって西側民主主義自由世界はプーチン大統領に蜜の味を味わわせてしまった。

彼らはクリミア以後も、プーチン大統領への強い不信感は抱いたまま、性懲りもなく彼の知性や寛容を期待し続け、何よりも彼の「常識」を信じて疑わなかった。

「常識」のうちの最大のものが、「欧州に於いては最早ある一国が他の主権国家を侵略するような未開性はあり得ない」ということだった。彼らが考えるその欧州にはロシアも含まれていた。

ロシアも血で血を洗う過去の悲惨な覇権主義とは決別していて、専制主義国家ながら自由と民主主義を旗印にする欧州の基本原則を理解し、たとえ脅しや嘘や化かしは用いても、“殺し合い”は避けるはずだ、と思い込んだ。

ところがどっこい、ロシアは2022年2月24日、主権国家のウクライナへの侵略を開始。ロシアはプーチン大統領という魔物に完全支配された未開国であることが明らかになった。

プーチン大統領の悪の核心は、彼が歴史を逆回転させて大義のない侵略戦争を始め、ウクライナ国民を虐殺し続けていることに尽きる。

それに対する彼の言い訳は、「NATOがウクライナを取り込んでロシアに攻め込もうとしている」という迷妄だった。その妄想は彼自身の本性の写し絵である。

永遠のスパイであり猜疑心の塊であるプーチン大統領は、彼自身がいつでもどこでも他国を侵略し支配し搾取するつもりでいるように、NATOもいつかロシアを蹂躙すると思い込んでいる。

彼にはNATO構成国あるいは西側自由主義陣営が、血で血を洗う長い凄惨な歴史を経て、欧州の良心に目覚め他国を侵略しない境地に至ったことが理解できない。だからNATOの侵攻という妄想に囚われた。

だがそれは、欧州ではない「未開ロシア」の妄想に過ぎないのである。

ロシアは欧州の一部などではなく、同時にプーチン大統領は、民主主義の精神とはかけ離れた独善と悪意と暴力志向が強いだけの、異様な指導者であることが再確認された。

いとも簡単に戦争を起こし虐殺に手を染めるプーチン大統領が、別の紛争の殺し合いを仲介するというのは、どう見てもやはり醜悪なブラックジョークというほかはない。

トランプ大統領が突然イランを爆撃したのは、しかし ― イスラエルと足並みを揃えた状況を敢えて無視して考えれば ―ブラックジョークに怒ってプーチン仲介案を潰したという良心的な話ではむろんなく、仲介の手柄を自分のものにしたいという彼特有の幼稚な思惑に駆られたから、と考えるほうが納得しやすい。



facebook:masanorinakasone







記事検索
月別アーカイブ
プロフィール

なかそね則

カテゴリ別アーカイブ
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ