夏がより長いのと、空気が一段と乾燥している点で、エーゲ海の島々はバレアレス諸島よりもバカンス先として優れている。
統計的に見てそうなのだが、僕の体験も同じことを語る。
これまでにエーゲ海の島々を何度も訪ねた。
6月から10月の間だが、そこでは雨に降られた記憶が全くない。
一度スコールのようなものがあったような気もするが、正直うろ覚えで、自分の中では皆無というのがリアルな印象だ。
ところが今回初めて訪ねたマヨルカ島では、10日間の滞在のうち後半の4日間が曇り、または雨模様だった。
曇りはさておき、雨模様というのはたまたまだったかもしれないが、島の空港に降り立ったとき、エーゲ海の島では決して覚えることのない湿気を感知したのは事実だった。
人為の案件でマヨルカ島のビーチがクレタ島に比べてやや劣るものもあった。
ビーチのストローパラソルとサンベッドの賃貸料が、一日あたり21ユーロ(約3800円)と高い。
10日で38000円。クレタ島の2倍以上の値段である。
設備の経営者は町の役場らしい。
値段がやたらと高いのに、ビーチにはトイレ施設やシャワーがほとんどない。シャワーまではいかなくても、せめて足にこびりつく砂を洗い流す水周りぐらいはほしいと感じた。
クレタ島のビーチにも公衆トイレは多くないが、ビーチ沿いに多くのバールやレストランがあって、そこでコーヒーやジュースなどを頼むついでにトイレの使用ができる。
公衆トイレは決まって汚いのが相場だから、そうした民間の設備のほうが確実に清潔で好ましい。マヨルカ島にはそういう店がビーチ脇にほとんどないのである。
公平を期して言えば、しかし、食事はクレタ島よりもマヨルカ島のほうが美味いと感じた。肉料理は甲乙つけ難いが、魚介はタコ料理を除いてマヨルカ島に軍配が上がるというのが僕の印象だ。
だがひとつ気になることがあった。名物料理の子豚の丸焼きに余計なソースがかかっているのだ。おそらくフレンチの影響を受けたカタルーニャ料理の、そのまた影響ということなのだろう。
スペインの子豚料理はマドリード近郊のセゴビアなどが有名だ。水と塩と、時にはわずかなラードを加えてじっくりと焼き上げ、からまるソースは「素材から出た肉汁」だけという素直なレシピだ。
その丸焼き料理はイタリアのサルデーニャ島のものとそっくりで抜群に美味い。
子豚丸焼きに掛かっていたしつこいソースを選り分けて除き、肉だけを食べると美味だった。
フレンチを意識したソースは全く無用の長物だと感じたが、それが旨いという人もむろん世の中には多い。
フレンチのソースは洗練と豊穣の極みとされるものだが、僕はほとんどの場合、それを濃厚すぎて素材の良さを破壊する邪魔物と感じる

