女子サッカーW杯決勝戦での、なでしこジャパン澤穂希選手の延長同点ゴールにはおどろいた。

一瞬で決めたのはたぶん
踵でボールの方向を鋭く変えるヒールキックだと思うが、まるでイタリアの英雄ロベルト・バッジョも顔負けの高等テクニックである。

あるいは意表を突く華麗なテクニックを繰りだす天才だった、英国プロサッカーチーム「マンチェスター・シティ」の監督ロベルト・マンチーニの現役時代をも髣髴(ほうふつ)とさせる見事なプレーだった。

 

僕はこれまで女子サッカーには全く興味がなかった。

体と体がぶつかり合う激しいスポーツであるサッカーに女子がついていけるわけがない。やわい、遅い、軽いの三重苦に低テクニックが加わって、きっと見るに値しないゲームばかりだろうと、勝手に思い込んでいた。

 

とんでもない見込み違いである。選手の動きとボールのスピードに目を瞠(みは)り、テクニックの高さにぶったまげ、当たりの激しさに感嘆した。極め付きが澤選手の同点ゴールのスーパーテクニックである。

 

少しエラソーに言わせてもらうと、僕は長い間イタリアのハイレベルなプロサッカーに接し、仕事をし、少し勉強もした。ある時期にはプロの監督試験を受けて、子供を指導するサッカー監督になろうと真剣に考えたこともある。ボランティアで子供たちに教えようと思ったのだ。

 

受験資格にはプロサッカーチームでプレーした経験かそれに準ずる経験が必要とされているが、僕はイタリアのプロリーグ「セリエA」を長く取材し、生中継に関わり、サッカー番組制作に関わった実績が認められて、受験を許可するという内定を受けていた。ぶっちゃけた話、コネがものを言ったのだ。

だけど忙しさにかまけて受験を先延ばしにするうちに、チャンスが遠のきやがて監督になりたいという僕の情熱も立ち消えになってしまった。

 

そんな経験があるので、少し思い上がって「女子サッカーなんて・・」と正直バカにしていた。今日から襟を正してわが「なでしこジャパン」を見守り応援しようと思う。

 

なでしこジャパンの大活躍が大震災の被災者の皆さんに勇気を与え、日本中を興奮させ明るくしているに違いないことを確信しながら、僕は「えっ、もしかしてバッジョ?」とさえ喜んだ澤選手のすごい技と、全選手の才能に深い敬意を覚えている・・