今日8月15日はフェラゴスト(FERRAGOSTO):聖母被昇天の祝日である。
聖母マリアが生涯を終えて天に召されたことを祝うこの祭りは、元々は古代ローマのアウグストゥス帝の誕生日にちなんだ、8月1日を祝って休む日だったのだが、キリスト教と結びついて今日8月15日と定められた。
バカンス時期にあるこの祭日は、いわば休みの中の休み、とでもいうべき日。リゾート地を除くイタリア中の店も工場も食堂もなにもかも閉まって、国中が空っぽになる。
同時に毎年この日は、シエナの8月のパリオの前夜祭にも当たっている。中世の美しい街シエナの競馬祭りは、例年7月2日と8月16日に行われるのである。
今年は7月のパリオで競争馬が事故死し、これにブランビッラ観光大臣が異議を唱えて騒ぎになった。動物愛護家の大臣は、長い伝統を持つパリオそのものの廃止にまで言及して、問題はさらに先鋭化した。→<パリオの行方①>
女性大臣は、街の広場を馬場にして裸馬が疾駆するパリオは、出場馬にとって極めて危険だから祭りを廃してしまえと叫ぶのだが、なぜか馬に乗る騎手の危険性については一言も言及しない。馬と同じ危険にさらされる騎手はどうでもいいが、動物は必ず守れということらしい。
また観光大臣でありながら、国の重要な観光資源である伝統的なアトラクションを取り止めろと主張するのは、整合性がないと批判されても仕方がないのではないか。
開催が危ぶまれた明日のパリオが予定通り行われるのは嬉しいことである。また、これまでのところは、ブランビッラ女史の声高な問責もない。
バカンスまっただ中の今日のフェラゴストだから、ブランビッラ大臣もきっと休暇中なのだろう。でも、パリオの廃止を叫ぶくらいだから、休んでいる場合ではないのではないか。
自らシエナに足を運んで、祭りを実体験してみるべきである。馬を愛する人々が、馬と共に熱狂して、感動的な雰囲気に包まれる空気を呼吸してみるべきである。
そうしておいて、それでもやはり祭りを弾劾するというのなら、シエナの人々も少しは納得するというものである。
でも、僕がシエナの友人達に確認した限りでは、大臣はここまでのところ今年も祭りの期間中にシエナに足を運んではおらず、祭り以外の期間もおそらく街を訪ねたことはないのではないか、とのこと。
それやこれやで、僕はパリオのことも「サンパトリニアーノ コミュニティ」の内紛劇と同じように、少し納得のいかない思いで見守っているのである。