2011年8月のシエナのパリオが無事終わった。
勝ったのはコントラーダ・ジラファ(キリン町内会)。2004年7月以来の優勝。
またパリオが、カンポ広場を駆け抜ける今の形になった、1644年以来では34回目の勝利である。
7月のパリオで馬が死んだキオッチョラ(かたつむり)町内会は敗退。
パリオでは優勝だけが意味を持つ。2位以下は全て敗北として片付けられるのである。
カンポ広場を3周するパリオの所要時間は、1分10秒からせいぜい1分20秒程度である。
でもそれは恐ろしく中身の濃い1分余りで、まるでウサイン・ボルトの100Mダッシュを見るように速く過ぎる。
熾烈(しれつ)で劇的でエキサイティングな勝負。
2番手で飛び出したジラファは、1周目の途中でトップに立ってそのまま逃げ切った。
僕は3周目の途中まで八百長くさいパリオだと思った。波乱がないように見えたからだ。
ブランビッラ大臣ら動物愛護家の糾弾にひるんで<パリオの行方①>、各チームの馬の走りが鈍っているのか、と本気で疑ったとき、急カーブで一頭が転倒して後続が次々に重なり倒れ、騎手が投げ出された。
本気も本気の走りをしていなければ起こり得ない光景。
僕はほっとした。パリオは死んでいないと喜んだ。
もんどりうって倒れた馬も騎手も全員が無事だと分かって、僕はさらに喜んだ。
でも、たとえ馬が無事でも、動物愛護家の人々のパリオへの弾劾はつづくだろう。
5頭が一気に転倒して騎手が放り出されるシーンは、刺激的過ぎて彼らにはとうてい受け入れられないだろうから。
そしてそれは、彼らの立場に立てば、分からないことでもないから。
パリオの命運は、まさしく前途多難というふうだ。
ったく、困ったものである・・