「 渋谷君
僕が先日のメールに書いた
「~シチリア島に行っていました。相変わらず面白い島。歴史と文化とマフィアと海がいっぱいの国~」
という件(くだり)をぜひ撤回させてほしい。
僕のメールに対する君の返信
『~シチリアってやっぱりマフィアの島なんですね。怖いな。マフィアがいっぱいとは、具体的にどういう?そのあたりで拳銃での撃ち合いがあったり、盗みがあったり、爆弾が炸裂したり、恐喝されたり・・ということなのでしょうか・・~』
を読んで、少し大げさに言うと、僕は慄然(りつぜん)とした。
君がそれをちょっとふざけ気味に書いているのであろうことは分かったが、人間は心に思わないことは決して口にしないのだから、君の中にはシチリア島への恐怖心や猜疑がどこかにあるに違いないと僕は判断したのだ。
そして僕の不注意なひと言が、それに輪をかけた可能性がある・・
誰よりもシチリア島が好きで少しは彼の地のことも知っているはずなのに、ついお気軽に「マフィアがいっぱい」と言ってしまった。
そういうのがいけないんだよね。シチリアというとすぐにマフィア、と言葉をつなげるのが・・
という風にそこかしこで書き、発言もし、ブログなどにも書いていながら・・・う~ん、まずい。
シチリア島には歴史と文化と海がいっぱいで、そういう輝かしい部分と共に、マフィアの存在を思わせる闇の部分もまた垣間(かいま)見える、と言いたかったんだ。
「マフィアがいっぱい」と書くと、君が指摘したようにあたかもそこら中に殺人事件や犯罪があふれていて怖い、というふうに誤解されかねない。
が、まったくそういうことはなくて、島は安全だし明るいし楽しい。
でも、よく見ると、パレルモのような都会にさえ、第二次世界大戦で破壊された建物が未だに再建されずに存在したり、それとは別の廃墟があったり、途中で建設がストップした高速道路のようなでたらめな工事現場があったり、街の一部が恐ろしく汚かったり等々、明らかに行政が怠慢な部分も数多くある。
そういうところに悪のマフィアの影響が如実に出ていると僕には見える。それをつい「マフィアがいっぱい」と表現しちゃったんだ。
シチリア人はとても明るくて親切で、同時に世界最大の「マフィアの犠牲者」でもある。だから、あなたはシチリアを決して「怖い」なんて思わないでほしい。
そういうのって、例えば「山口組がいるから神戸は怖い」と言うのと同じくらいアホーな話なんだ。
そして僕は「シチリアにはマフィアがいっぱい」なんて言っちゃって、そんなアホーな話に負けないくらいのバカ話をしちゃったわけだ。
大いに反省・・
シチリアについては、今回の旅行のことも含めてまたおいおい書いていくつもりだけれど、とりあえず君の誤解を解きたくて、こうして急いで便りをする次第です。
それでは。 」