イタリアは最近、洪水被害に苦しんでいる。
特に、山が突然海に落ち込むような地形が多い、北イタリアの
リグーリア州一帯。
先月は同州のチンクエ・テッレで9人が死亡する洪水が発生し、昨日(11月4日)は州都のあるジェノバで、少なくとも6人が大雨のために亡くなる災害が起きている。
リグーリア州は土地が狭く、且つ貧しいために、古来、同地の人々は海洋に進出して巨万の富を得た。
アメリカ大陸を発見したとされる、コロンブスもこの地で生まれた。
今は、急峻な地形と行政の怠慢などが災いして、大雨のために死者も出る苦しい時間を過ごしている。
また
アフリカ・サハラ砂漠原産の風、シロッコもイタリアに吹き荒れている。
シロッコは初夏に多い暖風だが、3月から11月頃まではいつ吹き募(つの)ってもおかしくないやっかいもの。
シロッコは最近のリグーリアの洪水にも影響しているようだ。
さらにそれは、ベニスの高潮・浸水被害にも例年大きく作用してきた。
ベニスは徐々に水没している。
そのために高潮がひんぱんに寄せて、サンマルコ広場を始めとする一帯が浸水する被害を受ける。
もっとも多いのは今頃の季節。
その原因はいろいろあるが、元凶の一つがシロッコなのである。
シロッコによってアドリア海の潮が吹き集められて、ベニスのあるラグーナ(遠浅の海)が侵され、街の中心部が水につかる被害が出る。
イタリアに限って言えば、ギリシャに始まって世界を巻き込んで身悶(もだ)えている、昨今の金融洪水よりも、ジェノバやベニスの真正洪水の方がよっぽど身につまされるのである。
それは目に見える、身近な、現実的な痛み。
おそらく、今この時の、タイの人々にとってのバンコクの洪水がそうであるように・・