ジェノバを始めとする北イタリアに、甚大な被害をもたらした悪天候は南イタリアへ。

 

昨日は最南端のシチリア島を直撃。

島の東部のメッシーナとカターニャでは大雨のために7万世帯が停電した。

 

大雨はこれで、北イタリアからポー川を経てイタリア中部のエルバ島、南部のナポリなどを丁寧に襲撃したあと、さらに南の島嶼部にまで噛みついたことになる。

 

なお、ジェノバの洪水では7人の犠牲者が出た、という情報もあって混乱していたが、最終的に6人と確認された模様。不幸中の幸い、というべきか。

 

イタリア財政・政治の悪天候も継続中。いや、むしろ悪化中。

 

ベルルスコーニ首相が辞意を表明して、状況が好転するかと見えたが、疑心暗鬼に陥っている世界の金融機関や投資家は納得せず、欧米の株価が大きく下落。

 

ギリシャ危機につづいて、イタリアももはや「イタリア危機」の洪水に巻き込まれた恰好だ。

 

ナポリターノ大統領は、首相の辞意声明を受けて元欧州委員会委員-EU(欧州連合)の閣僚に当たる-で経済学者のマリオ・モンティを終身上院議員に任命し、同氏を後継首相とするいわゆるテクノクラート(実務型)内閣を発足させることを目指す。

 

そうすることで、信頼を回復し世界市場の混乱を落ち着かせるのが目的。

 

それは決して夢想家の妄言ではない。

 

イタリアは1990年代、テクノクラート政権であるアマート、チャンピ、ディーニの3代内閣が幾つもの重要な財政改革を実行して、現在よりももっと深刻だった市場危機を克服し、イタリア経済を建て直した実績がある。

 

大連立を組み「挙国一致」内閣で危機を乗り切ろうとする考え方もある。

しかし各派・政党の対立が激しいイタリア政界の現実がそれを阻むのではないか。

 

また、辞意を表明したものの、ベルルスコーニ首相の今後の動きに対する警戒感も政界には根強いだろう。

 

彼は次の選挙には立候補しないとも口にしたが、果たしてそれが本心かどうかは疑わしい、と僕などは思うのである。

 

汚職や女性問題など、多くの醜聞や疑惑にまみれ、またさまざまな事案で起訴されたりもしているベルルスコーニ首相は、中東の独裁者ではないが、権力を手放したとたんに世論のしっぺ返しに遭(あ)って地獄に突き落とされる可能性も高い。

 

そのことを知り尽くしているに違いない彼が、みすみす権力の周辺から遠ざかることはあり得ない、と考えるのはうがち過ぎだろうか・・