雪解けの庭の一角にウサギのカテリーナがいた!
丸々と太って。元気いっぱいで。
庭やブドウ園の草は厳寒の今も完全には枯れず、ウサギの餌は充分にあると分かってはいても、一面が雪におおわれた景色を見ているとやはり心配だった。
雪が降っても積もっても、わが家の敷地まわりには倉庫や石垣や門扉脇などにたくさんの庇(ひさし)や日よけや屋根がある。そこには雪はない。草もよく茂る。
でも大雪になると、さすがにそれらの空間の多くも「流れ雪」に見舞われてうっすらと綿帽子をかぶる。古い倉庫内を除いて。
それなので、積雪中はカテリーナが気になって何度か倉庫周りや中を覗いてみた。しかし、一度も見つけることができなかった。
飢え死にすることはあり得ないと分かっていても、姿が見えないとやはりどうしてもやきもきした。
白状すると、僕はもうカテリーナは死んだのだとさえ考えたりした。
いろいろな可能性があった。
まず庭師のグイドがカテリーナを捕らえて食べてしまったこと。あるいはブドウ園やワイナリーの従業員や近所の農夫の可能性・・
また、犬や猫や、あるいはそれとは全く違う野生動物の餌食になったかも知れないこと。
さらに、もしかすると、わが家の敷地の外に逃げ出して、誰かに捕らえられたか、交通事故に遭った確率も・・・
が、
逃亡物語りの場合には、近くの畑地や藪や森にまぎれ込んで、そこで生きのびている見込みもあるので、少しの安心も。
しかし、
そのどれもが思い過ごしで、カテリーナはちゃんとわが家の敷地内で生きていた!
では、
雪が解けると同時に姿を見せたカテリーナは一体どこにひそんでいたのだろうか?
白い保護色を頼りに雪の中?
まさか。
やはり最も可能性が高いのは、倉庫の中だろう。
カッシーナと呼ばれる巨大倉庫は、あちこちが朽ちかけている農業用施設。
かつて、貴族家の屋台骨を支えた巨大農地と農業の、そのまた屋台骨となった建物。
何かの奇跡で資金が手に入れば、倉庫を改修して売却あるいは賃貸に出して、伯爵家の建物などの莫大な維持費に宛てたい、と僕が密かに考えているほどの古い大きな価値ある「準」廃屋。
カテリーナは、そんな建物を独り占めにして生きている・・
ウ~む、なんとゼイタクな・・・