イタリア危機がやって来てベルルスコーニが去って、モンティ新政権が危機脱出のための緊縮財政策を始めて以来、イタリア国民の生活は日々苦しさを増している。
原発が稼動していないことが大きく影響して、この国の電気料金はもともとヨーロッパ一高く、ガソリンの値段もほぼ同じ状況がつづいていた。
増税と歳出カットを柱にしたモンティ緊縮策がスタートしてからは、あらゆる分野に似たような状況があらわれた。
そして、ついにイタリア国民一人当たりの年収は、先週末の統計で約2万3千ユーロとなって、ドイツやオランダのそれの半分近くにまで減った。
その数字はギリシャやスペインよりも低いのだ。すべて危機脱出を図るモンティ政権の増税策が原因である。
イタリアの元々の財政状況は実はそれほど悪くはなかった。たとえばドイツなどに比べれば、それは確かに良いとは言えないが、基礎的財政収支いわゆるプライマリーバランスは、イタリア危機が叫ばれる直前でもプラスだったのだ。
基礎的財政収支がプラスということは、日本や米国などと比較した場合は優等生と言っても過言ではない良好な状況だったのである。
それでもイタリアは財政危機に陥った。なぜか。
それが世界経済(特に金融市場)の摩訶不思議なところで、数字や論理やファンダメンタルズ(経済活動状況を示す基礎的な要因や数値)だけでは説明ができない。
投資家や投機筋や金融機関などの思惑や、不安や、期待や、術策などが複雑にからまって動いているからだ。
つまり世界中の投資家や投機筋や金融機関が、ギリシャの財政危機を見てイタリアにも不安を持った。そのためにイタリア国債(イタリア政府の借金)に信用不安が生まれて価値が下がった。
国債は価値が下がれば金利が上がる。この上がった金利をイタリア政府は支払えないのではないか、という疑心暗鬼が生じてますます状況が悪くなる・・
簡単に言えばそういうことだ。
要するに損をしたくないという人間の感情、つまり「欲」が大きく影響してイタリア危機は生まれた。
そして、今のイタリア国民の生活の痛みを通してやがて財政収支は改善し、それを見た世界の投資家は安心して、今度は儲けたいという欲に駆られて再びイタリアへの出資を始める。
つまりイタリアを危機に陥(おとしい)れた彼らの感情、つまり「欲」が今度はイタリアを財政危機から救い上げるのである。
人間の欲って醜悪だし気持ち悪いけど、でもしたたかに面白い・・