2012年8月23日(木)午前2時。

 

暑さで目が覚めた。

 

書斎兼仕事場に行き、窓外に置いてある温度計を見た。

 

なんと28℃。

 

熱帯夜。

 

イタリアに住み始めて初の体験。

 

いや、実際には過去にもあったのかも知れないが、僕はまったく覚えていない。朝、というか夜中の2時に、暑くて目が覚めた、なんていう記憶がないのだ。

 

腹からおどろいた。


自宅は古い貴族館である。分厚い石壁や柱に支えられた家の幾つかの部屋は、真夏でもひんやりするほど涼しい。

寝室はそんな部屋の一つ。昨夜(今朝は)その部屋で暑さを感じて目が覚めたのだ。

書斎兼仕事場は建物の西側に位置する。そこは西日ががんがん当たって夏は最も暑くなる。仕事にならないのでかなり前にクーラーを取り付けた。広い家の中で唯一冷房のある場所。

家の大半は真夏でも冷房はいらない。

いや、

いらなかった。

最近は日中そこかしこの部屋で暑く感じる。本当に気候は変わったようだ。

書斎兼仕事場でクーラーを除湿に設定して、そのままベッドに横たわった。そこには簡易ベッドを置いて疲れたら横たわれるようにしてある。

横になるとすぐに窓外で白光が走った。稲光。

起きて見ると、遠いアルプスの山並みの上にテンポラーレ(豆台風)が吹き荒れている様子。

立て続けに稲光が走り雷鳴もとどろく。

どちらも遠い。でも風が起こってあたりもひんやりしだした。

温度計を見ると28℃あった気温がひと息に20℃まで下がっている。僕はこういう激しい天気の変化が大好きだ。

眠気が吹き飛んでしまった。窓際に寄って遠くのテンポラーレを見つめた。

あたりにまた風が起こり、さーっという雨の音が続いた。暗い中に目をこらしてみる。

雨は見えない。

さらに目をこらしていると、見えてきた。

ような気がした。でも実際は見えない。しかし雨は確かに降っている。かすかに。

除湿が効いてきて部屋がひんやりする。

毛布を足に掛けて横になって雨の音にじっと耳を傾けた。

雨は降っている。かすかな音だが確かに降っている。どしゃ降りになってほしい、と胸中で願ううちに眠りに落ちた。

目覚めて采園に行ってみると、土は乾いている。わずかな雨量では乾ききった土は湿り気さえ帯びない。

降った先から乾いて行ったのだ。そこでも今のイタリアの空気の乾燥が分かる。

采園の野菜たちは喘いでいる。

人間も。

イタリアは本当に燃えている・・