昨日、中国の反日デモに関して在ミラノ領事館から次のような知らせがありました。北イタリア在住の邦人全員に送られたメールです。

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「尖閣諸島国有化に反対する中国人による抗議活動」

北イタリア治安情勢通報(2012年・第10号)
~ミラノ市内における抗議活動に関する注意喚起~

 今般,尖閣諸島国有化に反対する当地中国人により,ミラノ市内において抗議活動が行われるとの情報を入手しました。実施日時・場所及び注意事項について以下のとおりお知らせします。

1.実施日時
  2012年9月18日(火)14:00~16:00の間

2.実施場所
  ミラノ市内レプッブリカ広場周辺

3.注意事項
○抗議活動が行われている場所へ近づかない
 抗議活動が予定されている当日にレプッブリカ駅及びその周辺へ出かける予定のある方は,抗議活動等が行われている場合,必ず迂回する等して抗議活動が行われている場所を避けるようお願いします。抗議活動が行われている直近を通行した場合,抗議活動参加者から罵声を浴びせられたり,暴行等不測の事態が発生する可能性もありますので,興味本位等で近づくことのないようご注意願います。

○又,当日当館に来られる予定の方は,周囲の状況に気をつけて下さい。

平成24年9月17日 
在ミラノ日本国総領事館

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華僑を始めとするイタリア在住の中国人が、ミラノの中心地の共和国広場で反日デモを行なう、という。中国人のしつこさと熱いほどの行動力にうんざりし、やがて暗澹たる思いに捉われました。

その思いは二つの理由によっています。一つは今言った中国人の行動への疎ましさ。もう一つはわが国政府の無能、つまりコミュニケーション力の欠落と外交音痴ぶりへのがっかり感、脱力感。

多くの国のメディアや専門家が指摘しているように、反日デモは中国政府筋あるいは権力筋の肝煎りで行なわれていると見るべきでしょう。海外在住の中国人にまで彼らの管理統制は及んでいると考えられる。だからミラノでも反日デモが組織化されたのです。

ミラノには華僑が集中するチャイナタウンがあります。そこは無法地帯としてイタリア人の不評を買ったりもします。チャイナタウンをミラノ郊外に丸ごと移転させようとする計画さえあります。イタリア政府は世界のあらゆる国々と同様に、中国の経済力を無視できずにかの国に擦り寄る態度もときどき見せます。

しかし、ミラノに限らずイタリア国民の多くが、中国人に不信や苛立ちを感じているのも事実です。その原因の多くは、彼らが圧倒的な人数でこの国に押し寄せているにもかかわらず、全くと言って良いほどイタリア社会に溶け込まないことにあります。

彼らの反日デモは恐らく異様な出来事としてイタリア人の目には映るでしょう。従ってそれほど心配するには及びません。しかし、それでも、デモを異様と感じたイタリア人の中には例えば、せめてデモの意味を知ろうとする者や、また何とかそれを理解しようと努力する者、あるいはそれをきっかけに日中の確執に興味を抱き始める者等々も出て来るでしょう。そうなればそれは、デモを起した中国人たちの勝利です。

我われ日本人から見れば理不尽なことが多い彼らの主張は、それらの何も知らないイタリア人たちの関心を引き、しかもその関心は中国人側のフィルターを通して形成される確率が高くなります。なぜなら主張しているのは我われではなく中国人だから。そして、そうしたことの積み重ねが、国際世論に影響を及ぼす可能性は決して低くないのです。

彼らの策動に対抗するためには、日本政府が動かなくてはなりません。騒ぎを起せ、ということではなく、中国政府と国民に毅然として相対する一方で、世界に向けて我われの真実と言い分を喧伝しなければならないのです。世界中のメディアに「金をかけて」広告や主張を掲載し、各国政府に働きかけ、政財界のあらゆる伝を使ってわが国の立場を強く申し立てていかなければなりません。つまりコミュニケーションの構築です。黙っていてはいけないのです。好むと好まざるにかかわらず、主張する者が勝つ、或いは認められる。それが国際社会です。

でも政府民主党は党首選挙でそれどころではないようですし、自民党も同じ。一体いつになったら内向きの姿勢を正して、外に向けても働きかけることのできる政権や政治家が出て来るのか疑問です。反日デモはそのうち収まるでしょうし、また収まってほしいと願いますが、領土問題だけに限らず日本が国際社会に向かって主張し対話をし続けなければならない懸案は、今後も決して無くなることはありません。これを一つのきっかけに、世界と楽に対話のできる国造りを目指し、今回の騒動もまんざら捨てたものでもなかった、と誰もが将来笑い合えるようになることを祈りたいと思います。