「渋谷君

 

イタリアのモンティ首相が辞意を表明して騒ぎになっています。そこには日本で自民党の安倍さんが、ゾンビ的復活を果たしたのに合わせるように、前首相のベルルスコーニさんが政権復帰を目指して立ち上がったことが関係しています。世界は狂っている・・

 

という趣旨のメールを君に書き送ろうと考えていたら、北朝鮮がミサイルを発射、とのニュースが世界中を駆け巡っていますね。日米韓の3国は、かの国の発射延期の陽動に見事にひっかかった訳だが、特に世界最強のアメリカのスパイ衛星とインテリジェンスが騙されたことは、けっこう深刻な問題なのではないでしょうか。

 

少し武者震いをしている昨今の日本の世論が、本格的に奮い立ち、核武装論などの強硬な意見が力を得ていくのではないか、と僕はひそかに恐れています。日本の極端な右傾化は当然良くないことですが、わが国の世論をそこに向かわせているのは、北朝鮮や中国や韓国やロシアの行動でもある訳ですから本当に困ったものです。

 

それらの国々は、日本が武に傾き過ぎて間違いを犯した過去を忘れたのでしょうか。日本の間違いによって大きな被害を受けた悲劇を思い出さないのでしょうか。再び間違いを犯さないよう自重しなければならないのは、もちろんわれわれ自身ですが、彼らにも少し自制してほしいと願わずにはいられません。

 

閑話休題。

 

イタリアのモンティ首相は財政危機のこの国を確実に健全な方向へと導いていると思います。しかし、増税の余りの大きさと性急の割りには(あるいはそのせいで)、景気の回復が遅く国民の不評を買っているのも事実。前首相のベルルスコーニさんは自らの経済失策をすっかり忘れて、ここぞとばかりに首相批判を強め、ついには次期宰相候補として名乗りを上げた訳です。

 

僕も正直に言って、モンティ首相の増税策は拙速に過ぎると思います。方向性は間違っていないが、増税額が余りにも大きく且つ取り立てが急速で激しい。

「国民が平等に痛みを分かち合う」がモットーの財政再建策は、一般の人々も富裕層も巻き込んで苛烈に進められています。こういう場合、もっとも苦しい思いをするのは例によって貧しい人々であり、富裕層は文句を言いながらも余裕はある、というのが通例でした。

しかし、今回の増税では富裕層、特に旧家や古い資産家層の疲弊が激しく、いささか様相が違っている。収税の速度と金額を少し落とさなければ、人々は持ちこたえられないのではないか、というのが多くの専門家の見方になりつつあります。

 

バラマキ財政が得意だった前首相のベルルスコーニさんは、反モンティと減税をスローガンに政権奪還を目論みそうですが、彼の真意は、政界に影響力を温存して窮地を逃れたい、というところあたりでしょう。なにしろベルルスコーニさんは、所有企業の脱税容疑や未成年者買春容疑で起訴されたりなど、多くの不徳を糾弾される身なのですから。

イタリア国民の多くはもちろん、
EU各国の国民や政治指導者たちも、呆れ顔で前首相の動向を監視しています。僕もそうした見方に同調する一人です。

 

日本の総選挙への動きも詳しく見ていますが、日本とイタリアの政界ってホントに良く似ていますね。2国とも先進国で、文化や創造性など一流の多くの優れたものに恵まれながら、政治はいつも三流。

かつて政権を投げ出した自民党の安倍さんが返り咲くのは、この国の前首相ベルルスコーニさんが甦ることと同じくらいに恥ずかしく、情けないことだ僕は思います。健康状態が良くなかった、という安倍さんの個人的な問題は百歩譲って許すとしても(一国の宰相たる者は死ぬ覚悟で仕事をするべきと僕は思いたいけれど)、あの自民党に再び政権が渡るというのは、日本の民主主義の底の浅さを如実に示すもので僕は慙愧に耐えない。

 

ならば民主党や第3極勢力の未来の党、維新の会、みんなの党などに期待するのかというと、それもあたらない。乱立するイタリアの各政党と同じで、新鮮味も真実味も政権担当能力も無いように見えます。

 

でもそうした中で、唯一期待できる政治家が日伊両国にいます。いうまでもなく僕の独断と偏見による主張であり、たぶん多くの人々が僕に賛同し、それと同じくらいにたくさんの国民の皆さんが嫌悪感を示すと思いますが。

 

まずイアタリア。消去法で考えた場合、現首相のマリオ・モンティさん以外にはこの国を財政危機から救える者はいないと思います。ベルルスコーニさんなんて論外。また次の総選挙で勝つと見られている中道左派「民主党」党首のベルサニ書記長もX.。彼は政権を取ればモンティ路線を引き継ぐと公言しているが、あまり信用できないと思います。政権奪還後は即座に、6月に不完全な形ながら成立した勤労者過保護の労働法「条項18」の改正をチャラにしてしまいかねないし、モンティ首相の進める財政改革も端折ってしまう可能性がある。

ドイツ的堅さがイタリアの柔軟に合わないきらいはあるものの、この経済危機のさ中ではやっぱりモンティ首相の継続が一番の選択ではないか。彼は辞意を表明したものの、総選挙を経て政権を継続担当する可能性も十分にあります。
 

日本の選挙戦も見ています。自民党の安倍さんに関しては前述した通り。民主党の野田さんは、政権公約を反故にするなど数々の失策に終始した党の党首というだけで、次期政権からは遠ざけられるべきでしょう。期待していた維新の会の橋下さんは、傲慢無礼な言動が見苦しい石原さんと手を組んだ時点でアウト。たとえ石原さんが総理になる器(僕はまったくそうは思いませんが)だったとしても、日本国を代表する者としては彼のお粗末な言動はいただけない。他の小党の党首たちも大同小異で今ひとつぴんと来ません。

 

そうやって消去法で残ったのが、そう、君の大嫌いなあの小沢さん!というのが僕の結論です。

 

不可解な検察審査会の強制起訴、執拗なマスコミの小沢バッシング等に僕は疑問を持ち小沢さんに同情してきました。そのこととは別に、僕は豪腕と言われる彼の政治手腕を経済、外交、安全保障などの分野で首相として十二分に発揮するところを見てみたい。特に外交ではアメリカにNOと言える政治家は日本では彼以外にはいないと思います。

 

最初は少しはアメリカとの関係がギクシャクするかも知れません。しかし、アメリカは小沢さんが反米ではないことを知っているから、筋を通してNOというべきところをNOと主張するであろう彼を、いずれはきっと尊重するに違いない。

 

小沢さんは習近平さんを始めとして中国にも幅広い人脈を持っているようです。従ってかの国との仲が冷え切っている今こそ、小沢さんが首班となって関係修復を図るべきです。これ以上中国との関係が悪化するのは、わが国にとって経済的にも安全保障上も極めて危険なことだと思います。

君が小沢さんを全く信用せず、彼の政治手腕というか、政治手法に強い嫌悪感を抱いているのは良く知っています。が、僕はこのことに関しては、友人の君と真っ向から対立する立場を取ります。
                                            それでは」