少し旧聞じみてしまったが、年初の築地市場でマグロの初競り値が1億5500万円余りと聞いて、僕はすぐにイタリアのベルルスコーニ前首相が、離婚する妻に月300万ユーロ、1日当たり約1100万円もの慰謝料を支払い続ける様を連想した。
どちらも現実離れした金額で、ちょっと面はゆい言葉ながらあえて言えば、極めて「反道徳的」だとさえ感じる。
不況と日本経済の衰退が問題視される中で、いくら宣伝効果を狙った競り値だとはいえ、マグロが1キロ約70万円、寿司にして1貫当たり4万~5万円もするなんて、どう考えても行き過ぎではないか。
同じように、イタリアの財政危機が叫ばれて国民全てが増税と政府の財政緊縮策に苦しんでいるさなかに、そのイタリア危機をもたらした張本人でもあるベルルスコーニ前首相が、離婚慰謝料として日々1千万円余りもの大金を元妻に払い続ける事態は、とても醜悪でやりきれないことのように思う。
餓死者こそ出ないものの、イタリア経済はまさにどん底の状況にあるのだ。莫大(ばくだい)な慰謝料のせめて半分は元妻ではなく、大赤字の国庫に納めろ、とベルルスコーニ前首相に言ってみたくなるほどである。
しかし、別の見方をすれば、経済不振や財政危機に苦しむ日伊両国だが、目玉が飛び出るような金額がばかげた事例に使われるほど2国は裕福であり、悠長で平和な社会であることの証だとも言える。
従って、それはもしかすると喜ぶべきことなのかもしれない、とまったく正反対のことも考えたりする年の初めだった。