1963年11月22日、ケネディ米大統領が暗殺されてから今日でちょうど半世紀です。

JFK暗殺の約3ヵ月前、1963年8月28日には、公民権運動の指導者キング牧師が歴史的な「I have a dream」演説を行ないました。

キング牧師のDreamとはまた、公民権運動を積極的に支持し人種差別に反対したケネディ大統領の夢でもありました。2人は同床異夢ならぬ同床同夢の関係にあったと言っても良いでしょう。

アメリカ合衆国は地球上でもっとも人種差別が少ない国です。

皮肉や言葉の遊びではありません。

奇をてらおうとしているのでもありません。

日本で生まれ、ロンドンに学び、ニューヨークに住んでアメリカ人と共に仕事をし、さらにイタリアから多くの国々を巡った、僕自身の実体験から導き出した結論です。

米国の人種差別が世界で一番ひどいように見えるのは、米国民が人種差別と激しく闘っているからです。問題を隠さずに話し合い、悩み、解決しようと努力をしているからです。

断固として差別に立ち向かう彼らの姿は、日々ニュースになって世界中を駆け巡って目立つために、あたかも米国が人種差別の巣窟のように見えます。

そうではなく、自由と平等と機会の均等を求めて人種差別と闘い続け、絶えず前進しているのがアメリカという国です。

長い苦しい闘争の末に勝ち取った、米国の進歩と希望の象徴が、黒人のバラック・オバマ大統領の誕生であることは言うまでもありません。

米国より先に奴隷制度を廃した英国を始めとする欧州諸国には、黒人首脳が誕生する気配すらありません。

僕の住むここイタリアに至っては、2013年現在、史上初の黒人閣僚へのあからさまな人種差別言動が問題になる有り様です。

わが日本では、外見もほとんど違わず文化習慣も近い在日韓国・朝鮮人さえ差別します。しかも差別がない振りさえします。今後、世界中からの移民が増えた時、いかなる差別社会が生まれるのか、考えただけでもぞっとします。

黒人の公民権運動に代表される米国の人種差別反対運動は、リンカーンによる奴隷解放からローザ・パークスの抵抗を経て、マルコムXに受け継がれ、キング牧師による「I have a dream」演説のうねりを介して、ついにはアメリカ初の黒人大統領の誕生という大きな歴史の転換を迎えました。

そこには差別される側の黒人に寄り添う、差別する側の多くの白人がいました。その代表の一人が、第35代合衆国大統領ジョン・F・ケネディでした。

黒人のオバマ大統領誕生までの道程では、南アフリカの人種隔離政策の撤廃と、ネルソン・マンデラ大統領の誕生という瞠目するべき出来事もありました。そうした世界の「事件」もまた、米国での黒人解放運動の影響無くしては起こり得なかったことであり、南アフリカでの変化は翻って米国の動きに追い風を送る、という相乗効果がありました。

それらの一連の歴史変革の波は、今年4月に開催されたローマ教皇選出会議にも届き、当選には至らなかったものの、ガーナ出身の黒人司教ピーター・タークソン卿が、多くの支持者を集めるという出来事ももたらしました。

世界12億人の信者を抱えるバチカンは、保守の牙城の中の牙城とも呼べる存在ですが、そこにも確実に歴史変遷の動きは到達していて、教皇の地位に史上初めてヨーロッパ人以外の人間が就くという事件がありました。それが南米出身のフランチェスコ教皇です。有色人種の教皇の誕生も間近いことでしょう。

希望の国アメリカは、人種差別も不平等も格差も依然として多い、今現在のアメリカが素晴らしいのではない。米国の開放された良識ある人々が、こうでありたいと願い、それに向かって前進しようとする「理想のアメリカ」が素晴らしいのです。

キング牧師は「理想のアメリカ」を表現し、訴え、追及した勇者でした。

ケネディ大統領は、「理想のアメリカ」を彷彿とさせる若き英雄でした。

その若き英雄の死から50年の節目に、亡き大統領令嬢のキャロラインさんが駐日大使として赴任したことを、深い感慨と共に見つめているのは僕だけでしょうか。