私はイタリアの小学生クリスティーナ・ロッシです。

 私のお父さんとお母さんはそれぞれ高校と中学の教師です。2人とも日本が好きで、お父さんは柔道を、お母さんは生け花を習っています。

 最近お父さんは、盆栽にも興味を持ち出して本やインターネットでいろいろと勉強しています。

 イタリア人の大人で日本に興味のある人はたくさんいます。でも実際に柔道の道場に通ったり、生け花の先生の指導を受けたりして、心から日本を愛している私の両親のような大人は、そんなにたくさんはいないと思います。

 なんとなく日本が好き、というだけの大人が多いのです。

 小学生の私は日本の漫画が大好きです。日本の漫画が大好きな子供はイタリアにはとっても多いです。また日本の漫画が好きな子供は、私の国に限らず世界中にたくさんいる、とこの間お父さんが言っていました。

 私は漫画だけではなく、日本の食べ物とか、日本の学校や小学生のこととか、日本の歌とか、つまり日本の文化についても、いろいろと興味を持っています。

 イタリアの学校では日本のことはあまり教えてくれないので、お父さんとお母さんに聞いたり、インターネットで調べたりします。

 最近、お父さんとお母さんは「日本の政治のじょうきょう」が心配だ、という話を良くしています。

 大みそかにたくさんのお客さんが集まった「チェノーネ」でも日本のことが話題になっていました。チェノーネとは、大みそかの夜から新年にかけて、えんえんと続けられる年越しの大食事会のことです。チェノーネでは、子供が大人にまじって夜中まで起きていても怒られません。

 その時に大人たちが話していたのは、日本のシンゾー・アベ総理が靖国神社にお参りして、中国や韓国やアメリカが怒っている、ということでした。

 イタリアを含むヨーロッパ連合も、シンゾー・アベ総理の行動そのものと、米中韓3国の反応を心配しているそうです。

 イタリアと日本は昔、ドイツも仲間になって、日独伊3国同盟を作って世界中と戦いました。それはイタリアのファシズムとドイツのナチズムと日本のミリタリズムが結託したもので、2度とあってはならないものです。

 イタリアとドイツは昔の悪と非を認めて反省し、ファシズムとナチズムを徹底的に否定しています。日本もミリタリズムを反省し、戦後はずっと平和主義で来たのですが、今になってミリタリズムが復活しそうな勢いになっています。

 それは、イタリアやドイツと違って、昔の間違いを認めようとしない日本人が少なからずいて、しかもその人たちが大きな顔をしているために起きているのだそうです。

 イタリアにもファシズムを信じている悪い人がいます。でも圧倒的多数のイタリア人が強い気持ちで彼らに対抗するため、彼らは大きな顔をすることはできません。だからファシズムの復活もありえません。ドイツのナチズムもイタリアのファシズムと同じじょうきょうです。

 昔の間違いを認めようとしない悪い日本人の1人がシンゾー・アベ総理大臣です。

 お父さんとお母さんは、日本人のりょうしきと良心を信じているので、悪いシンゾー・アベ総理がいても、かしこい日本の人たちはきっとミリタリズムを許さないだろうと言っています。

 私も大好きな日本が、ミリタリズムに支配されて世界から嫌われないように、と祈っています。

 シンゾー・アベ総理とは逆に、有名な良い日本人もいます。 

それは私の好きなサッカーチーム、ミランに入団したケイスケ・ホンダです。ケイスケは世界くっしのプロサッカーチーム、ミランに初めて入団した日本人選手です。ミランが獲得したくらいですから、それだけでただ者ではない選手だと分ります。

 ケイスケはサッカーのプレイ以外でもただ者ではないことを見せつけました。それは彼のファッションです。サングラスを掛けたまま記者会見に臨んだケイスケは、マブシクないのになぜサングラスを?と聞かれて「これは僕のファッションさ」と答えました。

 その答えにはイタリア中があっけにとられて、やがてみんなクスクス笑いました。それはYAKUZAファッションだからです。YAKUZAとは日本のマフィアのことです。

 普通ならそんな格好をする人はバカにされ軽蔑されるところですが、ケイスケは堂々としたそのひと言ですっかりイタリア人に愛されてしまいました。シンパーティコ、つまり面白い男、と評価されたのです。シンパーティコというのは、イタリア人が誰かをほめるときにもっともひんぱんに使う言葉です。

 ケイスケは昨日、イタリアのプロサッカーリーグ・セリエAの試合でデビューしました。ミランは負け、ケイスケも後半の25分をプレイしただけですが、なんと辛口のイタリアのスポーツ紙が「ベスト・プレイヤー」と評価する活躍を早速見せてくれました。

 ケイスケへの期待は大きく高まって、同時に日本や日本人への関心もふくれあがっています。

 それはシンゾー・アベ総理のような悪い噂ではなく、とても良い噂ですから、ケイスケ・ホンダはやっぱり良い日本人です。