W杯準決勝でアルゼンチンに敗れたオランダのヴァン・ハール監督は、3位決定戦は無いほうが良い、という考え方のようだ。僕は彼に半ば賛成、半ば反対の中途半端な立場である。
賛成は、W杯の大舞台で4強に入ったチーム、つまり準決勝まで戦ったチームには、3、4位の順番付けなど要らないのではないか、と思うから。 夏の高校野球でも順位付けは優勝と準優勝だけだ。それ以外は4強、8強、16強などとまとめる。その方が勝ち進んだチームの全てを讃える感じがあって良いように思う。3、4位があるなら、5位も6位もそれ以下も順位付けをしなければ理屈に合わない。
優勝を目指して全力を尽くした準決勝敗退の2チームに、果たして3、4位決定戦を戦う十分な動機付けがあるか、という疑問もある。W杯の頂点を目指すことと3位を目指すことの間には、意欲という意味では大きな落差があるのではないか、ということなどもヴァン・ハール監督を支持する理由だ。
逆に3位決定戦もあった方が良いと考えるのは、純粋に1人のサッカー・ファンとして、W杯4強にまで残ったチームの試合を一つでも多く見ていたいから。出場する選手には決勝戦に臨むほどの熱い気持ちは無くても、ピッチに立てば相手のあることだから彼らはやはりそれなりに燃えて、勝ちに行こうとして面白い試合展開になる。過去の例がそれを証明している。
準決勝で苦杯をなめたチームに敗者復活戦にも似たチャンスを与える、という意味合いからも3位決定戦に賛成したい。 準決勝でドイツにコテンパンにやられたブラジルのスコラーリ監督は、オランダのヴァン・ハール監督とは逆に、3位決定戦で少しでも名誉回復を試みたい、という趣旨の発言をしている。そういう監督や選手の思いに応えることも重要ではないか。
特に今回のブラジルの場合には、オランダとの最終戦に勝って3位を確保することは、見た目以上に重要なイベントになるかもしれない。 7-1とドイツの前に激烈壊滅をしてしまったブラジルは、国民から手ひどいバッシングを受けている。それに便乗するように、もう一つのサッカー狂国ここイタリアでも、ブラジルの大敗をまるでこの世の終わりでもあるかのように各メディアが分析し、批判し、揶揄し、断罪し、これでもかこれでもかと騒ぎ立てている。
彼らは世界最強と讃えられたブラジルが地に落ちたのが面白くてたまらないのだ。しばらくすれば騒ぎは収まるだろうが、ブラジルサッカーを貶めるような内外のメディアの度を越した激しいバッシングは、真にブラジルチームを傷つけ打撃を与えて、彼らを2度と立ち上がれなくするかもしれない。そこまではいかなくとも、華やかで大らかで楽しくて強い魅惑的なブラジルサッカーの復活を、大幅に遅らせてしまう可能性は高い。
サッカーは大好きだが「たかがサッカー。されど、たかがサッカー」という気持ちでいる僕の目には、世界のメディアのブラジル叩きは異様だ。彼らを黙らせるためにも、ブラジルのスコラーリ監督と選手たちは3位決定戦に真剣な気持ちで臨み、世界が目を見張るようなパフォーマンスを繰り広げて、さっさと失地回復を済ませてほしいと心から思う。