1年収めの大相撲九州場所が終わって1週間が過ぎた。九州場所の結果を基本に、しかし平成26年度全体を振り返って、独断と偏見をもって上位力士の2年後の予想番付け表を作ってみた。同時に九州場所の少しの解説と評論も。そうすることで大相撲の現在を掘り下げて見てみたい、というのが目的であるのは言うまでもない。

これは相撲が大好きな1相撲ファンの勝手な思いだから、読者の中には贔屓の力士をけなされて気を悪くする人がいるかもしれない。でも贔屓力士がいるということは、その人もきっと僕と同じ相撲大好き人間だろうと思う。それはつまり、大相撲の発展を願うという意味ではわれわれは同志、ということである。そこに免じてもしも無礼があればお許しを願いたい。

なお、横綱及び3役には同地位のうちの格下の者、いわゆる張出(今は使われていない)を設けてみた。また、予想番付け表では期待と失望を込めて、昇格ばかりではなく降格のケースも列記してみた。
 
【2014年九州場所の実際の番付け】

東横綱-白鵬      西横綱-鶴竜       張出横綱-日馬富士    
東大関-琴奨菊     西大関-稀勢の里      張出大関-豪栄道    
東関脇-碧山      西関脇-逸ノ城       張出関脇-不在
東小結-豪風       西小結-勢         張出小結-不在
 

【2016年九州場所の予想番付け】 ※横綱も格下げの対象とした場合

東横綱-逸ノ城    西横綱-白鵬      張出横綱-照ノ富士      

東大関-栃の心    西大関-稀勢里      張出大関-日馬富士   

東関脇-妙義龍    西関脇-鶴竜       張出関脇-高安 

東小結-碧山      西小結-千代鳳     張出小結-蒼国来
 
東前頭1 - 大砂嵐         西前頭1 - 遠藤

東前頭2 - 豪栄道         西前頭2 - 琴奨菊


横綱について:
白鵬の32回優勝は言うまでも無く凄い。素晴らしい。ただ彼だけが抜きん出ていて、且ついつもの結果で僕の心は盛り上がらなかった。1人横綱時代を含めて、他の力士が不甲斐ないから次々と大記録を打ち立てている、という側面はないのだろうか。決して白鵬の偉大にケチをつけたいからではなく・・。

日馬富士には「相撲をナメンナよ」と、余計なお世話の苦言を呈したい。綱を張りながら大学に通うオチャラケのことだ。そんな暇があったらもっと稽古をし鍛錬し修行して横綱の責を果たしてほしい。大学に通うという立派な心がけは、引退後で十分ではないか。大学に通って人間を磨きたい、という言いもまた立派だが、現役横綱がやることではない。今は横綱道にまい進してこそ人間が磨かれると考える。本末転倒だ。

鶴竜の人格は随一だが、引き技ばっかりみたいな横綱では、優勝どころか常勝さえ難しい雰囲気である。彼の横綱昇進は拙速だったというのが僕の意見だった。が、今は確信になりつつある。この不安をくつがえしてほしいと強く思うが、どこかで化けない限り今のままでは厳しいだろう。横綱も降格される規定があるとすれば、彼は大関も通り越して万年関脇あたりにいた方がいい。関脇が強いと大相撲が面白くなるから、鶴竜はそこで毎場所大暴れして相撲全体を盛り上げたらどうか。

将来の横綱候補は逸ノ城、照ノ富士、栃ノ心:
九州場所最高の見せ場は、 逸ノ城VS照ノ富士戦だった。2人は千秋楽でぶつかり、2分12秒の大相撲の末に照ノ富士が勝った。ケガなどのアクシデントが無ければ、2力士は今後横綱にまで駆け上がって、繰り返し九州場所のような戦いをするだろう。

逸ノ城が大騒ぎをされているが、僕はずっと照ノ富士にも注目していた。どこから見ても大器の雰囲気を発散していたからだ。そこに怪物逸ノ城が彗星の如く現れて、少しダレかけていた照ノ富士の闘争心に再び火が点いたように見える。2人は来年中に大関、あるいはどちらかは横綱にまで駆け上がる可能性さえあると思う。

栃ノ心にも僕は注目してきた。なぜか。四つ相撲を目指す彼の取り口の型もさることながら、像みたいな巨大な尻が将来の横綱級だとずっと思っていたからだ。相撲の親方衆は若者をスカウトしようとするとき、尻の形や大きさに注目する。大きな尻は相撲の基本中の基本である下半身の強さを示唆するからだ。栃ノ心はそれを備えている。

ケガから復活した栃ノ心を横綱候補に挙げたのは、自分の希望的観測もからんでいる。僕は早く欧州出身の横綱が誕生することを願っている。欧州に居を構える者としての、単純な欧州人力士贔屓とは別に、欧州出身の横綱が出ればここでの相撲人気がまた高まって、さらに多くの才能ある若者が大相撲を目指すと考えるからだ。琴欧州、把瑠都の欧州出身大関が引退した今、最も横綱に近いのは栃ノ心だ。碧山も力をつけているが、押し相撲である分安定性に欠けるから、大関、また綱取りレースでは、四つ相撲の栃ノ心に分がありそうだ。

将来の大関候補について:
上からの降格組の日馬富士に加えて、日本人力士を含む5人を大関候補として三役の地位に据えてみた。碧山  妙義龍  高安 千代鳳  蒼国来である。 ここに遠藤を入れたいのは山々だが、彼は立会いの当たりを磨いて厳しさと重厚さを獲得しない限り、小手先の相撲が上手いだけの力士で終わるだろう。そうなると平幕上位から小結、関脇あたりを常時往復することになる。しかし、例えば大きな 碧山などを立会いの当たりで粉砕するくらいの力強さを身につければ、大関も超えて久しぶりの日本人横綱誕生もあり得る、と希望的観測を込めて付け加えておきたい。

礼儀作法について:
白鵬が賞金を受け取って、それを振り回す仕草は醜い。中に大金が入っているから嬉しいぜ、という気持ちは分かるが、静かにありがたく受け取って、横綱の品格の片鱗を見せてほしい。鼻や口を歪めて示威行為をするのもなんだかなァ・・せっかく日本人の素晴らしい嫁さんをもらって、多分彼女の大きな努力もあって日本人の心を理解し、それに染まろうと努力している苦労が水の泡になりかねない。

賞金なんかいらねぇが、ま、くれるんならもらっておいてやるよ、という安美錦の手刀の切り方は、飄ひょうとした彼のキャラが出ていて面白い。少なくとも白鵬よりよっぽど醜くない。

戦いの後の辞儀の姿は、外国人力士の碧山と魁聖が横綱級。自然体で頭を下げる角度も好ましい。辞儀は顎を引くだけという安美錦も、ここでは他の力士に率先して2人の外国人力士を見習うべきだ。九州場所は姿が見えなかったが、豊真将の120度か?と見えるほどに深々と頭を下げる辞儀は、大げさ過ぎて逆に少し滑稽だと思う。なんとか自然体で行けないものだろうか。

最後に、取ってつけたようにNHKの大相撲解説者の番付も書いておくことにした。その理由は、今ここで書いておかないと、一体どこでいつ書くんだ?という訳で。

NHK大相撲解説者番付:

東横綱 - 北の富士勝昭   西横綱 - 不在

大関 - 九重親方 

小結 - 舞の海  琴欧州

平幕 - 貴乃花親方を除く全員

序の口 - 貴乃花親方

貴乃花親方は、テレビの解説者席などに座ってはいけない。元「天才ガチンコ横綱」のままでいるべきだ。解説者として登場するたびに、過去の栄光に傷をつ けてしまっている。解説者の資質、つまりシャベリの能力はほぼゼロだということにNHKも気づいて、どうやら彼を呼ばない方向でいるらしいのは喜ばしいことだ。

琴欧州親方は、引退直後の今年5月場所の6日目に、NHK大相撲中継の解説者として放送席に座った。それには現役を引退したばかりの彼への慰労の意味合いもあっただろう。ヨーロッパ人初の大関、そして ヨーロッパ人初の親方へ、という経歴への物珍しさもあっただろう。また、NHKとしては彼に解説者としての資質があるかどうかを試す意味合いもあっただろ う。あるいは解説者としての資質ありと見抜いていて、実際に力量を測ろうとしたのかもしれない。

結論を先に言うと、琴欧州は僕がいつも感 じてきたように、人柄が良くて謙虚で礼儀正しいりっぱな元大関だった。そして解説者としても間違いなくうまくやっていけると思った。その後九州場所を含めて彼は何度かNHKの解説者席に座った。現在のNHKの大相撲中継の解説者は、前述したように北の富士勝昭さんが最上、貴乃花親方が最低、という図式だが、琴欧州親方は既に中の上くらいの力量があると僕は感じている。

多くの日本人親方を差し置いて彼を番付で小結に格付けしたのは、僕からのご祝儀の意味合いももちろんある。だがそればかりではなく、通り一遍のことしか言わない(言えない)解説者群の中にあって、ちょっと相撲にうるさい人々も頷く視点での意見開陳ができる実力をも考慮してのことである。