書こうと思いつつ優先順位が理由でまだ書けず、あるいは他の事案で忙しくて執筆そのものができずに後回しにしている時事ネタは多い。僕にとってはそれらは「書きそびれた」過去形のテーマではなく、現在進行形の事柄である。過去形のトピックも現在進行形の話題もできれば将来どこかで掘り下げて言及したいと思う。その意味合いで、例によってそれぞれをここに短く書きとめておくことにした。


吼える伊レンツィ首相

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メルケル母ちゃんとその最愛の息子

イタリアの若きレンツィ首相が燃えている。あらゆる機会を捉えて、EUの政策に噛み付いているのだ。それはこんな感じ=《難民問題を含む多くの懸案をアンゲラとフランソワの2人が、2人だけで解決できるなら僕は大いにハッピーだ。でも事態はそんな風には動いていない。僕ちゃんも仲間に入れて、皆んなで問題解決にまい進しよう!》と。アンゲラとはドイツのメルケル首相、フランソワとはフランスのオランド大統領のことだ。先進国の中ではいつもミソっかすな扱いをされてきたイタリアは、スケベでド阿呆なベルルスコーニ元首相のおかげで、近年はさらに評判を落として影が薄い。レンツィ首相はそのことにも腹を立てているらしい。イタリアの地位向上に情熱を燃やす彼は、ジョーク好きらがメルケルさんと自分を並べて『メルケル母ちゃんとその最愛の息子』とからかうほど仲の良いドイツ首相にさえ、大いに文句を言い続けている。僕は放っておけばいいのに、と思う。イタリアが英独仏の真似をして何になる。1番なんか目指さなくていい。イタリアは2番手3番手4番手、それどころか8番手9番手くらいであまり責任も負わずに好き勝手にやっているほうが面白いし美しいしステキだ、と僕などは思うのだけれど・・

BMW・アウディvsランボルギーニ

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スーパー・パトカー“ランボルギーニ”

エンジンをパワーアップした黄色のアウディが、ミラノ-ベニス-東欧に至るA4高速道を疾駆しまくって問題になった。高速道路を逆走するなどの暴挙を冒す車両を警察はスーパーカーのランボルギーニで追跡。しかし捕まえられず暴走アウディは最後には炎上、黒焦げになった・・・というのは半ば嘘。というのも警察はランボルギーニは投入しておらず、アウディがどうやって炎上したのかも分かっていない。アウディはスイスナンバーの車で昨年12月にミラノマルペンサ空港で盗まれたもの。またイタリア警察は2台のランボルギーニを実際に所持していて、スーパーパトカーは時速350キロで走行できる。アウディはせいぜい時速250キロまでと見られているから、ランボルギーニで追えばあるいは捕まえられたかも。ところがこの話はそこでは終わらない。今度は黒のBMWが高速に入り込んでアウディと同じ横暴を始めたのだ。防犯カメラで捕らえられた犯人の正体は分からないが、アウディの時と同様にアルバニアなどの東ヨーロッパ出身者と見られている。BMWはパトカー(多分アルファロメオの改造パワーアップ版)に追い詰められ、犯人らはガードレールを超えて逃亡。残された車の中には拳銃や爆発物などと共に自動小銃のカラシニコフも残されていた。強盗団というのが警察の見立て。事件は前述した高速4号線の東部(僕もしょっちゅう走っている)で発生し続けている。次にはおそらく警察によるランボルギーニの投入もあるだろう。不謹慎ながらカーチェイスをちょっと見てみたい。

Affittopoli家賃をめぐるスキャンダル汚職都市
先日ローマでは、それぞれが500軒以上のマンションを所有する1657人のオーナーらが、一切税金を払っていないことが明らかになった。その中には
1243軒ものマンションを所有する脱税常習犯の女もいた。そのローマで今度は、ローマ市が所有するおびただしい数のマンションやビルで、タダかほとんどタダに近い家賃で長年住んでいる人々の存在が明らかになった。彼らはローマ市職員の友人や知人で、知り合いであることを理由に家賃をごまかしてもらう恩恵を受けていた。コロッセオや大統領府やトレビの泉などに近い一等地で、広いマンション一軒の家賃が月千円前後はまだ増しな方、ほとんど無料というケースが多々あり、ローマ市の家賃収入の損失は年間1億ユーロ(約130億円)は下らないだろうと試算されている。この事件は間もなくベニスやナポリなどの観光地にも飛び火した。おそらくイタリア全土で同様の無体が繰り広げられていると見られている。

IS並みに危険なエジプト独裁政権~英ケンブリッジ大学のイタリア人学生は誰に殺されたのか

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殺害されたケンブリッジ大学院生ジュリオ・レジェーニさん

英国ケンブリッジ大学の博士課程で学ぶイタリア人学生、ジュリオ・レジェーニさん(28)は、論文を書くために大学から送られてエジプトのカイロで同国の経済について研究していた。彼は2016年1月25日、家を出たまま行方が知れなくなった。その日はちょうど、30年に渡って同国を支配したムバラク独裁政権が、民衆の蜂起で倒れた5周年記念日に当たっていた。それから9日後、彼はカイロ市内の排水溝で遺体で発見された。レジェーニさんは博士論文を書くために同地の大学に在籍していたが、研究を続けながらイタリアの左翼系日刊紙「イル・マニフェスト」にも記事を書いていた。彼は行方不明になる直前エジプト労働組合に関する記事を同紙に書き送っていたが、それは偽名(ペンネーム)で書かれた。彼はそれを発表することで身の危険を感じたからだという。彼の殺害にその辺の事情がからんでいる、と多くの人々が考えている。レジェーニさんは記事の中でエジプトの軍政権の横暴を批判し、100名を超える労働組合員が集合して活発な抵抗集会を持った、と記した。彼らはエジプト革命が起きたタハリール広場で抗議デモを行う計画だ、などとも書いていた。アラブの春で独裁政権が倒れたものの、民主政権は再び軍政に変わってエジプトの民主化は夢物語になった。今はISと何も違わないほどの軍による圧政が続いている。イタリア人学生の殺害は軍政権によるものである可能性が高い。

琴奨菊はモンゴル人でもハワイ人でも誰でもいいノラ!
琴奨菊の優勝を機に、相撲などまったく見ないかほとんど見ないらしい人たちが、民族主義的ニュアンスがぷんぷん臭うコメントを開陳したりていて、相撲好きの僕はちょっと違和感を覚えている。琴奨菊の優勝は素晴らしいの一言につきた。彼が日本人力士だからではない。クンロク大関という蔑称も真っ青なくらいのつまらない大関だったのが、見事に「化けて」強く面白いパフォーマンスを見せてくれたからだ。大相撲はどこにでもあるスポーツではなく、日本独自の「スポーツ儀式」だから面白く楽しい。また土俵上で戦う力士の国籍はどこでもいい。力士が日本人だから面白いわけではない。飽くまでも力士が強いから面白いのである。大相撲の競技を語ることと大相撲界の変化、具体的に言えば国際化、を語ることは分けてなされるべきである。なぜなら競技においては強い力士と弱い力士がいるだけで、その力士がモンゴル人か日本人かアメリカ人かなんて関係がない。関係があると思っている人は、純粋に競技を楽しんでいるのではなく、政治の眼鏡をかけて土俵を見ているに過ぎない。つまり本当に相撲が好きな相撲ファンではないように思う。

カナダのンドランゲッタBOSSの禁欲生活

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殺害されたカナダの“ンドランゲッタ”ボス、ロッコ・ジート

カナダのトロントで87歳になるマフィアのボスが頭に銃弾を撃ち込まれて死亡した。正確に言えば、マフィアのボスではなく“ンドランゲッタ”のボスである。カナダのマスコミはイタリア以外の全ての国のマスコミと同様に ンドランゲッタをマフィアと呼んでいる。僕はそのことへの違和感と同時に、死んだボスが凶悪な犯罪者とは思えない質素で穏やかで全く目立たない生活をしていた、とほとんど感動にも近いニュアンスで報道されていることに、違和感を通り越して呆れた。凶悪犯が質素で目立たない生活スタイルを押し通すのは当たり前だ。逃亡犯と同じで彼ら犯罪者は人目を引かない言動を押し通す。そうやってたとえばシチリアのマフィアの大ボス、トト・リイナは20年以上も官憲を欺き続け、もう一人の大ボス、ベルナルド・プロヴェンツァーノは43年間も誰にも見つからずに逃げ続けた。時には妻子さえ引き連れて。もっともそこには逃亡潜伏先がシチリア島の州都パレルモという特殊事情があった。


EUは壊れるのか
EU(欧州連合)内の人とモノの行き来を自由にしたシェンゲン協定が揺らいでいる。1990年発効したEUの真髄ともいえるこの協定のおかげで欧州統合は現実味を帯びたものになり、参加国も確実に増えて欧州は紆余曲折を経ながらも発展を続けてきた。ヨーロッパに押し寄せる中東難民が、旅券なしでの自由な往来を利してドイツなどの富裕国に集中し、パリ同時多発テロの実行犯らが難民にまぎれて欧州を横行するのではないかという不安が増大。そこにアフリカや中東からの移民と見られる男たちのドイツ・ケルンにおける昨年大みそかの集団性暴行事件なども加わって、EU参加国の中に協定への疑問が沸き起こった。シェンゲン協定は、「例外的な状況」下での参加国による国境での入国審査の再導入を認めている。この例外規定を利用して、最近ドイツ、オーストリア、フランス、デンマーク、スウェーデン、さらにEU非加盟ながら協定には参加しているノルウェーが、半年の期限付きで入国審査を再導入した。それは5月に期限を迎えるが、2年間に限って延長するかどうかが議論されている。入国審査の再導入とは、EUが高らかに謳い上げてきた欧州の一体性という基本理念の放棄を意味する。欧州は一体化することで自由と繁栄を謳歌できる。その原動力であり象徴でもあるのがシェンゲン協定である。欧州は今まさにそのシェンゲンの栄光が雲散霧消しかねい危機に見舞われている。

イタリアの燃える夏2015

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イタリアの暑さで溶け出したとされるルノー車

昨年の7月は過去4000年間で最も暑い7月だったと、アメリカの海洋大気庁が正式に発表した。計器などによる観測データは過去およそ130年分しか存在しない。なのになぜ日本なら縄文時代にまで遡る過去の7月の気温が分かるかというと、木の年輪や珊瑚や氷河等の氷の核などを調べることで、さまざまなデータから確認が取れたのである。ここイタリアももちろんチョー猛暑な7月だった。そんな折、あまりの暑さのためにイタリアでは車が溶けた、と称して車の塗装がぐちゃぐちゃに溶ける様子を撮影した映像がネットに流れた。いくら暑くても車が溶けるなんてありえない。それは明らかにガセネタだった。その証拠に動画は間もなく削除された。写真は今も残っているようだ。そのことについては僕はfacebookでもちらと言及した。異常な暑さにからませたそのガセネタ(と思う)はネットにおける典型的な危険の一つと僕には見えるので、当時そのことについて書き始めた。が、ばたばたしているうちに時間が経ち季節が移って時機を逃してしまった。でも一度きちんと書いておきたいと思う。危険情報のうちでも、思い違いを起こさせる類の嘘、という程度のあまり罪のない危険情報だが、そんな危険がネットにはあふれているのでやはり気をつけるべきだと強く思うのだ。