門ベルギーカラー

ベルギーのテロは米大統領候補のトランプ氏に資するだろう。さらに多くの無防備な人々がテロを恐れ、テロリストを憎み、テロリストとイスラム教徒を結びつけて考えてしまうからだ。

それはテロリストの思う壺だ。欧州も世界もここが踏ん張りどころだ。ここで心が折れてしまうと、世界は分断され、憎しみと疑惑と恐怖が支配するだけの、ISの願う通りの世の中になりかねない。

トランプさんが期待する事件、というのは言い過ぎだろうが、彼が「ほら見ろ、俺の言うとおりだろう」と、ドヤ顔でさらに息巻くかもしれない事件が相次いで起こっている。

悪運の強い男、と規定してしまえばあまりにも主観的嫌悪感に満ちた表現、と眉をひそめられそうだから、トランプさんは強運の持ち主らしい、と言おう。

彼のビジネスマンとしての成功を見れば、トランプさんが強運にも恵まれているのは明らかだ。それに加えて、彼が政治的にも強運の持ち主ならば、事態は深刻だ。

頻発するテロや事件は、もしかするとトランプさんの主張の正しさを担保するものではないか、とわれわれが考えるとき、自由な世界の終焉が始まるかもしれない。

ベルギーテロに関連して、彼は「ISを核兵器で攻撃することも辞さない」と宣言した。トランプさんが“米国大統領の立場なら”という前置きでしゃべっていることを考えれば、それはいつものムチャクチャな、笑い話の世界だ。

だが、政策とさえ呼べない、北朝鮮の将軍様然としたそんなタワゴトを、彼の多くの支持者が喜んで気勢を上げる図は、まことに奇怪、危険、且つおそろしい。

さらにトランプさん自身が“大統領になったらそうする”と本気で考えているらしい事態は、もっとさらに奇奇怪怪、危うさもお粗末もここに極まれり、というところではないか。

僕はどうやらトランプさんに魅せられてしまって、彼の一言一句に神経質に反応する大げさで珍妙な、且つある種の人々が見れば不愉快で許しがたい心理状態になっているようだ。

ならば僕は、彼が大統領選で自爆し消滅するまで、彼に魅せられ続けようと思う。そして「アメリカよ、早く目を覚まして“トランプNO!”と叫んでくれ」と、言い続けようと思う。