投票日まで一週間を切ったのに米大統領選の行方は全くわからない。
トランプさんの猥褻女性スキャンダルで勝負あった、と見えたのに、ヒラリーさんの引き離しはそれほど強くなく、トランプさんが強いのかヒラリーさんが弱いのか、といぶかるうちに又もやメール問題が再燃して、ヒラリーさんは青息吐息。
各種データを見ると、あれだけの女性蔑視、猥褻問題が表に出たにもかかわらず、共和党の白人女性有権者の間では、トランプ候補の方がヒラリー候補よりも支持率が高い。
それはとてもおどろきだ。あの卑猥極まる女性虐待スキャンダルは、さすがにどの人種でもどんな階層の女性であっても、皆が「許せない」と憤る事案ではないか、と思う。
それでも多くの女性がまだトランプ候補を支持するのは、つまり、翻って、彼女たちにとってはヒラリー候補がそれだけ嫌な存在、ということなのだろう。
僕はヒラリーさんに当選してほしいが、同じ女性たちにかくも嫌われるヒラリー候補とは一体なんだろう、と首を傾げざるを得ない。
彼女のちょっと威張り気味の物言いや、体制主流派内を泳ぎ続けた汚れや、従って新味の無さ、などという欠点を差し引いても、である。
また、トランプ支持者は「白人の低所得労働者階級」という一般的な見方に反するように、低所得者層は相対的にヒラリー支持が多い、などのデータも出回っている。
そればかりではない。あれだけトランプさんに攻撃されたヒスッパニックの人々も、およそ3人に1人はトランプ支持、という分析もあるのだ。
ひと口にヒスパニックといっても、大きく分けてメキシコ系とキューバ系の人々に分かれる。このうちキューバ系の多くの人々が、トランプ支持に回ると見られるためにそんな数字が飛び出す。
イタリア時間11月2日の午後の時点では、激しく追い上げるトランプ候補とヒラリー候補の差はわずか2ポイント余り。しかも勢いは前者にある。
今の様子ではどちらが勝ってもおかしくない。いや、多分トランプ候補に分があるのではないか。
僕は、前述したように、ヒラリー候補に勝ってほしい、と一貫して思っている。積極的に彼女を支持するからではない。
トランプさんが米大統領を目指す男にしては人格も政策もあまりにもひどい、と僕の目には映るため、彼に比べた場合は、彼女がまだまし、と思うからだ。
消去法による支持、という消極的な支持ではあるが、支持は支持だ。だが今日この時点では、彼女の形勢は不利のように見える。
しかし、悲観はしていない。トランプ候補有利の空気に危機感を抱いた彼女の支持者たちが、11月8日には大挙して投票所に向かう可能性があるからだ。
特にヒラリー候補を支持している若年層は、日本と同じで米国でも投票率が低い。彼らが多く投票すればトランプ氏よりもヒラリー候補に有利に働くだろう。
全く逆もあり得る。6日間の間に事態が二転三転して、危機感を抱いたトランプ支持者らが大挙して投票所に向かい、最終的にトランプ候補が勝利するケースだ。
全きチキンレースは面白いと言えば面白いのかもしれないが、トランプ大統領の誕生はここ欧州にも日本にも悪影響を及ぼすと考える僕は、息をひそめて見守っている、というのが正直なところだ。