九州場所では豪栄道が5連勝している間、相撲に関するブログ記事を書かないように気を遣っていた。彼の快進撃を応援したとたんにコケるのではないか、と心配したからだ。サッカーでは僕がひいきのイタリアナショナルチームにエールを送る記事を書いた先から負ける、ということがよくある。僕は豪栄道にそんな不運を贈りたくなかった。

6日目に玉鷲に敗れたときは、玉鷲のマグレ勝ちなのであり豪栄道には罪はない、と無理に思い込んだ。翌日、豪栄道は魁聖を破って僕の気持ちに応えてくれた。ところが次の日は隠岐の海に負けた。僕の気持ちは落ち込んだ。しかし、最終的に13勝2敗で優勝なら、横綱昇進も十分にあり得ると自分の気持ちを一生懸命に鼓舞した。13勝2敗での優勝とは、翌日以降の対戦相手になる全ての横綱と大関を蹴散らしての優勝ということなのだ。

ところが、その翌日には大関の稀勢の里に完敗。情けない結末。見事なものだ。いつも通りの日本人力士の体たらく。僕は腹立ちを隠して、ツーかもう呆れて記事どころの気分ではなかった。うんざりしながらも、若手の活躍や鶴竜の頑張り、そしてふと気づくと稀勢の里の綱取り再開の足固め、みたいな様相を呈し始めた取り組みを結構楽しみながら観戦したりしていた。

豪栄道は結局また元の木阿弥のクンロク君。彼のファンの皆さんには申し訳ないが、そして大相撲が大好きなファンの立場から敢えて言わせてもらうが、豪栄道は横綱を目指すのではなく「名大関」を夢見て精進した方がいい。かつては清国も貴ノ花も小錦らも、そして幕内優勝5回を誇る魁皇でさえも横綱になれなかった。悪いが大関の地位を守るだけでも精一杯の豪栄道が、横綱なんて10年早いのだ。

そんなわけで今場所12勝を挙げて、来場所は綱取り準備の重要な場所になるかもしれない稀勢の里に期待し、さらに若手の正代、勝ち越しはならなかったものの遠藤、また膝のケガさえ治ればすぐに横綱になるであろう照ノ富士、加えて遅まきながら「化けた」可能性のある鶴竜と玉鷲らに期待したい。

ひとつ確認しておきたいのは、稀勢の里に期待するのは彼が日本人だからではない。横綱になれる器だと思うからだ。日本人だからという思いで、弱い豪栄道を心中でひそかに応援し続けた今場所の愚は再び起こさないでおこう、と僕は強く肝に銘じた。相撲取りというのはベテランも若手も、強い力士が見ていて面白いのであり、彼が日本人か否かはやはり関係がないとあらためて思う。