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イタリア民主党が分裂した。欧州で近く行われる選挙でフランス“国民戦線”、オランダ“自由党”、ドイツ“独の選択肢”などの極右勢力の躍進を暗示するような、残念な出来事である。

それというのもEU(欧州連合)支持の民主党が弱体化することで、イタリアの反ユーロ・ポピュリスト政党「五つ星運動」と、脱EU派で極右の「北部同盟」がさらに勢力を伸ばしそうだからだ。

民主党の分裂は、マッテオ・レンツィ前首相の野望と独善と権力欲に、対立勢力の愚直と視野狭窄と嫉妬がからんだ、民主党お得意の救いようのない言い争い体質ゆえの結果だ。

レンツィ氏は昨年12月、憲法改正を問う国民投票で敗れて首相を辞任。彼の内閣の外相だったジェンティローニ氏が首相に昇格した。

レンツィ氏は首相辞任後も政権与党である民主党の党首に留まり続けたが、党内での統率力には強い疑問符が付いて回っていた。

彼は2013年、民主党内の極左勢力を抑えて実権を握った。しかし、党内での内紛は絶えなかった。それでも前首相は、4月に予定されている民主党党首選で再び勝利すると見られている。

党首に再選された暁には、できるだけ早い時期に前倒し総選挙を行って、首相に返り咲きたい、というのが彼の野望である。

民主党と袂を分かつグループは、下院の任期満了(2018年)まではジェンティローニ首相の続投を支持するべき、と主張して前首相の野望に強く反発した。

反レンツィ派のリーダーはベルサーニ元民主党党首。党を割って出た後は新党を結成し、ジェンティローニ政権を支持し続けると見られている。

分裂直後の世論調査によると、民主党は2、3%の支持を即座に失った。それによって支持率は28、1%に落ち、最大野党の五つ星運動の支持率27,8%とほぼ同じになった。

ベルサーニ派は最終的には5%~8%の支持を得ると見られている。それが現実になれば、民主党は五つ星運動に支持率で逆転される可能性が極めて高くなる。

民主党の分裂によってイタリア国民の政治不信はさらに高まるだろう。それは前述したようにユーロからの離脱を主張する五つ星運動や、反EUで極右の北部同盟の躍進を呼びかねない。

最大EU支持派の民主党が弱体化すれば、イタリアのトランプ主義勢力が勢いづくことは確実であり、それは同国のみならず欧州全体の憂事である。