英国のEU離脱(Brexit)、米トランプ大統領誕生、伊国民投票につづいて、欧州のポピュリズム(大衆迎合主義)がさらに勢いを増すきっかけになりかねないオランダ下院選(定数150)が15日に実施される。

ウィルダース党首が率いる極右政党の躍進は間違いないとされ、焦点は極右の自由党(PVV)が第一党になるかどうか。

事前の世論調査では、政権与党の自由民主党(VVD)がわずかにリードしているとされるが、予断はまったく許さない。

自由党は反イスラム、反EU(欧州連合)を旗印にして、米トランプ政権や仏極右の国民戦線、またここイタリアの極右、北部同盟などと連携している。

ウィルダース氏の自由党はたとえ第1党になっても政権を握ることはない。なぜなら他のどの党も自由党との連立には参加しないことが確実だからだ。

しかしながら自由党が勝利すれば、4月から5月に行われるフランス大統領選や9月のドイツ連邦議会(下院)選で、反EU勢力がさらに台頭する引き鉄になる。

そうなればEUがさらに揺らいで、欧州のみならず世界の政治経済が混迷する可能性が高くなる。それは最終的には局地紛争も招きかねない重大事態だ。

オランダの人口は約1700万人。EU全体の3%程度に過ぎないが、ほぼ70年前に独仏伊などと共にEUの原型組織を作った6ヶ国の一つである。

その後もEUの連携と統合を強く支持してきた国。そこで反EUを旗印(掲げる)にする極右勢力が躍進すればEUが受ける打撃は大きい。

昨年のイタリアのポピュリズムの躍進と同様に、オランダの極右ポピュリズムの勢力拡大は、EUの崩壊にもつながりかねない危険なものだ。

EEC(欧州経済共同体)として発足したEUは、その後政治の一体化も目指しながら、欧州での「究極の戦争回避装置」としての役割も果たしてきた。

そのEUが消えてしまえば、欧州内の国々の分断と対立が加速し、紛争や戦争が絶えなかった過去に戻る可能性が高まる。由々しき事態なのである。