仏選挙4大候補切り取り400pic
左からフィヨン、マクロン、メランション、ルペンの各候補

EU(欧州連合)の命運を決めるフランス大統領選の第一回投票日がとうとうやって来た。マクロン、ルペン、フィヨン、メランションの4大候補が支持率僅差でひしめく大混戦である。

昨年6月の英国EU離脱国民投票、11月の米大統領選、12月のイタリア国民投票に次ぐ、ポピュリズムのうねりが勝利するか、民主主義と欧州の良心がそれを蹴散らすかの分水嶺となる選挙だ。

おそらく「欧州最大のグローバル反体制運動」と位置づけても過言ではないフランスのポピュリズムは、選挙戦開始から極右のルペン候補に集約されていた。ところが終盤になって極左急進派のメランション候補が急追して、さらのそのうねりが大きくなった。

極右と極左のポピュリズムが相まって、フランスの大統領選挙は混沌の極みに達したように見えた。そこに追い討ちをかけるようにISのテロがまた発生して、いよいよ風雲急を告げる状況になっている。

今日の第一回投票を経て、おそらく得票数上位2者が決戦投票に進むであろう選挙戦。主要候補4人の最終支持率(4月21日現在)と政策主張の概要は次の通りである。

前経済相マクロン:24,5%。中道無所属の彼は親EU派である。EU統合をさらに推進し、ロシアには厳しい姿勢で対して行くことを公言している。だが選挙戦終盤になって、政策に具体性がないという批判にさらされ支持率の伸びが止まった。

国民戦線党首ルペン:22,5%。 いわずと知れた極右のトランプ主義者。自らの党に穏健右派のイメージを与えようと躍起になって「脱悪魔化」を進めているが、内実は変わっていない。EU離脱を問う国民投票の実施、反移民・反イスラムを隠さず、自国通貨フランの復活も唱えている。 

前首相フィヨン:19、5%。中道右派の彼は、人の移動制限などEU改革を要求しているが、親EU派である。ロシアとの融和策も主張。支持率トップにいたが、勤務実態がない妻と子供に多額の報酬を支払っていた疑惑が明るみになって失速。決選投票への進出は厳しいと見られている。

欧州議会議員メランション:18,5%。 EUとの関係見直しを主張する反EUの急進左派。 NATOやIMFからの脱退も明言し、富裕層への課税と最低賃金大幅増を主張。YouTubeなどで自らを語る姿勢は、米大統領選のトランプ・ツイート作戦をも思い出させる。終盤になって支持率が急伸した。

レースが混沌としているとはいえ、第一回投票で勝利するのはマクロンとルペンという意見は依然として多い。だが上位2人が決選投票に挑む組合わせはいろいろと考えられる。例えばマクロンvsフィヨン、マクロンvsメランション、ルペンvsフィヨン、ルペンvsメランションなど、など。

特定の候補や党派のプロパガンダ媒体を別にすれば、欧米の大手メデイァやWEBメディアのほとんどが、勝者を予測するのは難しいが、紆余曲折を経て結局極右のルペン候補以外の誰かが大統領に選ばれる、とあからさまにまた密かにも思っているフシがある。

僕も実はそう思うが、同時に米大統領選の苦い体験も思い出す。これだけ混戦になっているのは、結局フランス社会が揺れ動いているからである。世界が揺れ動き欧州が揺れ動き、その波動がフランス社会を揺り動かしている。

その巨大な揺れは、あるいはルペン勝利を告げる天のシグナルかもしれない。それはつまりEU崩壊を宣告する神の声である。ルペン候補の勝利より衝撃は少ないだろうが、極左のメランション候補の勝利もやはりEU崩壊の前触れと考えていいだろう。EUはBrexitや伊国民投票などとは比べ物にならない瀬戸際の瀬戸際に立たされているのだ。

僕は日本国籍を捨てる気は毛頭ないが、今のところイタリアで骨を埋める公算が高いEU(欧州連合)信奉者の「欧州住民」の1人である。EUの崩壊は僕にとって、自らのアイデンティティーが揺らぐほどの、巨大な喪失感をもたらす事態になるだろうと思っている。

僕はEUの存続の可否に大きなインパクトを与え続けているBrexit、トランプ主義、伊国民投票とポピュリズムなどを、強い関心と不安を抱きつつ凝視してきた。その中でも最大のイベントがフランス大統領選だ。フランスがEUを脱退すればそれはつまりEUの終焉だ。僕にとっては全く他人事ではないのである。