仏大統領選の投票が始まった。
19時半から始まるBBCの生中継を待つ間、そこかしこのWEBサイトの中継報告を眺めつつ、寒くなったまま動かないイタリアの季節変化の妙を楽しんだりしている。
写真はアルプス山脈に連なるいわゆるプレ・アルプス(前アルプス)の山々の一つ。4月半ばの寒の戻りで冠雪し、いったん融けたものの、昨夜の悪天候で再び雪景色に変わった。
仏大統領選は、マクロン候補の優勢が伝えられる中、投票2日前の5月5日に同陣営をターゲットにしたサイバー攻撃が明らかになり、昨年の米大統領選を彷彿とさせる謎絡みの展開になっている。
また、劣勢とされるルペン候補が勝つ大波乱が起きるのは、依然として「大量の棄権票が出た場合」と考えられていて、その可能性は投票当日の今日になっても全く消えていない。
極右のルペンは問題外だが、富裕層の味方でエリートのマクロンも受け入れがたい、という有権者の揺れる心がどこに落ち着くか、が勝敗の決め手となる。
それでも苦渋の選択で、午後5時以降に投票所に行ってマクロンに投票しよう、という呼びかけがSNSでなされている。
その理由はこうである。
仏大統領選では午後12時と17時の2回に渡って投票者総数が発表される。そこで、17時以降に投票することで彼らの存在証明をしよう、というわけである。
つまり17時以降に入ったマクロン票は、積極的に彼を支持したものではなく、極右のルペンを阻止するために「いやいやながら」入れられた票、ということを明確にしようという行動。
それらの動きを見るにつけ、僕は仏国民の良心に触れる思いがして胸を撃たれる。
トランプ主義者の極右候補を排斥したいが、対抗する候補も既成権力側のエリートで庶民の敵。
それでもファシスト(フランス的表現)を国のトップに据えることはできないから、マクロンを僅差で勝たせる。
大統領になったマクロンはその事実を重く受け止めて、将来の国の舵取りをしろ、というメッセージである。
それらの真摯な人々の願いが実現すれば、フランスの将来は明るいものになる。フランスが明るく強くなれば、それはEUのために大いに良いことだ。
だから僕はそれらの真摯な人々の抵抗が功を奏することを、アルプスから遠くないイタリアの片隅でひそかに、強く、心から願っている。