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ヨーロッパにおいてさえ、いや、それどころかイタリアにおいてさえ、ともすると忘れられがちだが、地中海を渡ってイタリアに到着するアフリカ・中東諸国からの難民は、絶えることなく、ほぼ連日大挙して押し寄せている。

例えば2017年度は、フランスに史上最年少の大統領が誕生した翌日すなわち5月8日現在、43245人がイタリアに上陸した。これは2016年の同時期よりも38.54%多い数字。

また欧州全体で見ると、イタリア、ギリシャ、スペインの3国が今年のほとんどの難民の票着地。イタリアには全体の84%が上陸し、続いてギリシャの11.5%、スペインが4.5%である。

2016年4月、EU(欧州連合)とトルコは、シリアを中心とする国々からギリシャへの密航者をトルコに送り返すことで合意した。

難民が中東からギリシャに渡り、バルカン半島を通って北部ヨーロッパに向かう、いわゆるバルカンルートの閉鎖である。

以来、難民は主に北アフリカのリビアを経由して、地中海⇒イタリア⇒欧州各地を目指す方向に転換。

いわゆる地中海ルートは、バルカンルートと共にいつも存在していたが、後者が閉鎖されてからは地中海が主な流入ルートになっている。

イタリアは常に難民救助にあたってきたが、EUの多くの国が国境を閉鎖しているために、難民の保護、管理、衣食住の提供その他の負担に悩まされ続けている

そうした中、ほとんどの難民が上陸するシチリア島のカルメロ・ズゥッカロ( Carmelo Zuccaro)検察官が、難民を救出している民間NGOが難民ボートを誘導して(利益を得て)いる、と発言して物議を醸している。

難民は「人身売買兼運び屋」に金を払って、用意されたボートに乗って命がけで地中海に乗り出す。NGOの勝手な救出活動は、難民を鼓舞して危険な海に向かわせている、という指摘は以前からある。

殺到する難民問題はイタリア国内の政治闘争となって、台頭するポピュリズム政党の格好の攻撃材料になっている。

極右の北部同盟はあからさまに難民・移民の受け入れに反対し、ポピュリズム政党の五つ星運動も彼らのイタリア一時滞在に反対している。

2013~2016年間にイタリアには55万人以上の難民・移民が到着した。今年は前述したように1月1日~5月8日までに既に4万3千人あまりが上陸。

その数は夏に向かうほどに好天が続いて、海が静かになるこれからの季節にさらに増大することが確実視されている。

ドイツを始めとする難民受け入れ国が国境を閉ざしたり管理を厳しくして、欧州内の人の移動を自由にしたシェンゲン協定が形骸化した現在、イタリアの一人苦悩が続く。

それは、前述のポピュリズム政党の怒りを増大させて、フランス大統領選で下火になる兆候が見え始めた、欧州のトランプ主義の再燃を誘導しかねない危険も秘めている。