世界は今日も激しく動いている。
ちょうど一ヶ月前、ぼくはこのブログで「仏大統領選の結果を待ちながら」、というタイトルの記事を書いた。
あの時も世界は激しく動いていて、その動きの先にあるものは予測がつかない状況だった。
一ヵ月後の今は、表面の流動的な情勢は同じに見えるが、実は大きな方向性は固まりつつある、と僕は思っている。
つまり、世界はポピュリズムあるいはトランプ主義の大流行を脱して、安全な方向に進み出している。少なくともそこに向かう兆候が見える、と僕は考えるのである。
それはフランスでマクロン大統領が誕生したことで明確になった。もっと言えば、極右国民戦線のルペン氏の敗北によって確実になった。
ポピュリズム退潮の兆しは、フランスの前のオランダ総選挙、そのさらに前のオーストリア大統領選でうっすらと見え始め、仏総選挙で姿がはっきりした。
その流れは今日の英国総選挙にも続いていると思う。
ハードBrexitを目指すメイ首相の保守党が、EUとのより強い絆を残存させてEU離脱を唱える、労働党に追い上げられているのがその表れである。
当初、地滑り的な大勝利を収めると見られていた保守党は、おそらく敗北はしないものの、メイ首相が願ったほどの強い政権基盤を獲得するには至らない、と見られている。
選挙キャンペーン中の変化は、テロなどによる偶然が大きく影響したようにも見えるが、実はそれは偶然ではなく、前述のポピュリズムの退潮の大波がもたらしているものだと思う。
なぜならテロの頻発は、リベラルな労働党よりも治安に強硬手段を用いることを厭わない保守党に有利に働くことが普通だ。
それが逆に影響しているのは、Brexitをもたらしたポピュリズムに英国民が疲れ、当初はEU残留派だった保守党の、特にメイ首相の対EU強硬姿勢に、英国民が不安を覚え始めていることの証だ。
ポピュリズムの勝利は英国のEU離脱決定で決定的になり、米トランプ大統領の誕生で最高潮に達して、ついに世界中がその洪水に飲み込まれていくのではないか、と恐れられた。
だが実は、トランプ大統領の誕生がポピュリズムのまさにピークであり、投げた石が上昇し切った後には必ず落下するように、ポピュリズムの弱体化が始まった、と僕は思うのである。
理想的には今日の総選挙を機に英国の状況が一変して、「Brexitをひっくり返してEU残留を決める」ことである。
しかし、それは奇跡が起こって、たとえ労働党が勝利しても、今のところは無理な話である。
だが、将来は分からない。僕は分からない将来に、英国のEU残留の芽があることを願う。
アメリカではトランプ大統領に突然解任されたコミー前FBI長官が今日、議会で証言する。
コミー氏は「大統領は捜査対象ではない」とトランプ氏に告げたことを確認しつつも、トランプ大統領がロシアゲートの捜査を中止し、自分に忠誠を誓うように暗に促した、とも証言するという。
「忠誠を誓え」と迫るのは、要するにコミー氏への脅迫ではないのか。
トランプ大統領のその言動が、違法なものであるかどうかを証明するのは難しいだろう。しかし、ロシアゲート捜査への介入が証明されれば、トランプ大統領は十中八九アウトだろう。
イタリアでは前倒しの総選挙を目指して、「壊し屋」のレンツィ前首相が得意の権謀術策に奔走している。だが今日のイタリアが驚愕しているのは、それとは別の大きな「事件」である。
イタリア最高裁が、マフィアのボスの中のボス、トト・リイナにも「尊厳死」の権利があるとして、彼の赦免を審議するように拘留再審裁判所に命じたのである。
イタリアは蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
実は僕はそのことを書いているのだが、筆の遅い無能が災いして、英国総選挙とコーミー証言が重なる今日までだらだらと続いてしまった。
ブログはニュースではなく意見開陳の場、と僕は考えているので時事ネタをあわてて書くのは邪道、とみなしている。それでも今日のような重大イベントについてはやはりひとこと言いたい思いがする。
そこでこのエントリーをまず優先させて、ほぼ書き上げつつある「マフィア話」は次に投稿することにした。