今後も多少の紆余曲折はあるだろうが、ポピュリズム退潮の道筋は確実にできつつある、と仏総選挙の第一回投票結果を見てあらためて感じた。
今月18日に行われる第二回投票を経て、マクロン大統領率いる「共和国前進!」党は、全577議席のうち7割以上に当たる415~455議席を獲得すると見られる。
実現すればまさに“地滑り的”勝利であり、マクロン政権にとっては願ってもない政治改革への機会がすぐにも訪れることになる。
大統領選で躍進したルペン党首率いる極右国民戦線は、議会選挙では1~5議席程度の獲得に止まるとされる。国民戦線の惨敗はポピュリズムの弱体化を端的にあらわしている。
仏選挙と同日に行われたイタリア地方選でも、ポピュリズムを煽る反体制派政党の「五つ星運動」が大敗した。昨年のローマ市長選で同党が圧勝したことが嘘のような低調振りである。
「五つ星運動」は昨年はトリノ市長選でも勝利し、国政レベルの世論調査でライバルの民主党とトップを争う勢いに弾みがついて、いよいよ政権を狙うところまで来たと見られていた。
しかし、米トランプ大統領の誕生で頂点を極めたポピュリズムの大波は、オーストリア大統領選、オランダ総選挙、そして先月の仏大統領選と勢いを削がれ続けた。
そして先日の仏総選挙第一回投票で勢力がさらに小さくなり、それは1000余りの市町村で首長を選ぶイタリアの地方選でも見事に体現されて、「五つ星運動」が惨敗した。
おそらくその流れは今後も続き、仏大統領選の第二回投票でトレンドは強化されて、9月のドイツ総選挙で完成することになるだろう。
そうした一連の流れは、トランプ主義を極めた米トランプ大統領が、政権運営を始めると同時に迷走し、醜態をさらし続けている現実によって拍車がかかっている。
ポピュリズムはトランプ氏によって最強になり、同じトランプ氏によって破壊されようとしている。破壊が完結するかどうかはまだ誰にも分からない。しかし、その可能性は高いのではないか。
それは欧州、特にEUが団結を強めてトランプ米国に対抗し、過激派テロを追い詰め、連合離脱を決めた英国とうまく渡り合う中でさらに高まっていくだろう。
そうした意味で、EU信奉者のマクロン党が仏選挙を制し、反EU且つトランプ主義信奉者の極右国民戦線が敗退し、さらに伊ポピュリズム政党の「五つ星運動」が敗れたことは良い兆候だ。