トレビの泉引き400
トレビの泉


ドイツ、ハンブルグでまもなくG20が始まる。環境、貿易問題を中心にいつになく真剣で活発、しかも分断の様相が濃い議論が行われると見られている。

荒れ模様の会議を象徴するように、市民による抗議デモも拡大し先鋭化している。会議が始まる今日午後には10万人規模のデモが予定されている。

お騒がせ米トランプ「暴君」大統領と、プーチンロシア「皇帝」及び習近平中国
「専制君主」の会談、また彼と独メルケル首相とのそれなどが目玉。

世界政治の傍流の地方ボス安倍晋三さんと、政治傍流且つ経済四流国のトップ、イタリアのジェンティローニさんらは脇に置かれるだろう。

とはいうものの、殺到する地中海難民問題で四苦八苦する後者は、会議中にあるいは少しは注目を集める場面があるかもしれない。

ジェンティローニさんの銃後のここイタリアは、殺到する地中海難民の集合体熱とそれに対する伊国民の驚愕熱に加えて、近年まれな6月中と7月初めの暑気と少雨が相まって国中が乾きにあえいでいる。

そんな中、世界一美しい噴水とも形容されるローマのトレビの泉が、水不足のためにすべての蛇口が枯渇して閉鎖される、という噂が流れて人々を驚かせた。

「永遠の都」ローマのシンボルの一つが枯渇するというところまではいかないと思うが、2000年前後の歴史を持つものも多いローマの噴水が、水不足のために水流を止められるのは事実である。

イタリアは2017年6月、北部のわずかな一帯を除いて厳しい暑さと水不足に見舞われた。暑さは過去60年で2番目、乾燥度は同時期の最悪、という記録になった。それは前述したように7月に入った今も続き、厳しさを増している。

水不足に悩むローマ水道局は、史上初めて公共の水飲み場ともいうべきローマの噴水(飲み水)を止めることを決定。手始めに7月3日、30の噴水の水流をストップした。

以後、蛇口を閉める噴水の数を増やして、最終的には2000余の噴水のうちおよそ1920箇所、言葉を換えれば80箇所のみを残して、水の供給をストップする、としている。

ローマは世界一の噴水の街である。2000以上の噴水があり、そのうちの50箇所は歴史遺産(モニュメント)に指定されている。

噴水は古代ローマが水道を完成させたとき、そこから直接に水を引いて作られていった。広場や路地や街角などに設置されて、市民や旅行者に飲み水を提供しつつローマの暑い夏を潤してきた。同時にそれらは美しい街並みに一点のアクセントを加えて、街並みをさらに美しく趣深いものにした。

街の噴水は17世紀から18世紀にかけて大幅な改修や新設が行われた。オリジナルの古代ローマ水道そのものの修復が、その時代に実施されたのがきっかけである。

噴水はその機会に美的装飾や改善や修正が加えられて今の形になった。それまではシンプルな水飲み場のようなものがほとんどだったが、18世紀頃を境にトレビの泉に代表される荘重で美しいものが登場するようになった。

その結果ローマ市内の噴水は、トレビの泉のような広大で水かさが盛んなものから、一本のチューブにつながった水道の活嘴(かっし)が水を吹き出しているようなシンプルなものまで、その数は2000箇所を越すのである。

そのうちの大半に水の供給を停止する今回の処置の主な理由は、前述したように水不足だが、ローマ水道局はこの機会に疲弊した噴水のパイプや構造物を修復したいとしている。

水道局によると、ローマ全体の噴水の水流はパイプや構造物の老朽化によって、その50%が失われムダになっているとされる。

また、噴水の閉鎖は一時的なものであり、修復が完成して水不足が解消されれば、すべての噴水に元通りに水を供給する、としている。

市の決定に対して、ローマの消費者団体は、噴水の水が飲めなくなって観光客らはバールや店で高いミネラルウォーターを買わされることになる。閉鎖には反対だ、と抗議している。

だがその間くらい観光客は、ミネラルウォーターを飲んでもバチはあたらない、と思う。ミネラルウォーターがごく一般的に飲まれているイタリアでは、その値段は決して高くはないのだ。

日本などに比べたら「微々たるもの」と言っても良いくらいの価格だ。しばらく不便が続くが、ローマの歴史的噴水群が修復されてよみがえるのだから、結局そのほうが観光客の利益にもなる、と思うのだが。。。