
水流が止まったサンピエトロ広場のカルロ・マデルノ噴水
書こうと思いつつ優先順位が理由でまだ書けず、あるいは他の事案で忙しくて執筆そのものができずに後回しにしているネタは多い。それは「書きそびれた過去形のテーマ」ではなく、現在進行形の事柄である。過去形のトピックも現在進行形の話題も、できれば将来どこかで掘り下げて言及したいと思う。その意味合いで例によってここに箇条書きにしておくことにした。
マジ、「トレビの泉」が枯れるかも
イタリアの水不足が深刻だ。特に中部から南部イタリアが旱魃に見舞われている。ローマ市は7月3日以降、市内に2800箇所ある噴水と水飲み場の水流を徐々にストップすると宣言。バチカン市国も先日、ローマ市との連携を示すとして、サンピエトロ広場にあるバロック様式の噴水を含む、国内のおよそ100箇所の噴水を閉鎖した。ローマには今年1月から6月までの半年間に26日の降雨日があったが、これは2016年の同時期の88日を大きく下回る。また過去60年間で2番目に暑い春の後も、雨の少ない高温の日々が続いている。ローマ市は公共の水飲み場でもある噴水を閉めるばかりではなく、1日8時間程度の給水制限まで検討している。イタリア全体ではこれまでに、少なく見積もってもおよそ2億ユーロ(2600億円)の農業被害が出ており、山火事が頻繁に発生している状況である。旱魃が解消される見通しは今のところ立っていない。
イタリアでの立ちションとカーセックスは高くつくよ
2016年、イタリアでは立小便と公の場でのセックスは違法行為(刑罰)ではなくなった。その代わり1万ユーロ(約130万円)の罰金が課されることになった。今年2月、ジェノバの19歳の大学生が真夜中に立ちションベンをして警察につかまり、2ヵ月後に1万ユーロの罰金の支払い請求書が届いた。学生は数字を何度も繰り返し確かめたという。それはとても信じられない額だったのだ。学生の父親は弁護士に相談したが、クレームをつけても勝ち目はないので素直に支払った方がいいと釘を刺された。また先日は、シチリア島パレルモ市近郊の高速道路のジャンクションで、車内セックスをしていたカップルがやはり警察に咎められて130万円の罰金を課された。2人はカーセックスが禁止とは知らなかった、と必死で弁解したが警察は全く相手にせず、きちんと130万円の違反切符を切った。「高速のジャンクションでカーセックスをするのが禁止かどうかではなく、普通そんなところで楽しむかい?というのがポイントでしょ」とは、警察は諭(さと)さなかったのだろうか?
イタリアサッカーがよみがえる日は来るか
サッカー強豪国のイタリアが沈んで久しい。2006年のW杯優勝を頂点に強さは下降線をたどるばかりだ。その原因は「違い」を演出できる優れた選手の不在だ。たとえば90年代にひしめいたロベルト・バッジョ、アレッサンドロ・デルピエロ、フランチェスコ・トッティ、少し遅れてアンドレア・ピルロなどの、超一流選手の後継者が出ないことが最大の原因だと僕は思う。彼らに近づきそうな選手は2人いた。アントニオ・カッサーノとマリオ・バロテッリである。優れた能力を有しながら、2人は性格の不安定と頭の中身がぶっ飛んでいることが災いして、ついに大成しなかった。カッサーノはカッサーノらしく先日、引き際でも物議を醸して正式引退。バロテッリはまだ若いながら、絶頂期は過ぎてあとは落ちるばかり、という風である。精神的に大きく成長しない限り、その傾向は逆転しないだろう。2人に続く才能は今のところ見当たらない。つまり、イタリアサッカーがかつての栄光を取り戻す道筋は見えない。ディフェンダーはイタリアらしく強い選手がひしめいているが、守備だけではサッカーは勝てない。たとえ勝てても見ていて面白くない。
難民問題
地中海を渡ってイタリアに流入する難民・移民はとどまることを知らない。彼らの救助と救助後の面倒見に翻弄されているイタリアは、EU(欧州連合)の介入と手助けを必死に呼びかけているが、独仏をはじめとするEU各国は「イタリアに同情する」「イタリアを1人にはしない」「イタリアの痛みを分かち合う」などなど、口先ばかりの「連帯」を表明して、実はほぼ無関心と言っても良い偽善者ぶりである。それどころかEUの問題児ハンガリーは、オルバン首相の名で「イタリアは難民排斥ののために全ての港を閉鎖するべき」とこの国を非難。それには元共産主義国で今や難民・移民排斥の急先鋒であるチェコ共和国、スロベニア、ポーランド各国の代表が同調した。あまつさえ、ハンガリーの隣国でイタリアとも国境を接するオーストリアも、イタリアは「難民・移民」を地中海の島に留め置いて、イタリア本土(欧州大陸)に移動させないようにするべき、と表明してイタリアの怒りを買い、国際社会を唖然とさせた。
Femicide(女性殺し)
イタリアよ、一体どうしたのだ、と問いたいほどの有り様である。夫、元夫、恋人、元恋人、愛人等々による女性殺害事件が後を絶たないのだ。直近では7月23日、ベニス在住のマリアアルキテッタ・メネッラ(38)さんが、元夫のアントニオ・アショーネ(44)に包丁でメッタ刺しにされて死亡した。当時アショーネは、メネッラさんの自宅に招待されていた。つまり2人は離婚後も友達関係にあったことが分かる。2人の間には15歳と9歳と息子がいる。イタリアでは離婚後も夫婦が良い人間関係を保つことが珍しくない。特に子供がいながら別れた場合はそうだ。子供のためにいがみ合いを避けようとするのだ。文明社会らしい側面が強いイタリアなのに、別れた相手女性の自由を受け入れられずに、殺害にまで及んでしまう男らの存在は、繰り返し僕の頭の中に大きな「?」マークを植え付け続けている。