Japanバックに400ぴc


小池新党と民進党が事実上合流することで起きている、日本政界の激震は歓迎するべきことだ。保守自民と保守希望の党のうちのどちらを選ぶか、と問われれば僕は「思い上がった」安倍政権にはここで一度退陣してもらって、小池政権で日本の再出発を試みてもいいのではないか、と答えるだろう

希望の党の突然の台頭は、アメリカのトランプ主義旋風やフランスの共和国前進の躍進、また(政権奪取には至っていないものの)ここイタリアの五つ星運動の急伸などに通底した、社会変革を求める市民の抗議活動の一環として捉えることもできる。日本国内の卑近な例で言えば、先の都議選における「都民ファースの会」の飛躍と同じものだ。

小池百合子希望の党代表は、短期間のうちに2つもの大きな政治変革運動を起こして、今度もまた勝利しようとしているように見える。いや、たとえ今回選挙で政権奪取までいかなくても、最後まで「失速することなく」選挙戦を戦いぬくことができれば、彼女の変革は成功したも同然だろう。

それは少なくとも、安倍政権が唱える空疎な変革よりはましなものである可能性が高い。なぜなら彼女は安倍政権の抱える問題点を客観的に勘案して、それを軌道修正した「保守政策」を推し進める、と見るのが妥当だからだ。同時にその政策は、理念も形も熱意も何も見えない民進党のそれに比較しても、まだしも救われるものになるだろう。

民進党の消滅によって、リベラル勢力のさらなる弱体化が進む、という見方もある。しかし、逆の効果を生む可能性も同じ程度にあるのではないか。民進党内の左派勢力は、保守派が希望の党に移ったことを幸いに結集し新党を作るなどして、共産党以外の小勢力との合流も視野に、リベラルの再構築を図るべきだ。民進党の壊滅が、リベラルの死ではなくむしろ「再生の始まり」となってほしい。

希望の党と民進党の合体にはさまざまな批判が浴びせられている。期待する声はほとんど聞こえないくらいだ。たとえば曰く、希望の党の小池代表は独裁者。民進党リベラル派を虐殺しようとしている。彼女の原発ゼロ公約は口からでまかせ。なぜなら彼女は核武装論者、云々。

また民進党前原代表は、希望の党と合流することによって党内のリベラル派を体よく切り捨てようとする詐欺師。前原代表は民進党を破壊し、小池党首に追従するだけの理念なき政治家。「言うだけ番長」が初めて行動したと思ったら、それは党への大いなる裏切り行為だった、云々。

さらに保守自民党と保守派の希望の党が対立するのは、対立ではなく将来の2党の連立から大政翼賛会にまでつながりかねない由々しき事態。改憲勢力が国会の3分の2どころか8割を占めて、日本はますます「戦争のできる国」へと暗転・進行していく、など、など。

改憲がすぐに「戦争」へと結びつく思考は、「思考していない」と同義語の無意味な主張である。僕は「戦争を避けるための改憲」に賛成する。日本は70年以上にわたって平和をエンジョイしてきた。そこに平和憲法があったからではない。アメリカの保護があったからだ。保護の代償に日本は、イタリア語でいう「アメリカのケツ舐め(lecca culo)」外交を強いられてきた。

それは今後も続くことが確実だ。自民党政権であろうが希望の党政権であろうが同じだ。だが、希望の党政権になれば、「アメリカのケツを舐める」だけの屈辱的な生き方から、自主独立国へ向けての「舵取りが始まる」かもしれない。たとえそうはならなくとも、自民党と一線を画す政策を推し進める、と主張するのだから少なくとも自民党政権より後退することはないだろう。

変革はあらたな変革を呼ぶ可能性が高い。アメリカとの友好同盟関係は維持しながら、日本は中韓をはじめとする近隣諸国との平和共存に向けて「対話」による外交を強烈に推し進めるべきだ。対話による外交は、北朝鮮との場合にも当てはまる。武力による解決は日本を含む近隣国の多大な人命喪失を意味するのだから、断じてあってはならないことだ。

安倍首相は、先の国連演説で「北朝鮮との対話はもはやあり得ない。圧力あるのみだ」と、例によって「引き籠もりの暴力愛好家」丸出しの無茶な演説をした。北朝鮮の出方次第では同国を破壊するしかない、などとするトランプ大統領の大言に合わせたつもりなのかもしれないが、実はその傍若無人な米大統領ですら、決して「北朝鮮との対話を拒否する」とは言わない重大点を、安倍首相は見逃しているとしか考えられない。

安倍首相の発言は、アメリカと北朝鮮の交戦を心のどこかで期待しているようにさえ聞こえる。米朝が砲火を交えれば、日本にも必ず巨大な危険が及ぶ、という極めて現実的な事態が想像できないのだろうか。危険は及ぶが米軍と自衛隊が協力して防衛に当たれば危険はゼロになる、とでもいうのだろうか?もしそうだとすれば、あまりにも荒唐無稽でもはや議論をする価値さえない。

小池百合子希望の党党首も前原誠司民進党代表も、どちらかといえば安倍晋三首相の政治姿勢(あえて思想とは言わない)に親和的な立場である。だが2人は自民党を抜け出して、自民党とは相容れない政治勢力や政治家とも和し、あるいはぶつかり合いながら政界を泳いできた。おのずから安倍氏とは違う体質を持っている。

民進党を飲みこんで勢力を拡大した希望の党が、何らかの形で政権を奪取すれば対米政策も変わる余地ができると考えたい。つまり新政権がアメリカとの同盟関係を維持しつつ、「両国の対等な立場」を強力に主張・推進することを期待したいのだ。その可能性は、小沢一郎氏が希望の党に参画することなどでかなり高まるのではないか、と個人的には考える。