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先日独立を宣言したスペイン・カタルーニャ州のプチデモン首相が、EU(欧州連合)の本拠地ブリュッセルに移動したのは、EU幹部を含む誰も予期できなかった事態であり、同時にEUにとっては大迷惑な話である。

それは言い換えれば、プチデモン州首相は突然ブリュッセルに乗り込むことによって、「カタルーニャ独立をスペインではなくEU全体の問題にすることに成功した」ということである。

EUの結束は、2009年に始まった欧州ソブリン危機、2015年にピークを迎えた難民問題、2016年のBrexit(英国のEU]離脱)決定などで、大幅に乱れてきた。

またそれらの問題と並行する形で、EU参加国の間には極右政党や極左勢力が台頭して、欧州の核である民主主義や自由や寛容や平和主義の精神が貶められかねない状況が生まれた。

それは米国に誕生したトランプ反動政権と通底する政治の地殻変動である。自由と寛容と民主主義を死守しようとするEUの主流勢力は、欧州と米国の「トランプ主義」勢力に対抗する必要に迫られている。

EUは同時に、ロシアと中国の勢力拡大にも目を配らなければならない。変形共産主義の2大国は、EUおよび欧州にとっては、ほぼ永遠に協調と警戒を平行して遂行しなければならない厄介な相手である。

内外に難問を抱えて正念場に立たされているEUは、特にBrexitによって大きく後退した連帯意識を再構築して、団結して事態に対面していかなければならない。

そんな折に、EUの重要国の一つであるスペインが分断の危機にさらされた。EU首脳は、内心の動揺を隠して不干渉を決め込んだ。スペインがどうにかして
「ひとりで問題を解決してくれる」ことを祈ったのである。

スペイン一国の内政問題、と規定して事態を矮小化し、EUのさらなる混乱と分裂を避けようとしたEU指導部の姑息な思惑は、プチデモン・カタルーニャ州首相のブリュッセルへの闖入によって粉々に打ち砕かれた。

EUは突然、カタルーニャ危機の当事者になった。あるいは当事者にさせられた。プチデモン州首相は民主主義を全うしてカタルーニャで住民投票を実施し、スペイン当局はそれに対して愚かにも暴力と抑圧で対抗した。

EUの原理原則である自由と民主主義と寛容と平和主義を遵守しているのは、スペインのラホイ政権ではなくカタルーニャ州とプチデモン州首相である。EUはこれを庇護しなければならない。

同時にEUは、安定と秩序と統一を守ろうとするスペイン中央政府の立場もまた支持しなければならない。カタルーニャ問題を見て見ぬ振りをしてきたEUの偽善のツケは大きい。

EUと足並みをそろえて無関心を装ってきたドイツ・メルケル、フランス・マクロン、英国・メイなど大国首脳の責任も重大である。その他のEU諸国にも連帯責任がある。

スペインを分断しているカタルーニャ独立問題は、EUにとっては前述した「多くの危機・難問」にも匹敵する重要課題だ。EUはスペインの統一を維持し、且つ民主主義と非暴力を貫くカタルーニャ州の魂も救わなければならない。

最善の道は、スペイン・ラホイ政権がカタルーニャ州の自治権をさらに拡大して、双方が納得した形で統一国家を維持することだ。EUはそこに向けて働きかけを強めるべきだと考える。

だがそれは、僕の勝手な思いである。カタルーニャ州の人々が飽くまでも独立を志向するなら、誰もそれを止めることはできない。それに暴力が伴うかどうかは、スペイン政府次第である。それはつまり、「EU次第」と言い換えることもできる。