イタリアのマタレッラ大統領は12月28日、議会を解散した。これを受けて総選挙が来年3月4日に行われることになった。
選挙戦の主な争点は、地中海を渡ってイタリアに流入し続ける難民・移民への対応と国内経済の立て直しである。
12月28日現在の世論調査の支持率は、ポピュリズム政党の「五つ星運動」が28-29%でトップ。中道左派の与党民主党が23%、中道右派のフォルツァ・イタリア16%、極右の「北部同盟」と「イタリアの同胞」がそれぞれ13%と5%である。
「五つ星運動」が単独政党としてはトップの支持率だが、単独過半数には届かない見込み。また同党は他党との連立を組まないことを明言しているため、政権入りは難しい。
第2党の民主党は内部分裂が極まって支持率が急降下。党首のレンツィ元首相を首相候補に立てない方針での人気回復を目指している。
ほぼ4年近く前、39歳の若さで首相の地位に就いたレンツィ氏は、政権も担当中も「壊し屋」の異名通りに政敵や党友を排除する強引な手法で反感を買った。
2016年12月、彼の最大の政治目標だった上院改革・憲法改正を問う国民投票で敗北。首相を辞任した。
その後復活を目指して民主党党首選を制するなど求心力の強さを見せつけた。同時に彼の独善的な政治手法への反感が募って民主党は分裂。
レンツィ氏は党を割って出た者を「少数派の独裁者」と断罪するのみならず、居残った者への批判も続けて党はさらに分裂。民主党と党首自身の沈下はとどまることを知らない。
新興政党の「五つ星運動」への人々の疑心暗鬼と、内部分裂の激しい民主党への国民の倦厭感をうまく捉えて支持を伸ばしているのが、ベルルスコーニ元首相が主導するフォルツァ・イタリア、北部同盟、イタリアの同胞の3党による中道右派連合である。
同連合は2017年11月5日、イタリア・シチリア州知事選を制して勢いづき、来年の総選挙で最大会派になると見られている。ただし、脱税で有罪判決を受けた81歳のベルルスコーニ氏は首相には就任できない。
2017年は欧州で総選挙が多く実施され、各国で極右政党やポピュリズム政党が台頭した。オランダ、オーストリアまたフランスでもルペン氏率いる国民戦線が躍進。
9月のドイツの選挙では反移民・反イスラムの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が大きく支持を伸ばして世界を驚かせた。それらの動きがBrexit(英国のEU離脱)や米トランプ主義と連動しているのは周知の事実である。
イタリアにも政治変動の大波は押し寄せていて、トランプ大統領の誕生時に「彼に続け」と党首が叫んだポピュリストの「五つ星運動」が強い勢力を堅持。
極右の北部同盟とイタリアの同胞は、前述のように中道右派のベルルスコーニ氏と提携して政権入りをしそうな勢いである。