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秀逸なオープニングと総合司会者

まずオープニングがよかった。合成技法を用いたコンセプトは新しいものではないが、レトロなのにシャレた感覚に仕上がっていて楽しめた。

街やスタジオセットにはめ込む絵の撮影のために、出場歌手全員(だと思う)を拘束するのは大変だったろうと思いつつ、でもリハーサルの合間にでも撮影したのかな、とも。

多忙なひとびとの時間を長く借りるのも大仕事、短い時間で一気に仕事を済ませるのも大仕事。どちらにしてもNHK(ディレクター)はプロらしい良い仕事をしたと素直に感じた。

総合司会兼「紅白スーパーバイザー」=NHKゼネラル・エグゼクティブ・プレミアム・マーベラス・ディレクター(笑)三津谷寛治こと内村光良は、もしかすると史上最高の紅白司会者か、というぐらいに輝いていた。

いやみがなく、おごらず、気配りができ、発言に思いやりがあり、お笑い芸人としては当然ながら機転アドリブに長け、従っておもしろく、・・と、どこを切っても才能の高さと人柄のよさがにじみ出ていた。

僕は彼が主導するNHK番組『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』 もけっこう見ているので、設定をスムースに理解しギャグに笑った。もっとも同番組を見ていない人にも受けたかどうかは心もとないが。

「暴力」「差別」「圧力」「忖度」をぶっ飛ばせ

三津谷寛治がらみの最大のギャグは、彼がNHKの敵「暴力」「差別」「圧力」
「忖度(そんたく)」をやっつける場面である。

4大敵のうちの「暴力」と「差別」は普遍的なものだが、「圧力」と「忖度(そんたく)」は普遍的であると同時に、安倍政権がNHKに圧力をかけて忖度を強要したことへの反発とも読めて面白かった。

「忖度だけに読み仮名が振られていた」と内村に言わせたところにも、NHKの怨みがこもっていたようでさらに笑えた。

NHKは今後は、英BBCなどを見習って圧力を押し返し、忖度を拒否する姿勢を強靭に貫いてほしい。籾井さんのような放送とはまるで関係のないネトウヨ系の会長もいなくなったことだし。

ただ、テレビは政府と同じで「国民の民度に適った」レベルでしか存在し得ない。NHKに圧力をかけたり忖度しろと詰め寄る政権は、国民の程度がそういうふうだからそういうふうに存在するのだ。

同時に、NHKが圧力や忖度要請に屈するのも、国民がそれを許しているからだ。NHKあっての国民ではなく、国民あってのNHKなのだ。

そうはいうものの、NHKには国民を啓発する気概も持ってほしい。驕ることなく、「実現不可能な不偏不党の立場」を敢えて追求しつつ、権力批判を遂行するべきなのである。

昨年紅白とのエライ違い

オープニングは昨年のシン・ゴジラ編の、また「紅白スーパーバイザー」三津谷寛治がらみのシーンは昨年の「タモリ&マツコ」の代替企画である。

昨年の2つのエピソードは、目も当てられないぐらいの失策、というのが僕の意見だが、ことしのそれは昨年の「大すべり」を挽回して余りあるものだった。

オープニングは冒頭で述べたように新鮮だった。昨年のシン・ゴジラ企画が、番組中繰り返し挿入されてさらに不興を誘ったのとは違って、そこだけで完結して鮮烈にメリハリ感が出た。

また『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』をふんだんに用いた演出は、昨年『ブラタモリ』 をもじった『マツコとタモリのブラ紅白』が大迷走したのとは違って、大いにハマッていた。

少し欲を言えば、「紅白スーパーバイザー」三津谷寛治が背広をパラシュート代わりにして ヘリから飛び降りて、NHKの建物に激突した後、無傷で立ち上がったのは惜しかった。

ターミネーターを少しパロディっているから無傷、のコンセプトは分かるが、パロディだからこそ例えば立ち上がった彼の顔に鼻血が大きくタラり、などの滑稽感があればもっと良かった。

また、三津谷が三山ひろし、Sexy Zone 、サンシャイン池崎 の3組を彼の執務室に呼び出して説教するシーンは、もっと拡大してほしかった。むちゃくちゃに面白かったのだ。

演出が良いから歌手たちも良く見えた

僕は紅白歌合戦を通してその年に流行った歌やアーティストを知ることが多い。今回も事情は同じだったが、番組全体が楽しいからなのか、既に知っている歌や歌手もことさら清新に見えた。

たとえば郷ひろみ。僕と同期の還暦超過オヤジの若さに脱帽。アイドルであり続けるために老けない努力を怠らない「プロど根性」に、いまさらながら大拍手を送りたくなった。

たとえば島津亜矢。‘Rose’を原語で熱唱。彼女の歌唱力を疑う者はいないと思うが、演歌歌手が英語で、しかも発音も悪くなく、心にしみる歌声だった。

たとえば高橋真梨子。もう古希近い年齢ながら、年齢が歌魂の障害になるのではないが、でも肉体的に声の衰えは隠せないはずなのに、艶っぽい。ここにも歌手の「プロど根性」を見た。

たとえば水森かおり。歌も良かったけれど「千手観音踊り」は圧巻だった。ダンサーたちのすばらしさは彼女の歌心で引き出されて、それはダンサーによって輝く、という相乗効果また好循環。

例えば丘みどり。新しい演歌歌手の誕生か。たとえば渡辺直美。歌手としてよりもLady Gagaのパロディ熱演のすごさに瞠目。もちろん安室 奈美恵 に桑田佳祐 も。

など、など。。。。。