屋根雪800



北イタリアは昨日、今日と大雪である。ミラノからベニスに至るA4高速の途中の、ミラノ寄りにあるわが家のあたりも白一色の世界になった。

このまま降り続くと、明後日の総選挙の投票率に影響があるかもしれない、とちらと思ったりもするが深刻には考えない。

イタリアの政治状況は、ポピュリストの「五つ星運動」が突然単独で過半数を達成、という事態にでもならない限り、選挙後もほぼ何も変わらない、と思うからだ。

次の政権が左右どちらに振れても、また両方が入り乱れても、あるいはいつまでも政権が樹立できない環境に陥っても、イタリアは沈まない。したたかな国なのである。

かなり見え透いているイタリアの選挙よりも、同じく明後日の発表になるドイツ社会民主党の党員採決の方が僕はずっと気になる。

ドイツは昨年9月の総選挙以来、政権が発足できない異常事態に陥っている。メルケル首相率いる同盟(キリスト教民主・社会同盟)と国政第2党の社会民主党は、連立政権樹立を目指して協議を続けている。

しかし、社会民主党の中には、メルケル首相の陰に立たされることをよしとしない強い勢力があって、協議は難航している。それでも両党幹部は妥協を繰り返して合意を重ねてきた。

いくつものハードルを超えて最終的に残ったのが、社会民主党の46万人余 の党員全員による連立の是非を問う投票だ。今日2日で締め切られ、明後日4日に結果が発表される。

社会民主党は同盟との協議を続ける中、事案の一つ一つについて常に党員の合意を取り付けながら進んできた。従って最終的な投票でも連立賛成が上回る可能性が高い。

またもしも連立合意が流れて再選挙となった場合は、社会民主党は今よりも議席数を減らし、極右の「ドイツのための選択肢」のさらなる飛躍が予想されている。

そうした不都合を避けるためにも、良識ある党員は同盟との連立を支持すると見られている。が、あらゆる選挙同様に投票結果はフタを開けてみるまでは分からない。

連立反対の意思表示が上回り、少数与党政権を嫌うメルケル首相が再選挙を決意して、ドイツの政治不安がさらに高まる可能性はゼロではない。

もしそうなった場合は、欧州のみならず世界の政治地図が暗く塗り込められることになる。なぜならドイツの弱体化と混乱は、即座にEUと欧州全体の弱体化と混乱につながる。

それは自由と民主主義と寛容の精神が、今よりももっと速い速度で世界から消し去られかねないことを意味する。大げさな、と思うなら次のように考えてみればいい。

今現在の世界の力関係は、米、欧、露、中、に分けられている。そこに北朝鮮やシリアやイラン等々が火の粉を投げ込む形だ。

それらの力や勢力のうち、米欧は昨日までは足並みを揃えて自由と民主主義と人権と寛容の精神を守り、鼓舞し、謳歌してきた。

しかしトランプ大統領の誕生によって、米国は先ず寛容の心をかなぐり捨て、自由や民主主義や人権や言論・報道の尊重さえ危うい社会が生まれた。

それは一党独裁国家の中国、その変形政体の国であるロシア、さらには北朝鮮やシリアなどに代表される、人権無視の野蛮国にも通底するトランプ政権が生み出した社会だ。

それに対抗できるのは、今の時点では欧州のみである。その欧州は強いEUによって担保され、EUの力は安定した強いドイツによって担保される

僕がドイツの連立政権の誕生を待ち望んでいるのはそれが理由だ。ドイツがここから4年に渡って安定すれば、その間にトランプを排した米国が変わるだろう。

そこで欧州は、変わった米国と再び手を取り合う。それによって中露が変わり、やがて北朝鮮ほかの小煩い小国家群も制御されて世界はより平穏になる。

そこで世界は、自由と民主主義と人権と寛容が尊重される理想郷を目指して、再び試行錯誤を繰り返しながら歩みだす、というのは僕の甘い夢想、あるいはポジショントークに過ぎないのだろうか・・・