キス:デlマイオ&サルヴィーニ700pic
五つ星運動と同盟のトップがキス-ローマの壁アート



過半数を制する政党がなかった3月4日の総選挙結果を受けて、イタリアでは3つの勢力が政権樹立とそこでの主導権掌握を目指して駆け引きを続けている。

3つの勢力とは、4党が手を組んだ「中道右派連合」と反体制抗議政党の「五つ星運動」、そして(前政権与党)民主党が主導する「中道左派連合」である。

これらの勢力のうち、4政党が実質的な政権樹立ゲームを繰り広げている。それは総選挙での得票率順に並べると次のようになる。

1.単独政党としてはダントツの支持率を得た五つ星運動  2.民主党  
3.極右政党の「同盟」  4.ベルルスコーニ党の「FI(フオルツァ・イタリア)」である。

各政党に加えて「政党連合」が存在するために分かりづらくなっているが、イタリアでは各党がどの政党連合(会派)に属するかを旗印にして、選挙戦に挑むことが容認されている。

そのために単独では過半数獲得が不可能な政党が寄り集まって提携「連合」し、それぞれがいわば擬似政党として選挙に挑む。

しかし単独で過半数制覇を目指す「五つ星運動」は、他党との連合を拒否して選挙に臨み、勝利した。連立政権樹立に向けた政治ゲームは、その五つ星運動を中心に展開されている。

五つ星運動は31歳のディマイオ氏を首相候補に立てて、中道右派連合と中道左派連合に連立政権への参加を呼びかけている。だが、その中身は単純ではない。

それというのも五つ星運動は、連立の条件として右派連合にはベルルスコーニ元首相の排除を、また左派連合にはレンツィ前首相の排除を要求しているからである。

五つ星運動の最大の政治目標の一つは、「腐敗した既成政党や政治家」の一掃である。彼らにとってはベルルスコーニ元首相は、過去20年以上に渡ってイタリア政治を牛耳ってきた「腐敗権力」の象徴。

またEU(欧州連合)信奉者のレンツィ前首相は、EU懐疑派の五つ星運動の天敵である。五つ星運動は、最近はEUへの敵意を抑えているが、その真の姿は「反EU」であり、レンツィ前首相とは激しく対立してきた。

中道右派連合を主導する同盟のサルヴィーニ党首は、仲間のベルルスコーニ氏の排除はできないとし、レンツィ前首相が所属する民主党も連立政権に参加する考えはない、としてディマイオ氏の要求をはねつけている。

しかし、同盟も民主党も、実は裏ではディマイオ氏の提案を真剣に吟味しているのではないか。ディマイオ氏の要求は、五つ星運動の立場によれば、荒唐無稽どころかきわめて妥当なものだと僕には見える。

ベルルスコーニ元首相は、中道右派内で握り続けてきた主導権を失ない、同盟のサルヴィーニ氏の軍門に下った。またレンツィ氏は民主党の衰退と選挙での大敗の責任者。どちらも今やオワコンだ。

サルヴィーニ氏がベルルスコーニ氏を切り捨て、レンツィ氏が失脚して党体勢が変わった民主党も、今や一兵卒に過ぎない同氏を何らかの形で排除する可能性が十分にある。

ここまでが4月5日現在のイタリア政局の現況である。しかし、ここ最近のイタリア政治記事の中で何度も言及しているように、この国の政局はなんでもありだ。どこに向かうかは誰にも分からない。

どこに向かうか分からない政局の中で、道筋の少しの案内になるのがマタレッラ大統領の動きである。彼は復活祭が終わった4月3日から、政権合意を目指して各政党との協議を始めた。

イタリア大統領は議会解散権や首相任命権、また国民投票実施の権限などを持つ。しかしそれらの権限は名誉職のそれで実権とは遠く、普段はほとんど重視されない。

ところが政局が不安定化した場合は、それは一転して強い権限になる。そしてイタリアは政治不安がひんぱんに起こる国である。結果的に大統領は「ほぼ常に」重要な意味合いを持つ地位、というこ とになる。 

大統領は今まさに彼がやっているように政党間の調整役となったり、首班を指名して組閣要請を出したり、議会を解散して総選挙を行なうなどの重責を担う。

政権への合意形成を目指す協議は繰り返し開催され、何週間も、へたをすると何ヶ月もかかる可能性がある。例えば2013年の総選挙では合意形成までに1ヵ月以上もかかった。

政権合意に至らないケースも十分にありうる。その場合はマタレッラ大統領が各政党からの支持を取り付けて、いわゆる挙国一致のテクノクラート(実務者)内閣の成立を模索する可能性がある。

それも失敗すれば、彼は再び議会を解散し総選挙を実施する決断を下すだろう。イタリアの政治混乱とは言葉を変えれば「大統領の真骨頂が試される時」でもあるのだ。両者は切っても切れない因縁なのである。