イタリアの政権樹立協議は案の定長引いている。協議が暗礁に乗り上げる可能性も高い。

明確な勝者が出なかった3月4日の総選挙を受けて、前衛と極右&保守とリベラルの3者が入り乱れた政権奪取劇が繰り広げられるイタリア。

3者のうち前衛とは反体制ポピュリスト党の「五つ星運動」、極右&保守とは4党が結束した「中道右派連合」、またリベラルとは前政権党の「民主党」である。

政権樹立に向けた動きは、得票率32%で単独政党トップの五つ星運動を軸に展開している。同党は中道右派連合と組んでも民主党と組んでも絶対多数の議席数になる。そこで相手の2者に連立を呼びかけているが、それぞれに条件を付けている。

先ず中道右派連合のうちベルルスコーニ元首相が率いるFI(フォルツァ・イタリア)を除外すること。また民主党にはレンツィ前党首の排斥を要求している。

これに対して中道右派連合を主導する連盟のサルヴィィーニ党首は、仲間のベルルスコーニ元首相を排除することはできないと言明。また民主党はそもそも連立政権には参加せず野党に留まる、と意思表示。政権合意に向けた協議は難航している。

表向きの言い分とは別に、五つ星運動と同盟にはそれぞれの強い思惑がある。すなわち誰が首相になるか、ということである。五つ星運動の首相候補は実質的な党首である31歳のディマイオ氏。 中道右派連合の首相候補は同盟党首のサルヴィーニ氏である。

32%の支持率で単独政党トップとなった五つ星運動のディマイオ氏は、誰と連立を組んでも首班は彼自身であるべき、と考えている。また同盟のサルヴィーニ氏にも首相職への強い野心がある。

同盟は単独政党としては3位((2位の民主党と僅差の))の勢力だが、会派として最大の37%の支持を得た右派連合の盟主。従ってその党首である自分にも首班になる権利がある、というのが本音である。

サルヴィーニ氏が連合仲間のベルルスコーニ元首相を擁護するのは、元首相率いるFI党なくしては、連立政権入りしても首相レースで五つ星運動のディマイオ氏に勝てない、という計算もありそうである。

そんな具合に政権樹立交渉はここまで(4月15日現在)のところ、前衛と極右という違いはあるもののどちらもポピュリスト政党である五つ星運動と同盟の、首班席獲得レースの様相を呈している。

3者の主張の取りまとめ役を務めているのはイタリア共和国大統領である。イタリア大統領は普段は象徴的な存在で実権はないが、いったん政治混乱が起きるとたちまち存在感を増す役職である。

両党の首相候補者の言動を見ていて気づかされるのは、五つ星運動のディマイオ氏が全体の32%の支持しか得ていないのに、まるで絶対多数を手中にしているかのようにあれはダメこれもダメ、という具合に「排除の論理」に固執している点だ。

一方、同盟のサルヴィーニ氏は、単独政党3位の立場を意識してか排除の論理は振り回さないものの、合意妥協に至らないならすぐさま解散総選挙を行うべき、と声高に主張。

もしかすると彼自身も、民主主義の真髄である「妥協」を否定するディマイオ氏と同類の政治家ではないか、と疑われても仕方がないような言動を繰り返している。

マタレッラ大統領を調整役とした政権合意形成を目指す協議は今後も続けられる。結果が出るまではジェンティローニ首相が率いる「暫定政権」が実務をこなしていくが、イタリアは依然として政府のない状態が続くことになる。