
左からレンツィ、ベルルスコーニ、ディマイオの各氏
3月4日に投開票が行われた総選挙後の、イタリアの政治混迷は深まるばかりである。選挙では過半数を制する政党や会派がなかったために、連立政権樹立に向けたマタレッラ大統領主導の協議がつづけられている。
そこでの主役は単独政党としてはトップの32%の支持を得た五つ星運動。それに右派連合(得票率37%)を主導する同盟(得票率約18%)と民主党(得票率約19%)がからんで、欲とエゴと虚実混交の誹謗や賞賛が逆巻く政治劇がくりかえされている。
まず最初にマタレッラ大統領から政権合意への話し合いを進めるようにと指示された五つ星運動は、あらゆる勢力との対話を目指す、としながらも彼らが政治腐敗の象徴として指弾するベルルスコーニ元首相と、レンツィ前首相の「排除」を同盟と民主党にそれぞれ要請した。
ベルルスコーニ元首相は同盟が主導する右派連合のうちの第2党FI(フォルツァ・イタリア)の党首。、またレンツィ前首相は民主党の党首の座を追われてからも、同党内で圧倒的な影響力を持つ。
同盟は仲間のベルルスコーニ氏を裏切るわけにはいかない、として五つ星運動の注文を拒否。民主党も野党に徹する、と言明して五つ星運動との連携をはねつけた。
その後、こんどは同盟のサルヴィーニ党首が独自に五つ星運動と民主党非主流派に接近。それぞれに同盟が所属する右派連合との連立政権樹立を持ちかけた。だがこれも折り合わずに挫折。
つづいてマタレッラ大統領は、カゼラッティ上院議長とフィーコ 下院議長に政権合意形成のまとめ役を務めるように指示。2人はそれぞれ独自に各政党と接触したがやはり埒はあかなかった。
最後に内部分裂がお家芸の民主党内で、五つ星運動と組んでもいいのではないか、という声が広まると、五つ星運動のディマイオ首相候補が早速飛びついて民主党に接触をした。
だが、首相職からも党首職からも追放されたものの、民主党内でカリスマ的な力を温存しているレンツィ氏が、彼の影響力をいかんなく行使してディマイオ氏のアプローチを押し返した。
ディマイオ氏は「レンツィ氏のエゴで政権合意への可能性がつぶされた」「民主党は私物化されている」と激しく非難。民主党内にもレンツィ氏の強引な手法への反発が高まった。
ここまでが4月末までのイタリア政局の動きである。5月1日のメーデーをはさんでイタリアは連休に入った。休暇あけには再び政権合意に向けた駆け引きが再開される。
だがこの先同盟がベルルスコーニ氏を見捨てるか、民主党がレンツィ前党首の呪縛から解放されるかしない限り、政権合意に向けての進展はあまり望めないだろう。
少し気になる出来事はあった。4月29日に行われたフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア特別自治州の州知事撰で、右派連合が推した同盟所属のフェドリガ候補が勝利した。
これを受けて右派連合第2党FIのベルルスコーニ元首相は、国政でも右派連合主体の少数与党政権の樹立が可能、だと息巻いてる。
ベルルスコーニ元首相は、右派連合を主導する同盟のサルヴィーニ党首が、五つ星運動の要請を受けて彼を排除し同党と連立政権を組むのではないか、と極端に恐れているフシがある。
したがってベルルスコーニ氏の主張は、同盟に見捨てられて連立政権からはじき出されるかもしれない恐怖心に根ざした、ポジショントークという色合いが濃い。
しかしながら政治の一歩先は闇である。例えば首相職に野心のある同盟のサルヴィーニ党首が元首相の誘いに乗って、少数政権でもいいから総理大臣の座に就きたい、と考えるかもしれない。
もしそうなれば、反EU反移民をかかげる極右政党のサルヴィーニ氏を首班とする内閣が成立する可能性がある。なんといっても右派連合は、総選挙で37%の議席を得た議会最大会派なのである。
あらゆる政権合意協議が決裂して、マタレッラ大統領主導の挙国一致型の実務者(テクノクラート)内閣が発足する可能性も依然として高い。
もしも実務者内閣が誕生すれば、イタリアにはモンティ、レッタ、レンツィ、ジェンティローニの各内閣につづいて5連続の「選挙の洗礼を経ない政権」が誕生することになる。
それらがすべて不首尾に終われば、再び総選挙が実施されるのだが、例えそうなっても明確な勝者が出る保証はない。
そうすると、今現在も機能しているパオロ・ジェンティローニ首相の暫定内閣がいつまでも存続しつづけることになる。
だがもしそうなってもあまり支障はないようにも見える。イタリア共和国はやっぱりアリスの国、と感じるのは僕だけだろうか。。。