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マタレッラ大統領


政権合意協議

イタリアのマタレッラ大統領は5月7日、政党間の政権合意協議が決裂したため、中立政権を樹立するか、再選挙を実施するしか方策はないと発表した。

過半数を得る政党が出なかった3月の総選挙を受けて、イタリアでは最大政党の五つ星運動と最大会派内の同盟を軸に、連立政権樹立に向けた協議が続けられてきた。

政権合意協議はマタレッラ大統領が主導した。大統領が言う中立政権とは、全ての政党が支持する挙国一致の実務者(テクノクラート)内閣、ということである。

イタリアでは過去に何度も中立政権が樹立された歴史がある。予算成立や次の選挙法などを成立させるのが主な目的で結成される。

だが「非政治政権」の樹立構想には、決定的な力を持つ五つ星運動と同盟が反発。両党はすぐに再選挙をするべき、と主張している。

全ての党からの幅広い支持がなければ中立政権は存続できない。ましてや今回は五つ星運動と同盟が賛同しなければほぼ不可能である。

どうやら政局は再びの解散総選挙に傾きつつあるようだ。だがまだ予断は許されない。

政権樹立に強い意欲を持つ五つ星運動と同盟の間で、どんでんがえしのストーリーが用意されている可能性は消えない。

イタリア大統領ってなに者?

さて、政権合意協議を主導してきたイタリアの大統領とはいったい何者なのか、ここで簡単におさらいをしておこうと思う。

イタリア大統領は、上下両院議員の投票によって選出され、議会を解散し、組閣要請を出し、総選挙を実施する権限を持つ。しかし、普段は象徴的な存在であり権限もそれに似て実権はほとんどない。

議会は任期が満了したり政治情勢が熟すれば解散されなければならないし、議会が解散されれば次は総選挙が実施される。総選挙で過半数を制する政党が出ればそれが新政権を担う。

大統領はいわばそれらの事後確認をすれば良い。しかし、いったん政治混乱が起きると、大統領の権限はたちまち強くなって存在感を増す。

そしてイタリアは政治不安がひんぱんに起こる国である。結果的に大統領は
「ほぼ常に」重要な意味合いを持つ地位、というこ とになる。 

2018年の今回の総選挙後の在りようがその例である。大統領は今まさに彼がやっているように政権合意を目指して政党間の調整役となったり、首班を指名して組閣要請を出したりする。

政権合意に至らず収拾がつかなくなった場合には、各政党から幅広く支持を集め、臨時に中立の政権を誕生させることもできる。いわゆる挙国一致型のテクノクラート(実務者)内閣である。

イタリア財務危機のまっただ中でベルルスコーニ政権が崩壊した2011年、イタリアは「いつものように」政治危機に陥った。それを受けて誕生したマリオ・モンティ内閣は、まさのその典型である。