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2011年に首相の座を追われ、2013年に脱税容疑で有罪判決を受け議員資格剥奪、また6年間の公職追放処分を科されていたベルルスカ(ベルルスコーニ)元首相が減刑された。

ミラノ地裁がベルルスカさんの公職追放を1年間前倒しして免責処分にした。これによって元首相は次の選挙から再び立候補できることになり、もちろん首相職を目指すことも可能になった。

ベルルスカさんは欧州人権裁判所に公職禁止処分からの解放を求めて提訴していたが、ミラノ地方裁の決定によって欧州人権裁判所への提訴は無意味になった。

ミラノ地方裁判所の決定は、FI(フォルツァ・イタリア)党首のベルルスカさんが、FIの所属する右派連合の同盟とポピュリストの五つ星運動が連立政権を組むことに賛成した直後に出された。

ベルルスカさんは自らの態度表明が早過ぎた、と地団太を踏んでいるかもしれない。1~2日待っていれば彼は潔白の身となって政治力を高め、五つ星運動と同盟の連立協議を阻止できたかもしれなかったのだ。

ミラノ地裁はまさにそのタイミングを見計らって決定を公にした可能性がある。スキャンダルと政治的横暴行為にまみれたベルルスカさんと、イタリア司法は犬猿の仲だ。司法が復讐した可能性はゼロではない。

しかし、ベルルスカさんの「悪運の強さ」は少しも減速していない。減速どころか、今後はますます強くなっていくのではないかとさえ僕は思う。

なによりも先ず政治的に「死に体」と見えたベルルスカさんが、81歳で完全復活を果たしたことが彼の運の強さをいかんなく示している。

そして総選挙後、右派連合の盟主の座を朋友党の同盟に奪われはしたものの、最後まで強い影響力を行使して同盟と五つ星運動に圧力をかけ続けた。

おしまいには前述のように2政党の連立合意を受け入れはしたが、イタリア政界を再び解散総選挙しか道はない、という瀬戸際まで追い詰め振り回した。

ミラノ地裁の決定で晴れて自由の身となったベルルスカさんは、それだけでも意気軒昂だが、遠いアジアからも彼を勇気付ける朗報が舞い込んだ。

マレーシアのマハティール元首相が、総選挙を制して政権奪取に成功したのだ。しかもベルルスカさんより11歳も年上の92歳で!

マハティールさんの前には、ジンバブエの94歳のムガベさんが、昨年まで大統領職にあった。彼は失脚したが、まだ返り咲きを狙っているという情報もある。

彼らに比べたらベルルスカさんなんて、まだ「若造か」というほどの年齢だ。

世界政治では「老害現象」が流行りつつあるようにも見える。ベルルスカさんより若いが、中国の習近平さんは、終身国家主席も夢ではない形に自らの権力基盤を磐石にした。

ロシアのプーチンさんもすごい。いまやロシア皇帝かと見まごうほどに権力強化にまい進し、こちらもいつまでも一強独裁の「大大統領さま」でありつづけようとしている。

あ、まだいた。日本の安倍晋三首相も「一強独裁」者みたいな顔をしている。モリカケなどであるいは近く墜落するかもしれないが。でも彼のオトモダチのトランプさんは独裁者よりももっと強烈な個性で吼えまくっている。

トランプさんも70歳代と「若者」だ。イタリアでは31歳と「子供みたい」なディマイオさんが五つ星運動の首相候補になるなど、世代交代も進んではいるが、
「若作り」のベルルスカさんもおおいに健在なのだ。

もしも五つ星運動と同盟の連立政権が発足し、やがて失敗し、総選挙にでもなれば、「やっぱりベルルスカさんがいい」と、イタリアの世論が懐古趣味に傾かないとも限らない。

それでなくても、いまだ同盟との提携を解消していないベルルスカさんは、五つ星運動と同盟の連立政権に強い影響力を持つことが必至だ。政権樹立と同時に、それの破壊を目指しての権謀術策をはじめることもないとはいえない。


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